【救いゲーム】三話目。
美術準備室で休んでいるとある一つの疑問が頭に浮かんだ。
晶とヒロトが話している時、ヒロトはゲームで死んだ人間は他の場所にいると言っていた。
なら、教室で固まったクラスメイト達はどうなのだろうか、それが気になる。
「なぁ、固まったあいつらは死んでないのか?」
「みたいだな。死んだ人扱いにはなって無かった……もしかしたら、どこかでその魂が生きているんじゃないかって俺は思うよ」
「……魂、ね。どちらかといったらそれは想い。強い、望んだ想いなんだよ」
夏宮はどこか遠くを見据えるような目で言った。
笑顔ばかりの夏宮からは想像も出来ない表情……、ほんの少し悲しく思った。
「……どうしたんだよ、夏宮」
「ふぇっ!?いや、なん、か……うーん、何だったんだろう、あははっ……よくわかんないや、うちどうしたんだろうね」
誤魔化すかのように夏宮は苦笑いをした。
その顔がやけに印象深い。
「……想い、か。まぁそれはわかったとしてあいつらの石化を解除するには雪村の力が必要、かもしれない。そうなると、佐蛍……いや、黒羽から雪村の身体を奪わなければいけないというミッションが発生するんだ。まずはそこから」
違う。
そこからじゃない。
それはつまり晶を倒すか、殺さなければならないということだ。
それが最初のミッション。
やらなければいけないこと。
それを考えたら、俺と出会ったあの愛想笑いのヘタクソな黒羽晶の記憶が過ぎった。
あの短い間で、俺と晶は十分過ぎるほどの絆を得てしまったんだ。
だけど、晶は今俺との絆を忘れてしまった。
封じ込んだのかもしれない。
そんな悲しい状態の晶を俺が倒すのか?
無理に決まってる。大切だったんだ。晶が。
初めてあった時から、ほっとけないって思ったから。
「俺は、晶を倒せない……」
「はぁっ!?何言ってんだよリーダー!」
「そうだよりっくん!!そんな答え、誰も救われない!」
「少なくとも俺は……」
「りっくんも救われないよバカ!気持ちを、結んだ絆を忘れろとは言わない、でもね、りっくん……辛くても、悲しくても、乗り越えなきゃいけないことってあるんだよ!」
夏宮は泣いていた。
先のことがわかってるみたいに泣いている。
乗り越えなきゃいけない、そんなのわかってた。
友人を傷付けるのは簡単じゃないんだ。その覚悟が必要なのは当たり前だ。
いつの間にか俺は弱くなっている。
全ての恐怖から逃げたいだけ。
「リーダー……一人で背負うなよ。もう俺達がいるじゃないか。その恐怖も痛みも、罪も、一緒に背負ってやるから」
「…………くっそ、本当にお前……イケメンだよな……」
「ちょっとまてよリク!ここは感動するとこだよな!?いきなりどうしたよ!?」
感動はしてた。ちょっと照れくさかっただけなんだ。そんなの言えるかよ。恥ずかしいだろ。
「……あ、あぁそうだ!忘れてた!ヒロト、もう電話来てるんじゃないの?」
「お、おぅ忘れてた!」
「お前ら忘れやすいのかよ……てか電話ってなんだよ……」
ニコッと夏宮が微笑むと俺が持っていた端末を取った。
「おい!それはもう使えないだろ!?」
「にひひ、ある人から連絡が来るようになってるのさ!」
そう言うとブブッと端末が振動した。
そこに表示されているのはカオリの文字。
まさか、そんな……平和に暮らしているはずのカオリがいるはずがない。
「カオリ……!?」
「違う、カオリじゃないんだ。……夏宮、俺が出る」
「あ、うん!」
しばらくヒロトが電話していると、その最中にチラチラと俺を見ている。
するとヒロトはその端末を俺に渡した。一体誰が出るのかと思いながら端末を耳に当てると忘れられないその声が聞こえた。
『晶君から逃げられたんだね。それを聞いて私もやっと一安心って感じだよ』
「お前っ……なんっ」
『何でって?その質問はおかしいよリク君』
「だってお前は……!」
もういないはずだと言おうと思った。
でもそんな俺の言葉は遮られ、そいつは当たり前のように答える。
『前にも言ったでしょ?
私は、正真正銘の化け物だって』




