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白夜  作者: セイル
青髪の少女
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腹が減っては


校門を出て学校からすぐの下り坂を降りればそこはもういつもに増して閑静な住宅街だ。

学校の外は特に目立った混乱はなくて安心した。

その下り道を歩いていると舞姫先輩がカバンからお財布を取り出した。

何をするんだろうと思ったが、中身を確認してすぐにまたカバンの中にしまった。


「それにしてもお腹空いたわね。」


そういうことか、と思って僕も財布をカバンから取り出した。


「確かに、俺も腹減ったかも。」


すぐに嗣柚のお腹が返事をするかのようにぐう、と音を出した。

昼休みに舞い上がっていたからこうなるのも無理はない。

嗣柚も苦笑いした。


「僕と嗣柚は生徒会選挙の結果に喜んでいてお昼ご飯食べていないんですよ。」


このままスルーするのもかわいそうだから一応フォローはいれてあげる。


「そうなの? それはお腹が返事しても仕方ないわね。」


舞姫先輩がからかうようにくすくす笑うと嗣柚の頬は少しだけ染まった。


「え、あ、こ、コンビニ寄りましょう! そこの角にあるコンビニ! 」


嗣柚がコンビニまで走り出すと僕たちは顔を見合わせて声を出して笑った。

そして先に行ってしまった嗣柚を小走りで追いかけた。


怪が出現したという情報があったにもかかわらずコンビニは営業しているようだった。

もし怪に出会ったときには交戦しなければならないからということで僕たちはコンビニに入った。

腹が減っては戦は出来ぬ、だ。

今日お昼に食べようとしていたお弁当は家で温めて晩ごはんにしよう。

まだしばらくは家に帰れないだろうから僕も軽めになにか食べることにした。

店内をぐるっと一周する。

僕たちの他にお客さんはいなかった。

やはり凶暴な怪が出たという噂が強力のようだ。


商品をなにも手にとることなくレジに行き、ホットスナックコーナーのチキンを一つ頼んだ。

学校近くにあるこのコンビニにはよく通っているから店員さんとも顔見知りだった。

店員さんに怪には気をつけてくださいね、と一言言うと今日は危ないから店を閉めようかなと言ってくれた。

よかったら聖域に避難してくださいね、と言い買ったチキンを受け取った。

嗣柚はまだ何を食べようか迷っているようだったので先に店の外に出ることにした。

先にコンビニの外で待っていた舞姫先輩は中華まんを食べていた。

あまり寒いとは感じなかったが、中華まんの湯気を見ると外気は冷たいことがわかる。

美味しそうに中華まんを頬張っていた舞姫先輩が嬉しそうに微笑んだ。


「最近寒くなってきたから売り出し始めてたのよね。あ、そうだ。彩樹ってホワイトチョコ食べれる? 」


「はい、食べれますよ。」


よかった、と一言言うとバッグの中に入っていたチョコレートのパッケージを開けてくれた。

おひとつどうぞ、とホワイトチョコを僕に一つ分けてくれた。

口の中に入れるとホワイトチョコ独特の甘い香りが広がった。

舞姫先輩はホワイトチョコなら食べられるのよね、とつぶやく。

そういえば舞姫先輩はミルクチョコレートが嫌いなんだっけ。

僕の周りにもチョコレート嫌いはいるが、やっぱりそういう人達からすればミルクチョコとホワイトチョコは別物なのだろうか。

舞姫先輩にもらったホワイトチョコレートを堪能して、買ったチキンの袋を開けた。

チキンにも湯気が立っていて心なしかさっきよりも寒く感じた。


「あ、彩樹またチキン食ってる。」


何やらたくさん買い込んできた嗣柚が僕の手元を見てそう言う。

また、と言いたい気持ちもまあわからなくはない。

僕はコンビニに来たら必ずと言っていいほどこのチキンを買っている。

自分で作る唐揚げとかでは出せないこの肉汁感がたまらなく好きなのだ。


「これ、好きだからね。」


チキンを一口かじるとそのたまらなく好きな感覚が口いっぱいに広がる。

幸せだ。


「肉食ってる割にはお前細いよな。」


一人暮らしは何かと大変で、どうしても食事が疎かになる。

だめだと思っていても、やっぱり自分で作るのは面倒だから。

栄養が偏っているのかもしれない。


「いいじゃない、女子からしたら食べても太らないなんて夢のようだけどね。」


舞姫先輩が中華まんの最後の一口を食べる。

ちょうど食べ終わったからみんなの持ってるゴミを回収してゴミ箱の中に入れる。

嗣柚はたくさん買い込んでいてまだ食べ終わらない。


「嗣柚、歩きだしても大丈夫? 」


舞姫先輩がそう言うと嗣柚は焦っておにぎりを口に入れた。


「あ、大丈夫です! 俺は歩きながら食うんで! 」


なんて他愛のない話をしながら怪探しのパトロールが再開した。


2018.11.28 サブタイトルの変更をしました。


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