【取り戻しゲーム】二話目。
「……っ」
刀と刀がぶつかり合う。お互い力を入れているから合わさってる間はカタカタと刀が揺れる。
『けっこう頑張るんだね、カオリッ……!』
「当たり前でしょ!こんな所で、死ねないっ!!」
『さすが私の友人だよ!……ずっと、カオリと本音を言い合いたいと思っていたの。でもカオリは私に何も本音を言ってくれなかった。だから今、言葉じゃなくてもカオリの本当の顔が見えて嬉しいよ!』
「昔の私なんて、今の私にはわからない!!何を言われようが私は私だから!」
アヤの力が弱まった。
おかしいと思ってアヤのほうを見るとアヤの瞳からは大粒の涙が溢れていた。戦っていた時は赤く染まっていた瞳がだんだん黒く戻っていく。
『ふふっ……今のカオリも、私は好きかも』
「えっ?あ、ありがとう……」
少しずつアヤが消えていく。
綺麗に薄くなっていく。
「何で消えてるの……」
『今の私は想いだから。本当のカオリが知りたい、そういう想い。叶っちゃったから私は消える』
「何それ……死ぬってこと?」
『違うよ。次に会うのはカオリが私を助けた時。ちゃんと待ってるから』
「私が助けられなかったら……」
『何言ってるの?助けられるよ。だってカオリだもん!』
アヤは笑って消えた。
想い、か……私の元クラスメイト達は一人一人沢山の想いを抱えて、今もこのゲームに閉じこめられている。
きっと、辛いんだろうな。
「……てか、結局一撃も当てられなかった」
呟いて、その場に座り込んでしまった。
なんだか吐き気と眩暈がするのだ。
グラグラと揺れる視界に映ったのは一つの人影。
「カオリッ!無事か!?」
「リクっ……?」
「何言ってんだよ俺はダイチだ!しっかりしろ!!」
本当に、何言ってるんだろう。
前にもこんなことあった気がする。
でもリクって誰だろう……。
「あぁ、わかった……。広瀬大智、ダイチか……、ごめんなんか、眩暈が……」
「何があったんだ?」
「……昔の友人に会ったの」
頭を抑えるとある一つの記憶が蘇る。
二人の友人とボロボロの部屋で何かと戦っている。セーラー服を着ている私がいるという事は無くした記憶の一部だ。
右腕を怪我した私がナイフを持って、戦闘を引き受けたようだ。
思い出した記憶はそこまで。
「大丈夫かよ……?」
「うーん……大丈夫。私は、これから強くならなきゃいけないから」
「……ばーか」
こつんと頭にチョップを打たれる。
こっちは眩暈がするっていうのに全く最低なやつだ。
しかも馬鹿とはなんだ。
私は、ただ取り戻したいから強くなろうと思っただけなのに。
「何で叩くのさ……」
「お前だけが強くならなくていいんだ。俺も強くなる」
「……ダイチは、優しいね」
「もっと褒めてもいいぞ」
「調子に乗るな馬鹿」
少し安心できるやり取りをしていると部屋の入口のところに何かがいた。
もやもやしていて存在自体が曖昧なもの。
なんだか、見覚えがある。
何か嫌な予感がして近くに合ったデスクの下に二人で隠れる。
少し窮屈だが我慢しなければどちらかの命が散るだろう。
「ネェ、ソコニイルノ……?デテキテヨ……」
「あれ、は……何!?」
「静かにしろ……!あそこにいられちゃ脱出も不可能だ……しかもバレてる、これは戦うしかない」
「た、戦うって言ったってダイチ武器持ってるの……!?」
「持ってるよ……ナイフだから、近づかなきゃなんねーけど」
「それは私も同じだよ」
「ハヤ、ク……出テコイ……」
何かがおかしいと思った。
でもその違和感の正体が全く予想がつかない。
「ハヤク……コロシテヤル……コロシテ、ヤル……」
「ダイチ、私は……」
「……怖いだろ?声も身体も震えてる。隠れててくっついてるせいで心臓の音も聞こえる……わかってるよ、わかってやれる。だから、今お前は出なくていい」
早く倒そうと思って隠れている場所から出ようとするとダイチに腕をつかまれた。
焦っているせいで、自分の心に気づけなかった。そうだ、私は今、怖いんだ。
「でも、私が囮になればダイチは簡単に逃げれる……!」
「男の俺に逃げろってか!?ふざけんのもいい加減にしろよ!」
「その命を助けるのも、守るのも、男とか女とか関係ない!」
「俺はお前に死んで欲しくないんだッ!!」
「……ミツケタ」
「「!?」」
敵はダイチを引っ張りだしてほおり投げた。他にもいつくかあったデスクに身体を打ち付けて苦しそうにしている。
「うっ……」
「オマエ、ドッペルゲンガー……コロサナキャ……」
「ドッペルゲンガー……ッ!?」
片手で私の首は掴まれた。仰向けに倒れた私を上から体重をかけて押さえ込む。首を締めるには十分過ぎる力に足をバタバタと動かすことしか出来ない。
「……や、だっ……!死に、たくないッ!!」
「……ドッペルゲンガー、コロス」
首を絞めるだけでは満足しないのか、もう片方の手にはいつの間にか出したナイフ。
振り上げ、私の心臓目掛けて落とす。
もう、死ぬと思った。
けれど次の瞬間、驚くことが起こった。
私を殺そうとした敵が、急に力を抜いて倒れたのだ。
「っはぁッ……はッ……な、にが……起きた、の……」
「カオリちゃん、無事でよかったよ。ダイチも、そこまでひどくなさそう……」
私を助けてくれたのは、意外な人物だった。
私達を、殺すんじゃないかと思っていたからだ。
でもその人物はあのポーカーフェイスを崩して本当に心配そうに私とダイチに駆け寄ってきた。
息も切れているところを見ると走って来たんだろう。
「成ちゃん……ありがとう……」
「本当によかった。あ、ごめん、ちょっと電話してるから」
「あ、うん……」
「……間に合ったよ…………。アンタの勘は本当にすごいね、ヒロト」
その名前を聞いた時、私の心臓はわかりやすくドクンと音を立てた。
微かに聞こえる男の子の声……。
何でかわからないけれど、私の目からは溢れるように涙が流れた。




