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リアルキルゲーム 〜白の呪い〜  作者: 沙乃
リアルキルゲームver.2
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【サイカイ】四話目。

 落ちた感覚はすぐに無くなり、つぶっていた目を開けるとどこまでも続くような広い空間の中にいた。


 青白い光がどこからか漏れだしている。

 目の前には黒いイナズマを纏った晶、その上には黒い大きな泡のようなものが二つ浮かんでいる。それをよく見ると片方には雪村彩夏、もう片方には里佳が入っている。どちらも眠っているような状態に見える。



「来るのが遅い!レイナ相手にどれだけかかってたの!?」

「悪ぃ!でも、そんなに大変そうでもないな。犠牲者は誰もいねーし、怪我も見当たらねぇ」

「そう思ってられるのは今のうち。私たちは何も出来てないだけ」



 何でかはわからないけれど、この部屋はやたら疲れる。身体が重いような感じがする。すごくだるい。

 けれど私はそんなことよりも気になっていることがあるのだ。早く確かめたい。だから、声を出さなきゃ。


 息を吸いこんで、届くように声を出した。



晶を(・ ・)返して(・ ・ ・)!」



 私の前にいた皆が、驚いて振り返った。

 私は、あれが晶ではないことを瞬時に察したのだ。姿は晶なのに、中身はまるで違う。晶のふりをした誰かだ。



「───ふはっ。さすが西田香織。俺が誰だか知らないくせに、晶ではないということに気が付いたのか」

「アンタ誰かなんてどーでもいいの!晶はどこ!?晶を利用して何をしようとしてるの!?」



 ソイツが一瞬で私の目の前に近づくと私のだるさはさらに増した。



「俺は、呪いを集めてるのさ。雪村彩夏から受け継がれてしまった白の呪いを」



 晶の姿が、顔が、近い。中身は違うってわかってるのに、いろんな気持ちが溢れてしまう。

 あまりにもだるくて、風邪をひいた時のように辛くなってきた。



「何のために、呪いを……!?」

「簡単に理由を話すわけないだろ。でも、呪いは命と何も変わらない。見ただろ?あのNPCがどうなったか」

「まさか、あれはっ……」


「雪村彩夏が作ったものっていうのは自分の持つ呪いの姿を変えただけ。だから、俺が呪いを回収すれば、その姿は崩壊する。でもお前は違う。半分はその身体に呪いを宿しているが半分は人間だ」



 身体が重いせいか、目の前のソイツが私に向かって両手を伸ばしても抵抗ができない。ソイツは黒いイナズマを出すと手だけにイナズマを纏い、私の両腕を掴んだ。

 その瞬間身体全体が嫌な感覚になる。



「い、やっ……!なに、これ!」



 私の中の何かが、無くなった。ソイツが私を離すと私はその場に膝から崩れ落ちるように座った。



「おめでとう。君はもう、普通の人間だ」

「アンタカオリちゃんに何したの!?」


「呪いを吸い取っただけさ。それより、灰山成、山川浩人、君たちは何者だ?呪いを持ち、化け物へとなった君たちがなぜこの空間でそれほどまでに元気でいられる?もしかして、白の呪いとはまた別の何かなのか?そういえば、黒羽晶も、そうだったな……」



 私のドッペルゲンガーはあっさりと無くなってしまった。

 そのことに少しショックを覚える。だが、そんなことを考えている場合じゃない。



「晶は、どこ」

「しつこいなあ。中身は違えど外見は俺が黒羽晶だ」

「そんなの、認めるわけないでしょ!?」


「なぁ西田香織……お前、自分の名前が何につけられたか知ってるか?……その身体だよ。ある日突然中身が変わったとしても、周りはその身体を西田香織だと認識する。つまり魂に名前なんてないのさ」



 ふと、心に穴が空いた感じがした。目の前のコイツの言っていることは確かにわかる。私たちは身体という入れ物に名前が付けられているだけで、中身に名前なんてないんだ。

 だから、コイツが、晶……?

 いや、違う。絶対に違う。私は魂も含めて晶を晶と認識していた。だから認めちゃいけない。



「お前は兄貴じゃねぇ!兄貴はお前みたいに人を見下した目なんてしねーよ!」



 ダイチが必死に大声をだしてその意見に反対する。晶はもっと優しい。話し方だってこんなんじゃない。もっと弱くて、でも誰よりも人を想ってる。コイツは全然晶じゃない。



「……あー、もううるさい。わかったよ、そこまで言うならカオリ、君にだけ晶を助けるチャンスをあげよう」

「……え?」



 座ったままの私に視線を合わせるようにソイツもしゃがんだ。そしてちゃんと目を合わせたとき、皆がどうしてコイツに何も出来なかったのか、それがわかった。


 ───勝てるわけがない。


 それが、一瞬でわかるほどの何かを持っている。この目は、人間の物じゃない。合わせればわかる。深い、闇を宿しているのだ。怖いと思った。身体がコイツは危険だと知らせてくる。



「カオリが晶を助けて戻って来れたら君たちの勝ちで、俺は大人しく消える。この身体の主が戻ってしまったら俺の居場所はないからね。でも、さすがに大人しくはしてられないから、カオリが晶の所に行ってる間、こっちはこっちで呪いを回収しつつ、俺に立ち向かってくるものを殺そう。カオリが帰ってくるまでにそれらが済んじゃったら俺が二人を殺しに行くよ。失敗したら仲良くバットエンドルートだね。どう?」



 私は周りの皆の反応を見た。皆、頷いた。私に託すつもりらしい。それしか選択肢がないというのもあるが、やっぱり少し不安だ。でも、皆はきっと、私を信じている。だから託してくれる。だったら、乗るしかない。皆が死んだら私も死ぬ。もうあんな罪悪感背負わなくていいんだ。

 まぁ、殺すつもりなんてないけど。



「ちなみに、回収した呪いは夏宮里佳の身体に流れている。全てを吸収したらきっと、人格すら変わる。でも、それを受け入れるだけの素質はあるから、肉体はそのままだろう。彼女は人を殺すだけの機械と何も変わらなくなるだろうな」

「アンタそれが目的なの!?」


「いいや違う。この地球上から人間を無くすとかそーいうちっぽけな話じゃない。元々は生命を殺すための呪いだが、大量に集まったら何だって殺せる(・ ・ ・)。生命なんて定義は必要ない。いらないもの全てを殺すんだ。世界の法則すらねじ曲げられる。これはもう、神の力だろ?」



 殺す、それは私たちが今までしてきたことよりももっと重い言葉になった。何だって殺すという言葉に当てはめることさえ出来れば無くすことが出来るんだ。確かに、神の領域に達してしまう。



「だが、俺には呪いを受け止めるほどの素質はない。夏宮里佳になることも不可能だった。だからこうしてコイツの身体に入ってるのさ」

「殺すって何なの……もう、意味わかんない!」


「わかってもらおうとは思ってない。まぁとにかく、カオリが失敗したらどうなるか教えておいただけだから。それじゃあ晶を迎えに行っておいでよ。時間はないから、急いだ方がいいかもなー」



 ソイツは無邪気に笑って、私に鳩尾をくらわせた。その痛みと気持ち悪さに意識を手放す。


 そしてまたおかしな空間に来ていた。

 ここが、晶のいる場所。懐かしい、中学校。周りには生徒がいる。だがいちいち驚いている暇なんてない。



「状況を把握して、晶を探さなきゃ……」

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