表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/67

異常な愛情。

「私は戻らない」



私の言った言葉で二人の表情は一気に変わった。この選択自体、私が生み出したものだからだ。



「お前がいないとアイツらは……!」

「ねぇ、皆から私という存在とリアルキルゲームの記憶だけを消すことは出来ないかな」


「そんな残酷なことを僕にしろって?冗談でも酷すぎるよ」



冗談なんかじゃなかった。私は日常に戻りたい、確かにその気持ちはある。でも、私は辛い時を過ごした。こんな悲しいことはもう起こらないだろう。だからこそ、私という存在の記憶を皆から消して今まで何があったのかを無くしてしまいたい。



「お願い」


「自分が何を言ってるのかわかってる?そんなことをしたら今までの香織さんの頑張りも、皆のために何をしたのかも、何も残らないじゃないか!」



わかってるよ、それくらい。私が何をして、どれだけ辛くて、どうやって皆を助けたのか、何一つ残ることは無い。それが残酷だと言うならそうなんだろう。でも、私はそれでもよかった。

その残酷を受け入れようと覚悟を決めたのだ。



「皆から記憶を消した後は私を殺して。皆の中の私が死ぬなら本物の私も死ぬ」

「ちょっと香織さん、僕の話を聞いてるの!?」

「いい加減にしろ、カオリ!」


「ここまできて冗談なんて言わない、私はいつだって真剣だもの」



それに、気付いたんだ。私はきっと、私のために生きられない。いつまでたっても大切だと思った人のために生きるんだと思う。それは自己犠牲とか、ヒーローだとか、そんなのは関係なく、私が私のことを一番だと思えないから。なら、この命はみんなのために使おう。それで後悔しないのだから、やっぱり私は結構な馬鹿だ。



「……そんな選択するなんて、香織さんはいつからそんなに狂ってしまったんだ……」

「いつからだろう?日常が遠ざかった、あの時かもしれないね」

「香織さんのその仲間に対する愛情はもうとっくに異常と言えるほどになってる……それを自覚してるならっ」

「私はこの異常を嫌だと思ってない。むしろありがたいよ」



弱かった私を前へ向かせてくれた。導いてくれた。恐怖を取り除いて、仲間を助けられるほどの力を引き出させてくれた。これが絆の力じゃなくて異常で狂ったものでも構わない。そのおかげで今もこうして仲間を救う選択が出来るのだから。



「そこまで言うなら記憶を消すのはやる。でも僕は香織さんを殺せない」

「私だって殺せない」



二人のその瞳には優しさがあった。

それじゃダメなんだ。私はこの世からいなくならなきゃいけないんだから。元々そのつもりで呪いを受け止めたんだ。だから、ダメ。



「……わかった」



それからしばらくして、映像の皆は不思議そうな顔をした。きっと、全てを忘れたのだろう。でも、たった一人、その中で今も尚、悲しげな表情をした。



『……どうして皆香織のことを忘れてるんだ!?それじゃあまるで、香織を二度殺してるみたいじゃないか!』



そう言ったのはヒロトだった。ヒロトだけは覚えていたのだ。



「何で……」

「わからない。僕は全員の記憶を消したはずなのに」

「……もう一度、やってみて」



何度やってもヒロトは私のことを忘れない。これじゃ、浩人だけが辛いまま……。



「浩人さんも、香織さんと同じなんじゃないかな。呪いに勝つほどの異常さを持つ人間が二人もいるなんて、信じたくもないことだね」

「……それこそ、辛いじゃない。自分しか記憶がないなんて」

「今は辛いかもしれないけど、その辛い道を選んだのは浩人さん、僕はそれを否定しないよ。それだけ強い人なんだから」



私だったら耐えられない。私は助かってから記憶をなくしていたから罪悪感にそこまで辛くなることは無かった。たった一人で助かった事実がなかったから。でも自分だけ記憶があるまま過ごすなんて、誰もその辛さをわかってくれないなんて、そんなの悲しすぎる。


でも、ヒロトが選んだことならば私がもうこれ以上何かするということは無い。記憶を持ったままでも幸せになってほしいと願うだけだ。



「……じゃあ次は私の番だね」



もう二人は止めなかった。私の意思が曲がることはないとわかっているからだろう。

腰に下げていた刀を鞘から抜く。

鼓動が速くなった。本当は怖いんだ。震える手で刃を首に当てた。後は、引くだけ。


目の前の二人は目をそらした。こんな最後を見せてしまうのに心が痛いが、私がいたらおかしいんだから、私は死ななければならないのだ。



「……さよなら」



そうつぶやくと同時に刀を引く。首から大量の血が流れ予想通りの激痛とともに意識を失った。いや、死んだのだ。


これでもう私はいない。たった一人の記憶の中を除いては。



もし、生まれ変わりがあって次の人生も人間だったなら私はまた大切な仲間が欲しい。

信じられる人がいなかった中学一年生の時のような日々は送りたくない。

今、死んでしまっても幸せなんだからそれだけいい仲間に巡り会えたのだろう。



最後に私が西田香織として皆になにか言えるのなら、


「ごめんね、ありがとう、皆は幸せに生きて」


これで十分だ。



悲しい感情から始まったこの呪いは、私の命と共に終わりを告げた。

リアルキルゲーム完結。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ