【救いゲーム】二話目。
「お前、死んだはずじゃ……」
「あぁ、俺は死んださ。このゲームではな」
そうヒロトが言うと晶は睨むようにヒロトを見た。また邪魔者が増えたと思ったんだろう。
『どういうことなのかな……?君はもういないはずだろ?』
「俺はさ、このゲームで死んだ。でもこのゲームってプレイヤーがハッピーエンドをむかえれば自動的に死んだ人間も生き返って現実に戻れるってシステムだろ?俺は死んだ。でも、死んでからはゲームとはちょっと違うところにいたんだ。リーダーであるリクと、カオリ、その他の生き残った奴らがいつハッピーエンドをむかえてもいいようにな」
『そうか……。でもよくゲームに戻ってきたね。それはどうやったのかな?』
晶は俺から手を離しヒロトのほうへと歩いてく。ドサリと倒れた俺はもう、指一本も動かせなかった。何も出来ず、拘束されたままヒロトと晶を見ている。
「それはまぁ、いろいろと頑張ったんだよ。カオリが現実に帰って生きている人間の枠が空いただろ?システムにそれを認識される前にそこに俺がなんとか入ったってわけ。まぁ、その手助けはしてもらったけどな」
『ふーん……。その手助けは誰に?』
「あのさぁ、お前質問ばっかりだな。俺の質問にも答えてくんない?」
『……いいよ』
「お前、佐蛍晶だろ?何でここにいる?」
晶の表情が大きく変わった。
まるで世界の終わりを見ているかのように絶望し、驚いている。
俺を拘束する影が急に強くなって、首を締めてきた。
「ッ……ぁぐっ……しょ、うっ……!?」
『君は、俺を知っているのか……?』
「……一年の頃、お前を助けられなくてずっと後悔してたんだ。俺は一度記憶を無くしたけど、お前のこと思い出したんだよ……。まぁ、そんな話をする前にリーダーを離せ、今すぐにだ」
『嫌だね。ヒロト、だっけ?君、仲間がいると弱くなるタイプだろ?』
「ハッ……何を言ってるんだか。俺はもともと弱者だ。強くねぇ。殺せない、でも、守る力は手に入れた、それだけだ。リーダー、もう少し待っててくれ、すぐ助ける」
「わか、ったっ……お前を、信じるっ……」
ヒロトは落ち着いていて、俺はヒロトを頼ることにした。
仲間……それは重りで、でもきっといたほうが安心するものだ。
息は辛いがまだもつはずだ。もう少しだけ、頑張ろう。
「んじゃ、そーいうことで佐蛍、わりぃけどリーダー返してもらうわ」
あの無邪気な笑顔を見せるとヒロトはゆっくりと歩いて俺の方へ来た。晶がヒロトに殴りかかろうとするが……
「殺せるのか?お前のその拳で」
『ッ……!?』
たった一言、ヒロトが晶に言っただけで晶はその拳を下ろした。
悔しそうに、うつむいている。
それと同時に黒い影のようなものは俺を拘束する力を弱めた。
「お疲れ、リーダー。ここまでよく頑張ったな」
「……あり、がとう……」
「リーダッ、リク!?おい、しっかりしろよ!」
もう、頑張れる気がしない。
だんだん力が抜けていく。意識も薄くなってきた。
「ごめ、ん……俺、リーダー失格だわ……」
「リクは最高のリーダーだ!今助ける、だからもう少し、あと少し頑張ってくれよ!」
「おう……頑張る……」
しょせん俺はただの人間だ。
異常で化け物な晶に勝てるわけがない。
だから仕方ない。
……そうやって、何度も諦めてきた昔の俺を今、ぶっ飛ばしたいよ。
仕方ないわけないだろ、どうにかなるって希望を探すこともしないで諦めて、いつか絶対後悔することしかしてない。
俺は今まで何をしていたんだ。
「リク……よかった、って言っていいのかな。こんなに怪我してるのに……」
「夏宮……?何で……」
目が覚めた俺の目の前に現れたのは突然いなくなったおさげの少女、夏宮里佳だった。
「うちは……」
「夏宮が迷子になってるところを俺が助けただけだ」
「ヒロト!お前無事だったのか……!!」
「急に動くなよ、身体は治ってねぇんだから」
「あ、おう……。それよりここは……」
「ここは美術室だ。いや、正確には美術準備室かな」
確かに、周りを見渡すと絵の具や鉛筆、小さなバケツや彫刻等など美術に必要そうなものが置いてある。
右にある棚は俺よりも高くて、その影でずいぶん部屋が暗くなってしまっているようだ。
「……二つ、質問していいか?」
「どうぞ」
「何で夏宮は俺と晶が図書室から出た時にいなかったんだ?」
「うちは自分のするべきことを実行したまでだよ」
「その、するべきことってのは?」
「秘密です」
にこっと笑って人差し指を口に当て、夏宮は言った。
ここまでいろいろあると秘密というのはやめてほしいが疑っているわけでもないのでそれ以上の詮索はやめた。
「もう一つ、お前らはなぜ俺をここに運んだ?」
「……保健室でも良かったんだけどね、ここは安全だから」
「安全?どうして」
「ここの存在って割と知られてないんだわ。生徒は入っちゃいけないから」
「あー、そういえば俺も知らなかった」
「だからだよ。一年もこの学校で過ごしていない佐蛍がここを知っているわけないからな」
「……なぁヒロトの言う佐蛍?ってやつは晶……さっきの黒羽晶のこのか?」
「あぁ、そうだ。アイツ本名は佐蛍晶って言うんだ。生きていた時は、そうだった。自殺したアイツがここにいるってしったとき、驚いたよ」
「自殺?その話本当なのかよ」
「俺が嘘つくと思うか?マジだよ。それもカオリとすっげー関わってる」
その後俺は佐蛍晶であった黒羽晶の話や、どうしていじめを受けたのか、どのように死んだのか、そして晶の記憶がない原因を聞いた。
あまりにもひどいと思った。
何で知らなかったのか、助けられなかったのか、一年の頃の自分を恨んだ。助けてあげられれば、晶が命を落とすことも、リアルキルゲームに入って雪村彩夏と会うことも無かったかもしれないのに。
「りっくん、君が後悔してる過去は変えようもなかったんだよ?だから、そんな悲しそうな顔しないで」
夏宮は俺を小学生のときのように呼んだ。そういえばいつから夏宮と距離ができたんだっけ。それすら、思い出せない。そんな俺だから誰も救えないのかもしれない。
「ありがとう夏宮……」
「はぁ……仲がよろしいことで。ってそんなことより先のことを考えないと」
「なにか作戦でもあるのか?」
「いや、全くと言っていいほどないぞ」
「おいこら」
「怒るなって。やるべき事はわかってんだから」
「……やるべき、事」
「あの黒羽晶をもとの黒羽晶に戻す。雪村彩夏を助ける、クラスメイトの石化を解く、こんな感じか?」
「あとはここからの脱出だ。もちろん全員で」
「だな」
たった三人しかいないけれど、俺達しか出来ない事はわかっていた。だから、クラスメイトを助けるために、晶を助けるために、俺達三人は動き出す。
きっとどうにかなると、信じて。




