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リアルキルゲーム 〜白の呪い〜  作者: 沙乃
リアルキルゲームver.2
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【救いゲーム】四話目。

 正真正銘の化物、そのセリフを聞いたのは二回目だ。


「灰山、お前は晶にやられたはずじゃ……」

『まぁね。……ちょっと油断したら晶君、私のこと殺したもん。そしたら外の世界にポイッて捨てられちゃった。全く、女の子の扱いがなってないよねー』

「でもお前は生きてる、それは何でだ!」

『私は精神的にゲームに入ってたから、外の身体は生きてたの。……まぁそんなことより、いい報告があるの』



 灰山は何一つ変わっていなかった。

 その余裕な声色も、話し方も。まるで、こうなるのはお見通しだった、と言わんばかりに。



「いい報告?なんだよ」

『え?私が生きてたってことだけど』

「別に嬉しくねーよ!!」

『嘘だよー、ノリがいいねリク君。……あのね、私と共にあの子が帰ってきたんだよ。君にとって、大切なあの子が』



 俺にとって大切な人は沢山いる。

 けれどその言葉を聞いた時は一瞬でアイツだってわかった。それしかありえないって思った。



「まさか、カオリが……?」

『だーいせーかーい!!ま、今ここにはいないんだけどね。私はカオリちゃんのいる高校に入って、そのクラスごとこのゲームに入ったの。で、今第一ステージの安全地帯に無事侵入ってわけ』

「お前っ……何で他の連中まで巻き込んだんだよ!カオリだってやっと平和に暮らしているのに!」


『ふぅ……あのねリク君、目の前に面白いものがあったらいじりたくなっちゃうでしょ?そーいうこと。ちょっと気になる人もいたの』

「その、気になる人ってのは?」

『合流出来たら教えるね。あ、スピーカーモードにしてくれる?』



 言われるがままスピーカーモードにするとヒロトの目つきが変わった。もしかしてヒロトを生き返らせたのは灰山なのか……?

 俺達三人は向かい合うようにして座り、その中心に端末を置く。

 まるでこれから作戦会議でもやるみたいだ。



「成、今そっちはどうだ?」

『最悪だよ。君たちみたいに切り替えが出来ないのか、クラスメイトの八割は絶望してピクリとも動かない。……これだから最近の若い奴らは』

「あとの二割はどうだ?」

『……ダイチっていう奴がカオリちゃんの指示に従って四人一組のグループをつくってる。それで武器とか捜索するみたい』

「カオリはリアキル三回目だもんな……やっぱり指示もしっかりしてる」



 呟くように俺が言うと電話越しにため息が聞こえた。

 その後、衝撃的な、耳を疑う言葉を聞いた。



『今のカオリちゃん、リアキルのこと何も覚えていないの』

「……は?それでなんで指示ができる?」

『身体は覚えてるんだよ、多分。なんて言うんだろう……この世界に来てからもカオリちゃんは冷静だった。いまも武器を探しに一人でどこかに行っちゃったしね』

「………………ちょっとまて、成。第一ステージってどこだ?」



 ヒロトの声のトーンが下がり、急に立ち出した。

 どこか焦っているようだ。



『……多分、ビル?安全地帯は入ったところのホール、おせじじゃなくてめちゃくちゃ広い、馬鹿でかいビルなのかな?私は怪しまれないようクラスメイトとは離れて電話してるから、適当なトイレに入ったけど……』

「カオリは!?どこに向かった!?」


『お、落ち着いてよ……!階段を上ってたけど、何階のどこにいるかはわかんない。予想以上に行動力ありすぎてこっちがお手上げ状態なんだから!』



 あの灰山が取り乱している。ヒロトとはどのくらい仲がいいのだろうか?

 いつ出会ったのだろうか?わからないから、あえて気かない。

 わからないってことは聞かされていないから。聞かされていないから、言いたくないのか、言わなくてもいい事ということだから、俺は聞かない。


 そんなこと(・ ・ ・ ・ ・)より、だ。カオリが記憶を失っていること、相変わらず単独行動をしていること、そっちのほうが大問題だ。アイツは、俺たちが止めないと躊躇うこともせず死んでしまう。記憶を失って、死にたくないと叫んでいたとしても、大切な仲間がいれば涙を飲んで犠牲になるだろう。


 だから、こんな所で傷なんかを気にしてじっとしていられるものか。カオリが来ているなら、こっちから向かわなければ。

 もしかしたら、いや、もしかしなくても助けられるはずだ。


 そう考えていたら力強く腕を掴まれていた。その細くて弱々しい手は、夏宮の手だった。

 暖かい、体温を感じる。



「りっくん……嫌だよ、絶対行かないで。うちらが次何をすべきか、冷静に考えて」



 肩と肩が触れるくらいの距離で夏宮は俺にこそっと言ってきた。

 その行動に、空気を読まない俺の心臓の鼓動は早くなる。

 もちろんその距離だ、ヒロトには聞こえていない。

 静かに頷くと夏宮は手を離しすぐに離れた。まだ体温がかすかに残っている。



「まずいかもしれない、成、いますぐカオリを探してくれ!」

『りょ、了解!……ってダイチ、どこに行くの!?』

『カオリを探しに行くんだ!』


「ちょうどいい、そのダイチって奴を追え!」

『ヒロトアンタ人使い荒すぎない!?私足遅いんだからね!あー、もうダイチ早い!!』

「本当にやばい……カオリならそう遠くないはずだ。アイツはいつも近くの部屋に入るからな!あと、もし右か左かで迷ったら右に行け!カオリは二択だったら右を選ぶ、記憶を失っていたってその癖は直らねぇよ!」



 俺より知っている。

 ヒロトは俺よりカオリを知っていた。

 もしかして……という疑問が頭に浮かぶが頭を振ってその思考を落とす。

 そうだとしても、それならそれだ。今、考えることじゃない。



「成、あいつはきっと怖がってる。死ぬのを素直に怖がってるはずなんだ、だから化物相手じゃ戦えない。助けてやってくれ!」



 そう言えばそうだった。いつもどこでも突っ込んでいったあのカオリも一度は弱音を吐いていた。怖かったのかもしれない。もう嫌だって叫びたかったのかもしれない。それなのに、俺は気付かなかった、自分のことで精一杯だった。謝らなければならない、例え覚えていなくても、ちゃんと次は支えてやりたい。


 電話が切れて、静まり返った美術準備室で俺は一言言った。




「……大切なやつのために、理由はそれで十分だ。

 そろそろ始めようか。救うための戦い(ゲーム)を。」

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