【取り戻しゲーム】一話目。
「ッ……こん、な、ありえないッ!」
最初は腕、次に足、そして全体、無数の手に掴まれる。あのゲーム表示の数秒後、画面から出てきた手に掴まれて、画面に吸い込まれていく。
すでに画面の中に沈んでしまったクラスメイトも数人いる。ちょっとずつ、悲鳴や助けを呼ぶ声は消えていった。
「ごめんね、香織ちゃん」
トンっと優しく背中を押される。その瞬間、私も画面の中へと吸い込まれた。
画面に入らないようにと必死になっていたせいか、誰が私を押したのかわからなかった。
「ここは……」
「西田!……よかった、じゃねぇか。お前もパソコンの中に来ちまったんだもんな」
「広瀬……ここに、もう全員いるの?」
「多分な。それよりお前……なんだかここに来てからおかしくないか?」
「……どこが?」
ステージはビル……かな。エレベーターは使えないだろう。今何階にいるのか、それを把握しなければならない。
階段で移動となると体力勝負だ。
制服は白のポロシャツに白のベスト、膝にかかるくらいの灰色スカート、まぁ、動きずらくはない。
「……待って……私、おかしいのかもしれない」
何を考えているんだろう。
ここがどうしてビルなのか、違和感もなかった。
エレベーターだって、動くかもしれないし、動きやすいとか、ずらいとか、何でこんなことを?
「どうしたんだよ、西田……」
「記憶は無くても、身体は覚えてるみたいだね。よかったよ、まだカオリちゃんはカオリちゃんだ」
「成、ちゃん……?」
「私は、もうほとんど役立たずだけど一緒に生き残るよ。私の目的のためにも、カオリちゃんの大切な人達のためにも」
あんなことが起きて冷静な自分も、成ちゃんも、怖いと思った。
「何三人で話してるの……。ここがどこか、これからどうなるのか、何が起こるのか、何一つわかっていないのに!」
「リン、落ち着いて。ここは最初の場所、何も起きない。でもこの場所からでたら殺されるかも……。戦わなきゃ、殺される」
何も起きないなんて、何でわかるんだ。
殺されるなんて、何で、わかるんだよ。
「それに、どこかの部屋に武器が隠されてるはず」
そんな情報、誰から教えてもらった?確信なんてない。
「カオリちゃん、すごいね。やっぱりここに来てよかった。思い出せるよ、きっと。でも、過去なんて辛いだけかもね」
思い出したくないわけじゃない。
でも知ったところでどうするんだ。
失ったクラスメイト達を取り戻して、私はどんな顔をして会えばいいんだ。私だけ助かった、そんなの、おかしいじゃないか。
「……武器、探さなきゃ。広瀬、皆を四人一組にして行動させて」
だんだん心が冷たくなっていくような気がした。
記憶を無くして孤独になって、辛かったあの時みたいになる、そんな感覚だ。
そんな冷たい自分を見せたくなくて、一人で動く。誰もいないビルを一人で歩くのは、普通怖いものだ。でも、そんな恐怖なかった。
「……あった」
ボロボロの壁に刺さった刀。その下には腰に掛けられるよう用意されたベルトと鞘まである。
『カオリ……戻ってきたんだね……』
黒髪ロングの女の子。
セーラー服を着ている。
私と同じ刀を持って、悲しそうに笑っている。見覚えのある女の子だった。
「私を、知っているの?」
『私はアヤ、あなたと楽しい一年間……は送ってないね。卒業は出来なかったから』
「……あなた、死んでるの?」
『あははっ、違うよー。身体がないだけ。固まってるからね』
そういうことか。アヤと名乗った女の子は透けていた。
「……私は、覚えてないけどあなた達を置いて私だけ助かったらしいよね。ごめん……」
『謝るなんて……確かにあなたはカオリだよ。でも、弱い。そんなので私たちを助けられるの?今ここで、私はあなたをこの世界に留めようか?その方が皆仲良くここで死ねる。そうしようか』
アヤは冷たく言った。
そしてその瞳を赤く染めて、刀を構えた。
なるほど、私を試しているのか。
「前の方が強かった?今は弱い?そんな風に思うのは勝手だよ。でも事実はどうだろう?私は本当に、弱いかな」
刀を扱うのは始めてだ。
でも出来る。きっと大丈夫。
『……私は、人間相手なら刀で負けないよ』




