表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落領地の気楽な領主生活  作者: 大森サコ
みちゆきを共にするモノたちのこと
8/52

亀甲石とカメ

小休止を経て隊が動き出す。


例の魔法のことを聞くと魔法?という反応で、爆発のことだと伝えると、あれは呪術だという答えが返ってきた。


呪術…まじないが実体を得て相手を傷つけるなんてさすが異世界、一味ちがう。

今度教えてもらえないか聞いてみたが、お前には無用だと一蹴される、ケチだ。


それなりに疲労は溜まっていたようで、それぞれの動きは機敏とは言えない。その中でもとりわけハルオが緩慢な動きで立ち上がったのは言うまでもない。


移動を開始してすぐに丘の頂きが下からも望める位置に出た。

頂上部分は広葉樹の原生林が圧倒的な密度で迫る、その様が何かの意思をもったように見えハルオは畏敬の念を呼び覚まされる。


この世界では自然はまだ偉大な存在足りえるのだ。


「なんて、カッコつけてみたり」


オレが突然この場所に投げ出されたときは周りをしっかり観察していなかったようで、以前に一度来たことがあるとは思えないほど記憶にない風景が続く。

それにしても鹿が多いな、奈良公園みたいだな、すごく警戒されてるけど。

遠巻きに警戒する鹿の群れが度々目撃された。


「ベネッサ、お前弓の腕前が凄いのな?見直しちゃったなぁ」


目を射抜くという離れ業を魅せたベネッサに話を振ってみる。

人材は褒めて伸ばすのだ。


「はいありがとうございます!」


褒められたことを心から喜ぶベネッサ。

鹿、ほらまた居た。


「鹿多いね?」


今度は一転申し訳なさそうな顔になるベネッサ。


「鹿は伯爵家の守護獣ですから領民は手を出せません。その結果、鹿が領内で異常繁殖していまして、その、先ほどのように魔獣化した鹿に襲撃をされなければ兵士も剣をとることができないのです。」


へぇ、鹿が。


「ふんっ、鹿はいるが鹿肉は食えない、作物も育たない、育ったそばから食われる、領民は飢えているのだ、お前にどうにかできるのか?」


いつになく饒舌なティオにハルオは向き直る。


「んー、今は何もできない。けど、明日までに何か考えてみるよ」


えっ明日?という表情で睨むティオ。

訝しげに睨むなんて器用なやつだ。


こういうの根回しが必要だもんね。

そんな会話をしているとやっと頂上にたどり着く。

どこにあるか聞くまでもなくソレはあった、亀甲石。


「は〜、こりゃ大きい…こんな大きな石に気付かなかったなんて」


石というより岩で、その周囲をティオは部下を使って安全確認する。

その横で見上げる。

でかい。


列柱まであって、ほんとになんで気付かなかったのかわからないが、それだけ動揺していたのだろう。

遺跡感が漲っている、こういう場所をインターネットで見るのは好きだっただけにテンションが上がる。


「ねぇねぇ見てよベネッサ、これなんか文字みたい、文様?」


ペタッと触った瞬間に岩が脈動する。

硬い岩が脈動するという気味の悪さにとっさに手を離そうとするが離れない。


「は、離れないっ!」


必死のオレの抵抗むなしく岩の中に吸収された!

唖然とするベネッサとティオの顔が横目に見えたが意識が途切れた。


「・・・い・・・おい、オキロにんげん」


ふっと意識が戻ると暗い空間の中でところどころ弱い光を発する不思議な空間にいた。

視界が暗闇に慣れてくるとしわがれた老人の顔がうっすらと見えるようになる。


「ここは・・・?」


「イワの中じゃ」


ひとまず会話できる相手というのがわかりほっと息をつく。


「ワシはお前の踏んだカメだ」


ちょっとは聴きやすくなった、あまり人としゃべってこなかったんだろうなぁ・・・このカメ?


「その節はどうもすみません」


こんなときでも律儀に振る舞える日本の学生は素晴らしい。


「まぁ気にするな、ちと思い切りのいい踏み込みじゃったから文句を言ったまで、元々お主がワシを踏むのは決まっていたことじゃからな。」


ふーん、どういう意味?


「で、オレはなんでこんな目に?」


それは偶然だと軽い答えが返ってくる。

偶然・・・。


そのカメが語るにはこの岩は亀甲石ではなく、シェルターのようなものだと聞かされた。

何かから何かを守っているのだろうと推測して、何を守るためのシェルターか聞くとこの台座じゃという答えが返ってきた。

なんか聞かれたことに素直に応えてくれるこのカメいいやつだな。


台座は正方形で上辺が淡く発光している。

そこに血を垂らせと言い出したので一悶着あったが、結局垂らしてみることにした。

護身用で持たされたナイフで指先を軽く引っ掻く。

ここまで来ればこのカメも悪いやつではないようだし、なによりもどうにでもなれというやけっぱちの気持ちになっていたのが大きいだろう、ハルオにしては思いきりがいい。


パッと明るさの増したモニターのような台座に触れてみる。

波紋が広がるとミニチュアの地形が現れた!

箱庭感のある精巧な作りのミニチュアに男の子心が刺激されて心躍っているとカメがしわがれた声で呟いた。


「おー・・・王の帰還じゃ」


ブックマークを頂きましてありがとうございます。

キリが悪いため続きは13時に上げてみます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ