【取り戻しゲーム】五話目。
私はまず、動けるクラスメイトを集めなければならない。
ダイチと成ちゃんは動けるとしてせめてあと二人は欲しい。
でも今は絶望し、俯いているクラスメイトばかりだ。このままじゃ全員死んでしまう。
「ねぇ成ちゃん……前の、リアルキルゲームはどうだったの」
「前回のってこと?そりゃもうめんどくさいくらいにカオリちゃんたちは強かったよ。こんな状況は無かった」
「でも、この状況は当たり前なんじゃないかな。普通、人の命が無くなるなんてこと私たちには関係ないんだから」
「それは違うよ。これは甘えてるだけ。死んだものは仕方ないんだ。それを元の状態に治したいのならば自分が動くしかない。なのにこの人たちは動かない、つまりその程度の人しかいないってこと」
反論は出来なかった。それもまた正しい考え方なのかもしれないと納得したのだ。
成ちゃんの言い方はどこかトゲがあるような感じだが、いつもちゃんとした意見を言っている。否定ができないような言葉ばかりを選んで。
だが、その程度の人たちだったとしても私にとっては必要な仲間たちだ。いないと困る。どうにかして動けるクラスメイトを見つけなければならない。
「……カオリちゃん、顔色、悪いよ」
「心配してくれてありがとう。でも、レイナも無理しないでね」
「私は……大丈夫」
レイナが私の隣でクラスメイトたちを見ている。
その表情にはどこか違和感があって表現の難しい表情だった。
悲しいのか、嬉しいのか、真顔なのか、わからない。
レイナはあまり怖がっているようにも見えない気がする。慣れている、とはまた違う感覚だ。
「カオリ……このままじゃ俺たちここから動けないと思う」
「わかってるけど……危ないことをみんなに強制的にさせるわけにはいかないよ。でも、少人数で動くとただ死人が増えるだけだと思うし」
「怖いことを真顔で言うなよ。……でもまぁ確かに、誰も動かなそうだよな」
ダイチの顔が少し悔しそうな顔になった。
このままじゃ……会えない。リクさんにも、ここに置いてかれた私自身とも言える記憶にも。
「私はついていくよ。役に立たないだろうけど」
レイナは私の目をまっすぐ見て言った。その瞳に吸い込まれそうになるような感覚を覚えながらも頭を振って変な思考を落とす。
レイナにありがとうと言って大きな声を出す準備をする。
もし絶望の中にいるならこんな声も届かないかもしれない。でも、やっぱり助けてあげたい。私の出来ることなんて限られていて、その中でもがいてもうまくいかないことの方が多かったかもしれない。でももがけた。諦めなかった。だからきっと大丈夫。
「皆にっ、聞いてほしいことがあるッ!!!!」
視線はゆっくりと集まった。
「私たちは今、最悪な状況なの。ここから抜け出すためには命をかけて、戦わなきゃいけない!!それしか方法がないの!こんな所で、立ち止まってなんていられないでしょ!?誰かっ……誰か私と一緒に戦ってくれませんか!!」
頭を下げて精一杯叫んだ。
「それで俺たちが死んだらどーすんだよ!誰かが死ぬのが見たいのか!?」
「違うよッ!!!ここにいたらそれこそ死んじゃうの!このゲームの中でずっといたいわけじゃないでしょ!?」
「俺はカオリについてく」
「私、も……」
リンやカイが私と付いていく覚悟をするとそれに続いて付いてきてくれる人が増えた。
それを見て私に反論したリュウトは嫌そうだが付いてきてくれるようだ。
二十二人のクラスメイトが一気に動く。隣を歩く成ちゃんはなんだか楽しそうだ。持っているナイフをグッと握り真っ直ぐ前を見ている。
「じゃーとりあえずグループになってー」
「えっ?」
「この先、沢山部屋ありすぎてどこが次のステージに通じるのかわからないの。もちろん私とカオリちゃんとダイチ、あとはー……」
「私!カオリちゃんと一緒に行動する!!」
震えた声で大きな声を出したのはレイナだった。
そんなレイナをみて成ちゃんは先ほどの笑顔を歪めた。
「……じゃ、レイナもね。今はまだ様子みてるけど変なことしたら殺すよ?」
「……何もしませんよ。大体、今さらおかしな事をやっているのはあなたじゃないですか」
二人は聞こえないように会話をしている。
成ちゃんは睨み、レイナは怯えた表情で見つめあって話している。あまりいい雰囲気とは言えない。
そんな二人を見ていたらいつの間にかみんなはグループになっていた。
「えっと二人とも、もうみんな探索入ったけど……」
「じゃ、行こっか」
冷たい声色で一言だけいうと成ちゃんは近くの部屋に入った。それに続いて私たちも入る。
そこにいたのは学ランの男の子だった。
「あ、れ……あなた、誰?」
『はっ?あー……、そっか、覚えてないのかー。俺はアキラっていうんだ』
「まさか、あなたも想い、なの……?」
『おう。俺はお前に殺してほしいんだ』
「あぁ、なんだか知っていると思ったらあなた大石明じゃない。ふふっ、このゲームもずいぶん不安定になってるみたいね。死人がわざわざ生き返るなんて。いや、死んではいないか。でもまぁあなたみたいな人が出てきているのは想定外」
成ちゃんがナイフを構えてアキラに向ける。その顔はまた歪んでいく。でも笑っている。
『誰だか知んねーけどお前に用はねぇんだよ。カオリ、俺を殺してくれ。俺はお前を助けたいという想いで今ここにいる。本当はこの先一緒に行動しようと思ってたけど記憶を取り戻すことがお前を助けるってことだよな』
「意味がわからないよ!」
『お前はな、このゲームで出会う俺たちクラスメイトの想いを叶えるか戦って殺すことで記憶を取り戻すんだ』
「殺す……?そんなの無理に決まってるじゃんッ!!」
ふざけんな、と叫んだ。ダイチは意味がわからないようで私とアキラを交互に見ている。
『無理か。そういうと思ってたぜッ!!!』
「あ、がッ……!!」
にやりと笑ったアキラは私に鳩尾を入れてきた。
「うぅっ……ぁ、い、たい……」
「お前っ、カオリの知り合いだろ!?なんで殴るんだよ!!」
『はぁー?これは殺し合いなんだ。お前見てーな甘い奴がこの戦いに入ってくんじゃねーよ』
ダイチに言ったアキラの言葉で目が覚めた。
そうだ、これは殺し合い。今さらこんな幽霊を殺すことに何を躊躇していたのだろうか。
刀を鞘から抜いて構える。一度目を閉じるとそれと同時に涙がこぼれた。
『さぁ、殺せよ。ここを刺せ』
「……次は、助けるよ」
アキラが笑って指を指しているのは心臓がある胸の位置。
刀を力強く握り、助走をつけて片手に持ち直す。槍で刺すように心臓めがけて腕を伸ばした。
本当に拒否することもなくアキラは私の刀を受け入れた。静かに倒れ、薄くなって消えていく。刀には血すら付いていなかった。刀を鞘に戻すと突然頭にノイズ音が響く。気持ちが悪い。
頭の中に映像が流れた。暗い部屋の中で笑っている人たちの映像が拒否しても、耳を塞いでも止まることなく流続ける。
『俺さ、みんなを守りたいんだ。だからお前も一人で背負わないで俺を頼れよな!』
にっこりと笑ったアキラが私の目の前にいた。
過去の私はその言葉に苦笑しか返せていなかったようだ。
「……頼れったって……いないじゃん。今、私の前にいないじゃん……ごめんアキラ。もう何も、失いたくないよ……」




