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リアルキルゲーム 〜白の呪い〜  作者: 沙乃
【中学三年】第二ステージ
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八話目。

「……カ、オリ…………何してんだよ……」

「…………リクはまだ、死んでなかった。助けられるなら、助けるのは当たり前でしょリーダー……?」



 あの一瞬で私はリクを助けることを選んだ。扉が閉まるその時にリクだけでも、と思って手を伸ばした。脱力してるリクの腕を掴んで引っ張って、武器ごと引きずり入れた。



「馬鹿だなお前……でも、ありがとう」



 リクからのありがとうはとても嬉しかった。けれど、他の倒れていた仲間を見捨てたことに罪悪感を感じている。


 扉はイケニエの人数が足りたと認識したら開いて、すぐに音を立てて閉じようとしていた。だから間に合わなかったのは仕方ない、そんな言い訳できるはずがない。リクを助けたから。


 〈第一ステージクリア、オメデトウゴザイマス。次ノステージハ学校。今回ノステージハ学校ノ七不思議ガ出現シマスノデゴ注意ヲ……〉



「学校……、あ、ここ、暗くてわからなかったけど私達の学校だ……」

「本当だ。しかもここ、三年一組の教室じゃねーか……」



 並ぶ机と椅子は私達の人数と同じはずなのに、空席が出来てしまう。ここにたどり着いたのは四分の三のクラスメイトだけだ。



「この学校は、俺たちがいつもいる所じゃない……。暗いし、今はゲーム中だし…………ただのステージなんだろうな……」



 数人に手当てされながらリクは言った。

 確かにここは間違いなくあの殺戮ゲーム、〈リアルキルゲーム〉の中だ。普段の学校だとすれば電気はつくし、窓の外には町の景色が見えるはず。にも関わらず、この教室の窓からは何一つ見えない。ただただ真っ黒。


 しばらく教室から出ないで警戒をしていた皆だが、数十分たっても敵がこないので休憩になった。



「ここは、安全地帯なのか……」

「みたいだね、一安心かな……」

「そうしたいのは山々だけど……二回目のメンバーは今すぐ教卓の上に集まってくれるとありがたいな…………」



 ミカがリク以外の二回目メンバーに声をかけて集まった。リクはまだ、動ける状態じゃないらしい……。

 てか……一つの教卓を数人で囲むとせまい。うん、とてもせまい。



「あのさ、第一ステージのことなんだけど……。私達が一年生の時、つまり一回目は安全地帯あったよね……?ホールとか、全く敵が来なかったし」


「うん。それは確信してもいいと思う」

「でも今回はなかった……それにミカは疑問を持ってるってことだよね」

「……そういうこと」



 ホール意外に安全地帯なんてあり得ない、とミカは言い切った。

 会話はコソコソとないしょ話のように行われる。それは暗黙の了解で、一回目の皆を不安にさせないように、と言うことだった。


 友人の死はやはり精神的にキツいものがあるはずだ。今は生き残るために必死にな皆だが、唐突に来る寂しさと言うものがあるのだ。避けては通れない道だろう。その時が来るまでは、せめて今は不安にさせたくない。



「安全地帯のない第一ステージなんて、出現するとすれば可能性は一つ…………」

「アップデート」

「だよねー……ってリョウ!?話聞いてたの……?」


「たまたま聞こえたってことにしといて。でも、もしアップデートされてるなら二回目メンバーにとってイレギュラーな事態が頻繁に起こるってことになる。このゲームの主催者、質悪くね?」



 本当にそうだ。質が悪い、悪すぎる。

 主催者は私達を何だと思っているんだ。

 そんな怒りが込み上げてくる。



「アップデートは……確かに何が起きるかわからないから危ないな…………。実はこのステージは前回簡単すぎて何も調べてないんだ。敵も弱かったし、数えられるくらいしかでてなかった」


「だとしたら今回は難易度が相当上がってるんじゃないか?」

「はぁ?何でそう思うんだよ。お前リアキル一回目だろ?」



 なぜか怒っているアキラは試すようにリョウを睨んだ。

 私も、一回目のリョウが推理出来るのはおかしいと思ってはいるけれど……。



「俺はゲームとか作ったことないけどさ、自分が用意したステージが沢山の人に軽々突破されたら腹立つだろ?だから今回は鬼畜モードのようにアップデートされてるんじゃないかなって。第一ステージだって安全地帯がなかったじゃないか」



 ごもっともな意見に二回目メンバーが長い沈黙になる。そのうちアキラの小さな舌打ちが聞こえた。

 やはり何かに苛立っているように見える。



「つまり……その、あんまり言いたくねーけど…………今回生き残れる人は限られるってことだろ。二回目メンバーのためなのか簡単には倒せないあの黒い影も出てきたし。俺らも経験者だからって油断してらんねぇな……」



 うん、そうだ。あのアヤが剣術でダメージを与えたというのに黒い影は倒れる気配がなかった。


 私達も、死ぬかもしれない……そんな不安が生まれてくる。

 人間なんて生活で使用しているものを凶器に使い、殺害が出来てしまうほど弱い生き物だ。



「そういえばさ……さっきの放送で今回は七不思議が出現するって言ってなかった?」



 まだ目の下が腫れているアヤが思い出したように言った。



「七不思議?怪談じゃなくて?」

「いやそれ変わんなくない?」

「……はぁ…………お前らさ、最近この学校の怖い話とか噂で聞いたことないの?」



 ずっと黙っていたDBがいきなり口を開く。なんだか私達呆れられてる?こんなにも真剣だと言うのに。



「ない」

「小学生じゃあるまいし、誰もそんな噂しないって。ましてや皆進路に向かって現実を見てる時だよ?」



 私達が笑いながら否定するといつの間にかDBは黒板に何かを書き始めている。


 チョークと黒板がぶつかる音が教室にやたら響いている気がした。

 この音、何だか久しぶりな気がするがそんなに久しぶりでもないんだよなぁ……。



「お前らこれ見ろ!」



 バンバンとDBが黒板を叩いた。

 おいおいあのタケさん(教師)みたいになってるぞDB……。



 〈「追いかける人影」「トイレの幽霊」「命のないブザー」「謎の空き部屋」「無人の資料室」「体育館のボールたち」「0時の展望台」〉


「……ん?…………あっ、あー!!!これ先輩が話してたやつだ!」



 隣にいたアヤが驚きの声を上げて耳がキーンとした。鼓膜がっ……。



「え、どれさ?」

「この命のないブザーってやつ!アキラも一緒に聞いたよね?」

「ん、あ、あぁ。聞いた」



 いきなり名前を出されたアキラは曖昧な返事をしながら頷いた。


「……覚えてないの?」

「覚えてるわ!」



 二人の仲の良いやり取りにクスッと笑いが生まれた、が、すぐに切り替えたDBはまた黒板を叩きながら咳払いをした。

 いやだからそれだとタケさんになるってば……。



「この話はな、うちの学校の七不思議だ。実際に語られてるし、体験談とか、噂とか、そんなんで出来たもんなんだよ。まぁほとんどの生徒が七つ全部は知らないんだけどな」


「……そりゃそーだよ。七不思議って七つ知っちゃうと八個目が出るとか、悪夢を見るとか不幸が訪れるとか、死んじゃうとかあるじゃん」



 幼稚園の時、遠足で先生が言ってたし。

 と私が言うと皆徐々に青ざめていった。



「私達いきなり全部知っちゃったんだけど……!」

「お前が黒幕かッDBィィイ!?」

「はぁっ!?意味わかんねぇよ勝手に黒幕にすんなっての!」



 半分おふざけのような形でケンカが始まった。DBは私の方を見て吐き捨てるように言う。



「カオリお前、後で覚えとけよッ!!」


「わ、私思ったこと言っただけなのにっ……」

「そうだよカオリは悪くないでしょ!」

「でも俺も悪くねぇ!!お前ら一旦落ち着け!」



 途端にしん、と静まる。あの暴力はほぼおふざけだったのだ。



「……あの、な…………これ、もしかしたら全部倒さなきゃ次のステージ行けねぇぞ……?」

「え」



 DB以外の全員が驚きの声を揃って上げた。

 敵を倒さなきゃ次のステージに行けないなんてそんなの鬼畜すぎませんか。



「だから、敵の情報を集めたいんだ。七つ全部知らなくても一つくらい知ってるだろ?」

「ま、まぁ一つくらいなら……聞いたことあるけど…………」

「俺も一つなら……」



 ……そんなこんなで、三年一組は安全地帯にて怪談話を始めることになった。まだ人が死ぬという状況に恐怖を覚えるクラスメイトたちだ、その恐怖を少しずつ忘れさせるように私たちは明るく振舞った。



「……私、実はホラゲは好きだけど本物は嫌いなんだよなぁ…………」



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