二十七話目。
『………………は?』
私より早く驚きの声を出したのは庇われた晶だった。そりゃそうだろう、記憶にもないことを敵だと思っていた女の子から言われたのだから。
それも死ぬ寸前に、だ。
雪村彩夏は心臓を貫かれていた。いくら化け物と言ってもこれでは死んでいるだろう。
白い部屋が真っ赤に染まっていく。
『彩夏……ちゃん?
何で庇ったの?ねぇ、どういうこと!?マズイ、このままじゃこの世界はッ!』
彩夏を見て、焦っているのは灰山もだった。
きっと理由はこの世界が私達を追い出して閉じてしまうからだ。もともとここは、雪村彩夏の死に場所として生まれた世界。それ以上の役目など、何一つないのだ。
私は、敵である彩夏に助けられ、この世界から脱出する。
そんなの、納得できるわけないじゃないか。
私はまだ、灰山を倒していないのに。
白い部屋は大きな音を立てて崩れていく。ガラスが割るかのようにヒビが入っているのだ。
『…………そうだ、ここを私の世界にすればいいんじゃない。簡単なことだ。あははっ……』
「アンタッ何を考えているの!?
いい加減にしてよ!ここは雪村彩夏の死に場所、アンタの世界じゃない!」
『だーかーら、その役目を終わりにして、ここを私の世界にするんだってば!わかってないなぁ』
「そんなの、酷すぎるっ……!」
自分の罪の重さを知り、許されないと思ってここに閉じこもったあの子の気持ちはなんなの?こんな終わり方、嫌に決まってる!
止めなきゃ、私が、倒さなきゃ、誰も止められない!
「ぁ、ぅ……?」
一歩踏み出したけれど身体が動かない。それどころか脱力して、倒れてしまった。
何で?何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で!?
また、届かない。いつももう少しなのに!
『ドッペルゲンガー、か。可哀想だねカオリちゃん、自分の能力のせいで私を倒せないなんてっ!あはははははッ!』
「あ、ぁぁぁぁぁあぁぁああぁぁぁあ!!」
悔しかった。
無力な自分を殺したくなった。
涙が溢れる。本当に、死にたくなった。
ただ叫ぶことしか出来ない今の自分を、いっその事殺して欲しい。
『サヨウナラだよ、カオリちゃんっ!』
私を殺そうとあの黒いイナズマのようなものを出した灰山は、とても満足そうな顔をした。
やっと殺せる、そんな顔だ。
その時にはもう、部屋の崩壊は止まっていた。
もうこの世界は灰山成のものなのだろう。
『……に、げろ……カオリっ……』
倒れた私の足を掴み、弱々しい声でそう言ったのは彩夏だった。
床を見れば血のあとが私ほうへと進んでいる。彼女は私の元へ、あの身体で来たのだ。ずるずると痛む身体を引きずって。
白いワンピースはもう赤黒い血で染まっている。
『お前はっ、私の希望なんだ……お前、だけでもっ……!』
「ッ!?」
『まだ生きてたの、彩夏ちゃん?』
にっこりと微笑むと灰山は彩夏を何度も刺した。
じわりじわりと彩夏の血が滲む。
その度に彩夏は苦しそうな声をあげる。
『うぐぁッ!!ぁ、はッ……』
お前だけでも現実に帰ってくれ、私にはそう聞こえた。
彩夏は、私を希望といった。こんな私を。
今目の前で殺されかけている彼女を助けられないのに。
『はぁッ、ぅぐ……さよなら、だ。カオリ……』
「へ……?」
初めて見た彩夏の笑顔はとても綺麗で、それに見とれた私はその言葉の意味がわからなかった。
『まさかッ!やめっ……』
『はぁぁぁぁあぁぁああぁッ!!!』
目の前が真っ暗になり私は宙に浮く感覚になった。
周りの空気は生温くて、なんだか心地が良い。
私は身体の痛みを忘れて眠ってしまった。
その夢の中で、私は──────。
【ラスト分岐】
夢の中でみたものとは……?
1.仲間のこと→True Endへ
2.雪村彩夏のこと→Happy Endへ
3.灰山成のこと→Bad Endへ




