【取り戻しゲーム】七話目。
「ぁ……ぅ、気持ち悪ぃ……」
それからしばらくしてユウ君は無事目が覚めた。
今までのケガが治っていることに戸惑っていたが、成ちゃんを見てまた目つきが変わった。
それを見て成ちゃんが呆れたようにため息をつく。貧血でフラフラとしているユウ君にそれなりに大きい成ちゃんはデコピンをした。
「アンタねぇ、助けて貰ってその態度は何?はぁーあ、やだやだ。これだから馬鹿宮は」
「るせぇ、その呼び方やめろ……」
「はいはい。さっさと体調戻してよねー」
にっこりと笑って成ちゃんは言う。
まるで慣れているようだった。
……あれ?この二人すっごく仲がいいのかな。
私たちが歩き出すと、ユウ君があまりにもフラフラしていたため支えて行こうとしたが「男が女に助けてもらうなんて嫌だ」と言い張られ仕方なく後から見守る形になった。
ビルはやっぱり暗くて階段などは気をつけないとすぐ転びそうになってしまう。
何か灯が欲しいと思い、探そうとしたがポケットに入っているものを思い出した。
電源を落としてあったスマホを起動し、カメラの灯で目の前を照らす。なんとなく怖かった気持ちも、少し和らいだ。
「……なぁ灰山、お前は何のために戦ってるんだ?前とは理由が違うだろ?やっぱりリベンジか?」
突然ユウ君が成ちゃんに聞いた。
私も個人的に気になっていたから、止めることなく聞くことにする。
「あぁ、私があれだけこの世界にこだわっていたのに今の状況はおかしい、と?そういう事かな」
ユウ君はゆっくりと頷いた。
「……普通の、ただの優しい男の子を私は私のために化け物にしてしまった。私の呪いをちょっと分けただけだったのに、その子は私よりも化け物になっちゃったの。その子に負けて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて……仕返しをしてやりたい。そうしなくちゃ私は…………」
「……何で黙る?その先が言えないのか?」
「っ……あははっ、私、いつの間に昔の自分に戻ってる?カオリちゃんのせいだよ……あなたが、あまりにも、昔の私に似ているから……でも私は結局、化け物なんだ」
成ちゃんが泣いていた。初めてあった時のように泣いている。
それを見たユウ君は、また舌打ちをするとフラフラとしながらも成ちゃんに近付いた。
成ちゃんの肩をつかむ。
「え、ちょっ、馬鹿宮……やめて、私に、触れないでッ!」
「うるせぇ、いつまでもいつまでも、お前は引きずりすぎなんだよ!」
「私に触れたら、今、触れたらアンタはっ……!」
止めに入ろうとしたが、目の前でありえないものが見えた。
暗くてもわかった。成ちゃんとユウ君が、キスをしているのが。
すごく、優しいキス。鼓動が早くなる。徐々に私の中の体温がどこかに飛んでいくようだった。体温がなくなる。私が消える。
「……ん、はっ、何してるの!?下手したら今、死んでたかもしれないのに!!」
「生きてる。俺は死んでないだろ?お前は化け物なんかじゃない。ちょっと人と違うだけだ。前にも言っただろ」
……何でかな。あぁ、壊したい。成ちゃんだけ救われるなんて、不公平だ。そんなの、認めるはずないじゃないか。ふざけるな。私だって、辛いのに。いくつもの犠牲の上にたって生きてるんだ。私の辛さは誰にもわからない。わかろうともしてくれない。何なの?許さないとか、嘘じゃん。救ってるじゃん。演技?
……私を、騙そうって?そんなの、そんなの、それこそ、許さない。許せない。私だけ、また、孤独の中で生きている。そんな感覚になっていた。
「……あーぁ、もう、なれたから。そーいうの」
孤独とか一人とか、あのパソコン室で目覚めた時からだった。
それを感じで生きてきた。だからなれてる。
「カオリ……?」
「!……ちっ、違う!これはカオリちゃんじゃない!!これはっ!!」
ワタシは腰にかけてあった刀を取り出し、成ちゃんに向ける。殺してやる。私を苦しめる奴なんて。それにワタシは覚えてる。灰山成が、私にしたことを。仲間にしたことを。
だからワタシはにっこりと笑って言った。
「……ドッペルゲンガー、見たことある?」
さぁ、戦闘開始だ。




