【救いゲーム】十一話目。
この場所は見覚えがあると思うが、どうも思い出せない。ビルなんて一度来たら忘れそうもないものなのだが、と考えながらソウヤたちについて歩く。
その後何度か戦闘は会ったがどれもそこまで辛いというわけではなかった。ソウヤたちもだいぶ慣れて、俺とヒロトが援護に回っても問題がないくらいには戦えるようになったようだ。
「リク、西田とはいつから会ってないんだ?」
突然ソウヤが隣からそんな質問をしてくる。いつから、と言われるとわからない。このゲームの世界では時間が存在しないのだから。だが体感時間で判断すると半年は会っていないのかもしれない。なんとなくだからもう少し短いのかもしれないが。
「……かなり前から、だな。思い出すとちょっと懐かしい感じがするし」
「そうか……やっと会えるっていうのにまたこんな場所じゃ、何ていうか、嫌だろ?」
「まぁ、仕方ない。再開できるだけよしとするさ」
そんな会話をしながら歩いていると前を歩くサリとヒロトの会話が聞こえた。
「多分、この先にいると思うから……再開はもうすぐだと思う」
「…………」
「ヒロト君?」
「あ、あぁ、わり、ボーッとしてた」
サリと歩くヒロトはそう言うと少し先に進んだ。振り返らず、無言で進むもんだからサリは心配になったのか、追いかけるように早歩きになる。
俺たちの進む先には大きな扉があった。少し隙間が空いている、
そこから、懐かしい声が聞こえた。そして、ヒロトは止まった。止まったままだ。開けようとはしない。
「あ、カオリちゃんだ……ヒロト君、どうしたの?会えるんだよ?」
「……おぅ」
それでもヒロトは動かない。サリが仕方なく開けるとそこにいた、灰山、香織、と、男子二名の視線は俺たちに集まった。
「……おいソウヤ、誰だそいつら」
「ダイチもいたのか。えーと、この二人は西田の元クラスメイトだ」
「おいカオリ、こいつらのこと知ってるか?……カオリ?」
ダイチと呼ばれた奴はカオリにそう問いかける。だがカオリは視線を伏せたヒロトを見たまま固まっている。
「久しぶりだな、カオリ……その、覚えてないだろうけど俺たちは……」
「ヒロトとリクだよね、久しぶり」
「思い出したのか……?」
「ごめん私、まだハッキリ思い出したわけじゃないんだけど君達二人を見て思ったの……」
カオリは笑った。あの、笑顔だ。
「私、君たちのこと大好きなんだよ。だからこんなにも懐かしくて、嬉しくて……昔の私にとって君たちはきっとかけがえの無いものだったんだ」
「……いいや、それはちょっと違う。お前にとってかけがえの無いものは俺たちだけじゃねぇ。もう、会ったんだろ、アイツらに」
ヒロトが突然口を開いた。
カオリは驚いたような顔をすると深く頷く。その顔は嬉しそうで、でもちょっと照れくさそうだ。
「会ったよ、会えた。助けたいって思った。それが私のやるべき事だって、わかったの」
「俺も、全員助けるつもりだ。絶対に」
その会話はまるで昔に戻ったんじゃないかと錯覚するには十分なものだった。
それにしてもカオリはなんだか違う気がする。記憶が無いのだからそれはそうなのだろうけれど、やっぱり違和感はあった。
「……とりあえず、感動の再開おめでとう。でもそっちから来るなんて何かあったの?」
突然会話に割り込んできたと思えば灰山は真剣な顔で俺たちを見つめた。そうだ、再開だけでよろこんでいる暇はない。
「夏宮が黒羽に連れていかれた。……俺たちは手も足も出なかったんだ。だから早く合流してどうにか今の状況を変えたくてな」
「里佳ちゃんが……思っていたより早かったね。そのこと、どう思ってるの────彩夏ちゃん?」
灰山は俺たちの後ろにいた雪村を見ながら言った。どうやら灰山にも見えていたらしい。そして状況も何となくわかっているようだった。
『……なんだ気付いていたのか。そうだな、予想以上に早かったから、さっさと対処しなければならない。昌を倒すにしろ、今はまずアイツを助けないとな』
ずっと黙っていた雪村が口を開く。だが雪村が見えているのは俺とヒロトと灰山、そして……カオリ。
それ以外はきっと、どこからか声が聞こえる、くらいにしか思っていないのだろう。
「でもおかしいな……さっきここに現れた昌君は里佳ちゃんなんて連れてなかった……。それに、なんだかしんどそうだったし」
「昌がここに来たのか!?」
「慌てないでよリク君。一応、追えるように私も考えてるの」
『何だ成、何か策でもあるのか?』
雪村がそう言うと少し嬉しそうに灰山は笑った。そして指をさす……その方向には大きな穴が床に空いていた。
「ま、私も力は弱まったけどこのくらいなら出来るからね」
「い、いつの間に……すごいね成ちゃん。音すら聞こえなかったよ」
「私だって怒ってるの、私の力をうまく扱えないまま持ってる昌君にね。あの力は私が生まれた時からのものなんだ、私は私が奪われた感じだよ」
灰山は笑っている。笑顔なのに、少し怖い。カオリと灰山が仲がいいと何だか違和感があるのはきっと俺だけじゃないんだろう。
その穴にソウヤが近付くと、ソウヤの顔は一瞬のうちに真っ青になった。
「ソウヤ?」
「この穴、どこまで続いてるんだ……。何も無い、窓の外みたいだぞ」
そんなソウヤの言葉を聞いて俺もその穴を覗いてみる。吸い込まれるような黒いその穴に恐怖を感じた。
『……相変わらず、お前の力はめちゃくちゃだな』
「───本当に、まったく相変わらずです。少しは人間らしくしてみては?」
後ろから声がした。ずっと忘れていたけれど、そうだ、こいつもいたんだ。まためんどくさいことになりそうだと思いながら振り返ると予想通り、そいつはニッコリと笑って小さな刀を両手に持って俺たちに向けていた。
「そうですね、例えば……死んでみるというのはどうでしょう?」




