はじまりの地へ
気がついたら異世界で伯爵である。
「おっちゃん、これムリゲーなんだけど…。」
家宰のガリガリおっさん改めおっちゃんは話してみるとなかなか物分りのよい娘を溺愛する親ばかだった。
娘の話のとき以外は死んだ魚の目で接してくるのがたまにキズだ。
正直、ウザい。
先代伯は地位や責任をオレに押し付けるとさっさと隠居したがその家臣はほぼ全員そのままオレに仕えている。
イヤイヤではあるが…。
授爵してからこのひと月は各部門の担当者との面談、領地の経営状況レクチャーと多忙を極めた。
先代には息子が3人、娘が2人いたが全員あとを継ぐのがいやで領地を出てそれぞれ独立した家を立てているらしい。
領主の親族にも逃げられているのだ、領民はもっとひどい生活である。
町民はまだ良い方の生活が送れているが、農村は干ばつや重税で一日一食も危うい状況とのことだ。
声を大にして言いたい!なんだこのクソ領地!!
さらにはオレがなんでこの世界に飛ばされたのかもまったく判然としていない。
ついひと月前までは気楽な学生業だったはずが、いまや伯爵である。
このままだと、先代伯にかわって領民に殺されかねない…切実である。
まぁいい、今は生計をたてることからだ。
「ベネッサを呼べ」
「はっ」
それほど多くはない家臣団の中でもやる気がマイナスに振れていない希少な家臣で地元出身の弓部隊の新兵である。後継後すぐにオレ付きに配置換えした。
某社の歴史シミュレーションゲームをやり込んでいたオレとしては圧倒的な人材不足にある、少しでも使えそうな人材は登用したいところだ。
「ベネッサ、参上しました!」
入り口でコケたがまぁいい。
まずは、あの丘の名前を聞くことからはじめよう。
「この街の近くの丘の名称はなんと言うのだ?」
コケたことが恥ずかしいのか、しきりに床を気にしながら答えるベネッサ。
「あの丘はポエピの丘と言います。」
ポエピの丘についての伝承も語ってくれた。それによると、昔はあの丘を中心に巨大な街があったという、またその街は大変豊かで地域の諸都市を従えていた。
その繁栄は亀甲石によってもたらされる不思議な力によって数千年間も続いた。
終わりは唐突で、その力を妬んだ周辺の国が結託して2000年前に滅んだのだそうだ。
「その亀甲石は丘にまだあるのか?」
「はい!遺跡となっていますが確かにそこに存在します。」
ではその亀甲石とやらがオレをこの世界に送り込んだなにかの力と関係していそうだ、もう一度行ってみるか。
調査を行う旨伝えて準備に走らせる、できるだけ兵士は連れていこう。
あの虎がまだいるかもしれないからな!