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リアルキルゲーム 〜白の呪い〜  作者: 沙乃
リアルキルゲームver.2
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【キュウサイ】一話目。

 周りには見覚えのあるクラスメイトたち。でもこの人たちは多分、一年二組のクラスメイトだ。

 この嫌な感覚、覚えてる。誰もが私の存在を無視するんだ。でも、それが少し落ち着いてるってことは今は晶がターゲット。


 過去にいるってことはここは晶の心の中……なのかもしれない。


 そしてその晶はというと────



「おはよ、香織!」



 この世界で、普通に過ごしている。自分の今の状態をわかっていないのか、わかろうとしていないのか、何事も無かったかのようだ。



「あ、うん……おはよ」



 身体中あざだらけで、いつもどこか怪我してて、それが今の晶。きっと明日には私に話しかけなくなって、自殺してしまう晶。



「あのさ、晶……その、今日の放課後空いてるかな」

「今日?別に空いてるけど」

「じゃあ、ちょっと話をしない?長くなりそうだし、放課後が丁度いいかなって」

「あー、うん。わかった」



 その後の授業は落ち着かなかった。こんな偽物の生活に耐えられない。そして今、殺されそうになっている仲間たちのことを考えると辛くて胸が痛い。


 そんな落ち着かない時間を過ごしてやっと放課後になった。私はすぐに晶のいる席に向かった。でも晶はいなかった。机の上に置き手紙。どう見ても晶の書いた字だ。


 〈屋上で待ってる〉


 私はすぐに屋上に向かった。

 何を話せばいいんだろう。話すとは言ったけれど、一体何を話せば晶は晶に戻るのか。私にはわからない。

 でもそんな不安は、すぐに無くなった。



「……迎えに来たんだね、香織」



 晶は、全てを知っていたんだ。少し悲しそうに、笑いながら私を見ている。



「そう、だよ……。皆が今、戦ってる。だから……」

「じゃあさ、俺たちも終わらせよう。あの日を、変えよう」

「あの、日……?」

俺が(・ ・)死んだ日(・ ・ ・ ・)、だよ」



 悲しそうな笑みを崩さず、晶はそう言った。そして、私たち二人はいつの間にか帰り道に立っていた。私が道路、晶がその先の線路。


 これは、もう一つの可能性。

 あの日の私が出来なかった場面(シーン)

 あの日、私は晶と一緒に帰らなかった。だから晶を助けられなかった。晶を殺したのは私。わかってる、ここで助けたって、どうせ現実じゃ晶は死んでるんだ。


 それでも、走れ。晶は死なせない。あの日はもういらない。

 届くように手を伸ばせ。結末を変えろ。あの日は繰り返さない。


 踏切が閉まる。音がうるさい。



「晶ッ!」



 ────私は晶を、助けられなかった。


 電車は晶と私を巻き込んで止まることなくそのまま数メートル進んだ。


 二度目の結末は、二人で自殺、になったわけか。



「ごめん……助けられなかった」



 今度は誰もいない教室に二人でいた。それも三年一組だ。私は私の席に、晶は窓から外を眺めている。景色がちゃんとある。春の景色だ。春の匂いが晶の開けてる窓からはいる。



「いいんだよ。それよりさー、三階からの景色ってこんなんだったんだね」

「うん。私はもう見飽きちゃったよ」

「俺も、ここで皆と過ごしたかったなー。そんなの言っても今更か」

「私も晶と過ごしたかったよ。あのね、今皆は最後の戦いになってるはずなの。晶が戻れば全部終わるの。だから……」


「わかってるよ、全部わかってる。でも俺は、怖いんだ」



 外を見ていた晶が腕の中に顔を埋めた。

 晶はいつも考えすぎちゃうんだ。前からそう。考えてないような態度のくせに人一倍いろいろ考えていて、一人で悩んじゃう。そんな人なんだ。



「何が、怖いの?」

「全てが終わったら、俺はどうなるんだろうってさ……。もちろん、死んでるんだから素直に死んじゃうはずだよ。でも、死ぬって、どんなものかわからないから……怖いんだ」



 そんなこと、私は考えたこともなかった。死んでないから、死んだこともないから。でも晶は違う。もう本当は死人。晶が永遠を求めたっておかしくない。

 晶は言葉には出さなかったがきっと「死ぬくらいならここにずっといたい」そう言いたいのだろう。その気持ちがわからないわけじゃないから私は黙ってしまった。


 このままじゃ皆死ぬ。ここにいたいと言う晶も死ぬ。だったらどうする?私は何をすればいい?

 こんなに晶を連れ戻すことが大変だなんて思ってなかった。



「困らせてごめん。俺ってこんなにわがままだったんだね。自分でも初めて知ったよ」

「晶はいつもそんな感じだったよ……」



 窓の場所から離れると、今度は黒板の方へと晶は移動した。

 私の視線も自然に動く。そこには私たち三年一組の皆で撮った写真がたくさん貼られている。当たり前だが、晶はどこにも写ってなんかいない。



「えー、俺ずっと前からわがままだったの?……あ、ねえ香織、この写真は?」



 晶が指を指したのは私と穂乃(ほの)(あや)が写っている写真だ。記憶が無かったからか、ちょっと懐かしい。



「これは修学旅行の写真だよ。京都に行ったの」

「へえ、じゃあこっちは?」

「これはー……体育祭だね。ほら、ここに泥まみれの浩人(ひろと)がいるでしょ?競技では一位だったのにはしゃぎすぎて転んじゃったんだよねー」

「ははっ、浩人らしいなー」



 それからしばらく私たちは黒板に貼ってある写真の話をしていた。端から端まで、一つ一つ、その時の思い出を語った。

 そして最後の一枚……それだけは、私には語れないものだった。


 だって、それはただの幻想、可能性、あったかもしれない未来、そんな写真だったから。



「卒業式……」

「俺も、写ってる……」



 浩人と陸に挟まれている晶、皆笑ってる。私も泣いたあとなのか、目の下は赤いが穂乃と綾と並んで笑って写っている。クラスメイト全員が揃って、それぞれポーズをとってその写真に写っていた。



「この未来が、本当ならいいのに」



 つい、そう呟いてしまった。もう晶は、この未来を見ることが出来ないというのに。



「ごめっ……」

「戻ろっか」

「え……?」

「何かもう、吹っ切れた。今までごめん。戻ろう」



 晶はもう、悲しそうになんて笑ってなかった。むしろ今までで一番綺麗な笑顔だった。

 私に手を差し出している。

 そうだ、私はこんな晶が大好きだったっけ。


 差しだされた手を握ると教室は消え写真はどこからか吹いた風に舞っていった。





「これで────全部終わりだ」


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