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白夜  作者: セイル
青髪の少女
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生徒会


「おはようございます! 」


西日が少し眩しい生徒会室に元気のいい女子の声が響いた。

彼女はこちらをみると安心した顔をした。

そっと顔を覗かせたまま部屋の中の見回す。

僕以外誰もいないことを確認し、生徒会室に入ってきた。


「彩樹くん早いね。」


どこかしょんぼりとした顔でこちらを見る。

僕以外誰もいないことが気に食わないのだろうか。


「残念そうだな。」


「だってホームルームが終わってお掃除早く終わらせて来たから一番乗りだと思ったんだもん。」


「なるほど。」


彼女は隣のクラスの望月結友那。

結友那は確か生徒会書記に当選した。

誰にでも分け隔てなく接する元気が売りの学年の人気者だ。

もちろん僕がこの街に来たときも、もの珍しそうに話しかけてきた。

彼女もやることがないためか、くまのキーホルダーがついたスクールバッグを棚の上に置いてパイプ椅子に腰掛けた。

バッグから携帯を取り出すとそれをいじりながら話す。


「彩樹くんはここ来たことあった?」


「いや、今日が初めてだよ。」


「そっかー、私はお兄ちゃんの帰りが遅いときに呼びに来たことがあったくらいかな。でもさ、生徒会室ってワクワクしない? 学校の奥の方にあってさ、やっぱり学校のエリートたちの集まり! って感じでさー。」


生徒会という存在にそういうイメージは誰でも持つものだ。

それでも彼女はキラキラとした笑顔で嬉しそうだった。


「よくわからない小説の読み過ぎじゃない? 」


僕がからかうようにそう言うと彼女は少しむくれる。

彼女はライトノベルだとかソーシャルゲームだとか今若者の中で流行っているものの最先端を行くような人だ。

僕も最近の若者だけれども、結友那ほど知識を持ち合わせてはいなかった。


「いや、生徒会設定は今ソシャゲで流行りが来ててねー。」


彼女そう言いながらスマホを横に持って操作を始めた。

僕はあまり今の流行りなんかについていけていないからわからないけど、クラスでも昼休みにゲームに勤しんでる奴らはたくさんいる。

僕は友達に勧められたパズルゲームしかプレイしていない。


その後も他愛のない話がぽつりぽつりと続いた。

それにしても他のメンバーはまだだろうか。

細切れに続いた話もつきてしまい、結友那もゲームに夢中で喋らなくなってしまった。


仕方なくまた窓の外を眺める。

さっき校庭で準備をしていた野球部はミーティングの時間のようだ。


僕がこの部屋に来てもうどれくらい経ったんだろうか。

手持ち無沙汰なまま人を待つというのも辛いものだ。

今度から生徒会があるときは本でも持ってこよう。


なにか読み物はないだろうかと思い立ち上がる。

生徒会室の中はとても静かで、窓を閉めていても野球部の掛け声が聞こえてきた。

その掛け声とは逆方向、廊下の方からは誰かの足音が聞こえてきた。

誰か来たか。

そう思ってドアの方を見る。


「失礼しまーす。」


結友那もその足音に気づいたのか顔を上げた。

見知った顔がみえると、彼女の表情は一気に明るくなった。


「あ、嗣柚くん! 」


「おう、結友那じゃん。当選おめでとう。」


「嗣柚くんもおめでとー。」


彼は神崎嗣柚かんざきしゆう。僕の親友であり、僕を生徒会に誘った張本人である。

嗣柚も生徒会室の様子を見回して、中に入ってきた。

本棚の前にいる僕を見つけ、何た言いたげな様子でこちらに向かってくる。


「彩樹探したぞー? 先に来てたんだな。」


「あれ、先に行ってるって声かけたんだけどな。」


「え? そ、そっか。」


しっかりしろよ、なんて冗談交じりに言う。

彼ははぐらかすように笑った。

嗣柚も結友那と同じようにスクールバッグを棚の上に置いた。

そして僕がさっきまで座っていたパイプ椅子の隣にもう一つパイプ椅子を持ってきた。

結友那はまたゲーム画面に目を落とし、楽しそうにしている。


「まだ先輩たち揃ってなくてよかった。生徒会室どこにあるかわからなくてさ。」


本棚には特になにもないようだ。

暇をつぶすのは諦めよう。

さっきのパイプ椅子に戻って嗣柚と一緒に窓を外を眺める。

野球部は準備体操やキャッチボールを始めた。


「僕も今日生徒会室はじめて来たよ。」


「そうだよなー。生徒会室ってさ、なんかエリートの集まる場所です、みたいな感じだから。」


「それ結友那と同じこと言ってる。」


数分前に聞いた言葉と全く同じニュアンスのことを言うものだから、こらえきれずに笑ってしまった。

結友那が携帯の画面に目を落としながら「真似しないでよー」と言う。


「まじかよ。 」


「お前もソシャゲの影響? 」


「ソシャゲ? 」


「結友那がさっきソシャゲがなんとかって言ってたから。」


「へー。」


この様子だとソシャゲは関係なさそうだ。

隣に座る嗣柚は大きなあくびをする。

校庭の様子には飽きてしまったらしい。

立ち上がって軽く伸びる。

一回部屋の中の様子を見るとその辺りにあるものを物色し始めた。

部屋には過去の生徒会誌だとかボランティアの要項だとかが乱雑に積まれていた。



2018.11.17 大幅リニューアルをしました!

2018.11.28 サブタイトルの変更をしました。

2018.12.23 内容の改変とサブタイトルの変更をしました。

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