【救いゲーム】十話目。
放送室が光に包まれ目を瞑った次の瞬間、空気が変わったのがわかった。もう一度目を開ける。
何となく見覚えのある場所が視界いっぱいに広がる。そして見知らぬ四人組。男子二人に女子二人。傷を負っていないところを見るとまだこのゲームに来てから戦闘をしていないのだろう。
「な、何……急に人が……」
「えっと、何から説明すればいいのか……。俺はリク、君たちは……」
「わ、私たち突然この世界に来てしまったの!お願い、何か知ってるなら助けて!!」
「っ……あーめんどくせぇ。無理なんだよ、この世界からそう簡単に逃げられるわけねぇだろ。とりあえず、お前ら西田香織って知ってるか?」
「おいヒロト……」
どうやら俺たち以外には雪村の姿が見えていないらしい。動揺する女子二人とは違って男子二人は俺たちを睨んでいるようだ。
突然現れたおかしな人だろうが、そんな対応をしなくても、と思っていたが男子二人は武器を取り出した。ハンドガンとナイフだ。
「……なんでお前らが西田のこと知ってるんだよ。明らかに怪しいだろ」
「だから武器を出すのか。なるほどな……」
「敵だと思われちゃったのか。そうか……」
「「お前ら、俺たちに勝てると思ってんのか」」
俺たちに近づいていた女子二人が固まった。それほど殺気が出たんだろう。
一瞬男子もその殺気で怯んだが、戦う意思はしっかりしているからかまだ武器を下ろさない。
「何だ、しっかりしてるじゃねーか」
「だな。まぁ俺たちは怪しいだろうが、敵じゃない。こんな状況だから疑うのも無理はないけれど」
俺たちは元から戦う気はなかった。敵じゃないとわかっているからだ。
「じゃあお前ら一体なんなんだ!」
「……西田香織の元クラスメイト。いろいろ事情があって、合流しなければならないんだ」
嫌そうな顔はしたが、納得はしてくれた。話を聞くと、どうやら班別行動中だったらしい。
しばらく歩くと前を歩く二人の足が止まった。
「どうしたんだよ」
「……今まで避けてきたんだ。俺たちには倒せっこないって思ってたからな」
「だから何の話をしてるんだよ!」
ヒロトが二人の間を割って前に出る。そして、笑った。あぁ、そういう事か、と。
そしてヒロトが片手を振り下ろすと鉄パイプが現れた。それを構えて振り返る。
「リーダー、ちょっと手伝ってくんねぇか?」
その言葉だけでわかった。丁度いい、このゲームでの先輩らしいところ、この四人に見せられるしな。
「おう、もちろんだ」
前線はヒロトに任せる。少し後ろから、俺はスナイパーライフルを構えた。
黒い曖昧な存在。なんだか懐かしい。最初の頃、コイツらだけでも苦労したんだよなあ……。今じゃボスキャラしか相手してねーよ。
「っせいッ!」
鈍い音が少し響く。後ろの四人を庇いながらの戦闘だ、ヒロトもかなり気を使っているだろう。
トントンと、引き金を触る。片目を閉じて、狙いを定めた。アイツらは殺気が出れば実体化する、その一瞬で弾丸を撃ち込まなければならない。
だが、今はヒロトが戦っているから殺気はバンバン出てる。
「……はぁー……」
息を吐いてぐっと止める。撃つ前は自分の鼓動だけに集中することにしているからだ。
タイミングよく撃たないとヒロトに当たってしまう……。でもヒロトなら俺の撃つタイミングがわかるはずだ。
バンッと音が鳴ると前にいる敵の心臓部分を俺は撃ち抜いていた。
その調子で撃ちまくる。もちろん、この廊下の狭さで外すことは無かった。
「よーし、まぁ数は多かったけど片付いたな」
「久しぶりの戦闘な気がする。ヒロトとしか殴りあってなかったし……」
と、会話をしていると後ろの四人が固まっているのに気が付いた。
「どうしたんだ?」
「えっ、いや……お前ら、本当にただの人間?」
「傷付くなあ。……ただ俺たちは中学卒業前にここに来てそのまま出れなかったから無駄に戦闘になれちゃったのかもな」
「そうだな……。俺たち同い年なんだぜ?現実では行方不明者だけど」
驚いて、沈んで、本当にこの人たちは優しい。俺達のことを考えたのか、少し悲しそうな表情をしている。だから、香織のことは隠してある程度の事情を話した。
石化したクラスメイトのこと、どこかへ消えてしまった夏宮のこと……その一つ一つに彼らは苦しそうな顔をした。
「そんな辛いこと、よく今まで耐えてきたな……」
「まあ、痛かったし、辛かったし、死にかけた……すっげー怖かった。でもそんなことで立ち止ってたらいつまで経っても俺たちの日常は返ってこないからな」
「……わかった。俺は、お前らに協力するよ。改めて、俺はソウヤだ。よろしくな、リク、ヒロト」
「わ、私も協力する!私はサリ、よ、よろしく……」
ソウヤと言った男子はなんとなく俺に似ている気がした。サリと言った女子は元々は大人しい性格なのだろうと予想される。
「私はナズナ。サリが頑張ってるから協力するだけなんだからね?」
「……シンだ、よろしく」
握手をするために出された手をみて、俺は固まってしまった。こんな場所で、こんな状況で、いつ死ぬかもわからない俺に手を差し出している。
出会いたかった、未来の友達だ。
中学卒業して、高校に入学して、出会っていたかもしれない友達。
「……俺はこれを夢見ていたのかもな」
「え?」
握手をして、久しぶりに暖かい体温を感じた。
こんな状況じゃなきゃ、もっと馬鹿みたいな会話して、ギャーギャー騒いで、もっと普通に楽しめたのに。……普通で、会いたかった。
「なんでもねーよ」
俺はそんな一言で、本心を隠した。




