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リアルキルゲーム 〜白の呪い〜  作者: 沙乃
リアルキルゲームver.2
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たどり着いた真実。

すぅと息を吸うと、澄んだ空気が私の身体に入ってきた。



「また、この場所……」



どこまでも続く青、そう、青。右も左も上も下も、青青青青。前も思ったけれど空に立っているような、そんな場所だ。



「お疲れ様」



そんな声が聞こえたのは私の背後からだった。その声変わりのしていない幼い声にゆっくりと振り向く。

そこには予想通りの人がいた。にっこりと笑った笑顔に、ほんの少し彩夏を重ねてしまう。



「私もいるぞ」



振り返った身体をもう一度戻すと、私が先程まで思いだしていた彩夏がいた。



「ここは、どこなの?私はもう死んだはずなのに」


「僕のせいで迷惑をかけちゃったからさ……」


「どういうこと、なの……」



少年と彩夏が並んで私のほうを見ている。あぁ、嫌だ、この感覚。何が終わり、始まる感覚。全てが明かされていくなれない感覚。でも、ここまで来たら知らなきゃいけない。

その答えは空の中で吹く風とともに私に向かってきた。



「───全ての始まりは僕なんだ」



その表情は変わっていないというのに、その声はどこか悲しげだった。



「白の呪い初代保有者、と言ったところか?」

「うん、間違いではないね。でも僕は最初から人間じゃない、ただの呪いの塊さ。人々が思い描いた化け物、殺人兵器のようなもの。ねぇ、香織さんはアルビノって知ってる?」



そう言われて二人をじっと見る。知ってるも何も、君たちがアルビノじゃないか。



「……アルビノは、突然変異とか遺伝的欠損の先天性の病気でしょ。 確か、先天性白皮症ともいうんだっけ。色素が抜けちゃってるやつだよね」


「大正解。でも、アルビノっていうのはめずらしいものだよね?だからこそ、いろんな噂がついたんだ」



アルビノはどこでも有り得る病気のようなもの、でも、自分たちとは違う、真っ白な、みたこともないような子が産まれたらそれについて驚く気持ちもわからなくもない。だからこそ、噂がひとり歩きするのもありえるだろう。



「君のその優しい心と感性で聞いてほしいんだ」



少年は真剣な顔になり、一度目をつぶると意を決したように言い始めた。



「噂っていうのはなんでもないものだけど、それは重なれば重なるほど真実と化す。嘘が本当になるのと同じでね」



嘘は、つき続けていれば本当になる。だから罪悪感を感じない嘘もある。それは私も経験をしたことがあるから、何となく納得はできた。



「アルビノの人間は人を殺す力を持っているだとか、天使として地上の苦しみを癒すために降りてきたとか、そーいう噂がどんどん真実味を増すために形を変えて能力……呪いになったんだよ」



決してアルビノの子達がそう願った訳では無い。噂が重なり、真実となって現れた。望んでもいないものを勝手に押し付けられるなんて、最悪だ。



「だけど、時代とともにそれはなくなる。病気として認識されるようになったからね」

「……だったらなんで」


「なんでこんなことが起こったかって?……それはね、僕が存在し続けているからなんだよ。僕は呪いの塊。噂から産まれた化け物。僕は僕という呪いを消費し続けることで消えることが出来るんだ」



私たちは、本当に偶然、巻き込まれただけだったんだ……。何でもない日常を、昔からあるあの呪いのせいで、ただの噂話から始まった呪いのせいで、奪われた。



「僕は自分の呪いをアルビノとして生まれた人に分けてきた。僕自身が死ぬために」


「……お前が死ねば、すべて終わるのか?」

「白の呪いは無くなるから、多分ね。でも、もう分ける必要もなくなったよ」


「どういうこと……?」


「僕は君を元の場所に戻すために、僕の呪いをすべて使おう。僕が消えるとともに君は元の日常に戻れるよ。僕はね、君に期待をしていたんだ、きっと全部終わらせてくれるヒーローだって」



違う。私なんかより、もっとずっとヒーローみたいな人たちはいた。私はただ、自分勝手に自己犠牲しただけだ。



「……私は、ヒーローなんかじゃない。そうなりたいと願っただけ」


「違うよ。香織さんは、晶さんを助けようとあの屋上に走った時からもうヒーローだったんだ」



ズキンと痛む胸。記憶の片隅に笑っている晶がいた。結局私は何がしたかったのだろう。どこまで来てしまったのだろう。



「カオリ、お前は本当にこれでよかったのか?」



突然彩夏が私にそんなことを問いかけてきた。また胸が痛い。セーラー服のリボンのある位置に手を持っていきその痛みを抑えるかのようにぐっと握る。

よかった……よね?そう自分に聞いてみる。だがもちろん返事は帰ってこない。



「……よかったに決まってる。私の望む結末は、これだったんだから」



答えが出てくる前に私の口から言葉が出てきた。

そう言い聞かせていたのかもしれない。本当はもっと皆といたかったし、皆と帰りたかった。

これからも皆といろんなことをしたかった。



「お前の望む結末は、お前がいない世界だったのか?」

「……そうじゃない」

「じゃあお前の望む結末は何だったんだ?」



私の望む結末……それは、私の願い?

わからない。今私は満足しているんだろうか。でも、私が目指していたのは……



「……皆が、助かって、日常に戻ること」

「それならこの結末はお前の望む結末じゃない」

「え?」


「私にとっての()はカオリも含めて皆だからな」



その言葉を聞いて涙が出た。溢れるように止まらなかった。痛い、痛い……心が泣いている、そんな気がした。



「本当はっ……私も、皆と、一緒にっ!でも、もう、これしか方法がなくって……!」



涙が空に落ちる。私は俯きながら涙を流した。



「僕はこんな結末嫌だな。頑張った香織さんが救われないなんて」

「もう、いいの……皆が幸せなら……」

「幸せ?これのどこが幸せなの?」



少年は右手を上げるとそこには映像が映し出された。悔しそうな顔をしているヒロト、泣いているリク、全てを知ったクラスメイトたちの複雑な表情。そこには死んだはずのDBもいた。死んだ人間も生き返っていたのだ。



「じゃあ次はこっち」



そう言うと映像が切り替わる。今度は高校のパソコン室だ。

私のことを知っている人は皆悲しんでいる。ダイチが拳を強く握りながら何があったのか説明している。驚きながら涙を流してくれる人や、やりきれない気持ちを表情に出しながら悔しがる人もいた。



「実はこれ、時間が違うんだ。こっちの中学校の方は卒業式前の日常、こっちは高校に入ってからの日常……」

「過去と、今?」

「うーん、正しくは過去と未来かな」



中学校のほうの映像に目を向けるとリクは未だに里佳を抱えていた。里佳はもう目が覚める気配はない。



「……ねぇ、何で里佳は目を覚まさないの」

「あのゲームとともにその役割を終えたからだよ」

「そんな……どうにか助けられないの!?私の日常には里佳がいたのに!」

「出来るけど、だったらまた役割がないと……彼女の命はそういうものなんだ」

「役割……人並みの寿命で生活する、普通に生きるって言うのじゃダメなの?」

「できるけど……香織さん、本当に人のことばっかりなんだね」



私のほうを見ながら苦笑する少年、ほんの少し悲しげだった。

人のことばっかり、そんなことない、私だって人間だ。私の中での一番は私のはずなんだ。


映像の中の里佳は目を覚ました。自分がどうして生きているのか、とても疑問に思っている。でも何だか嬉しそうだ。



「で、カオリはどうするんだ」

「私……?私は死んでるんだよ」

「前にもここに来たよね?その時は僕はなんて言った?」



前、あの、レイナの時……生きるか死ぬかの状況、だったっけ。

思い出すとある一つの考えが浮かぶ。



「私、死んでない?」

「そう。まだ香織さんは死んでないよ。消えただけ。だから選択肢を与えようと思うんだ」

「選択肢……なんの選択なの?」

「香織さんが中学の取り戻したかったあの頃に戻るか、高校のただ普通に生きた時間に戻るか」



それはまるで夢のような話で、嘘らしくて、信じるのはちょっと、怖かった。

私の、死んでもいいと決心させるほどの仲間の元へと戻れるのだ、なんて素敵な選択肢なんだろう。



「カオリがいないと、カオリを犠牲にして生き残ったことをクラスメイトたちはずっと罪として抱える。お前のようにな」

「だから香織さんがいないなんて事実があればこの人たちはきっと幸せになれない」



二人は真剣な顔でそんなことを言う。だったら、決めよう。私の最後の選択。



「私は──────」

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