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二十三話目。

 少女がゲームの中に閉じこもってから何年か過ぎた頃、その学校を見つけた。


 天鈴第一中学校てんりんだいいちちゅうがっこう。どこの学校とも何一つ変わらない。


 ただ、いじめがひどかった。



「……次のプレイヤーはこいつらだ」


 ほんの少しのあいだ少女はその中学校を観察した。


 そしてある女子生徒の扱いがクラスの中で酷いことと、その女子生徒を庇っているようにしている男子生徒の存在を知る。

 その関係に少女は興味を持った。



 だがゲームが開始される約一ヶ月前、その男子生徒が自殺をしようとしていた。

 女子生徒を庇っていたせいで男子生徒はいじめられるようになったのだ。誰も助けてくれない、見て見ぬふりをされる、そんな日常に疲れたのか目に光がない。


 少女は気まぐれでその男子生徒をゲームの中に引き入れた。



「……あ、れ…………俺、死んだんじゃ……」



 目覚めた少年はまず目に入った少女に驚いた。

 少女の白髪と整った顔を綺麗だと思ったんだろう。



「死ぬ、はずだったんだ。私が助けた」

「……ここは、どこなの?俺は、死んでないの?」

「ここは私の死に場所だ。私は私を殺せる人を探している。天国でも地獄でもない」

「…………君は死にたいの?」


 少年は本当に不思議そうな目で少女に尋ねた。

 自分以外は欠けてはいけない存在だと思っていたからだ。

 他人でさえも、そう思っていた。

 止まらないいじめのせいで自己暗示がかかってしまっているんだろう。



「私は許されないことをしたというのに、存在しているからだ」

「……君は、悲しい存在なんだね」

「お前は何で死のうとしたんだ?

 もったいないことをするな」

「俺は……皆の記憶に残る前にいなくなったほうがいいと思って…………」

「そんなの言い訳だ。お前は辛い現実から逃げ出しただけだろ」

「ちがッ……」

「何が違う?お前は私と似ている、いや同じだ。

 ただ、目をそらして逃げ出して、結局失ってから後悔するんだ」



 少女は悲しそうに言い放った。

 昔を思い出しているんだろう。

 それを聞いて少年は悔しそうにしている。

 図星だということに気が付いたのだ。


「……お前、名前は?」

「…………佐蛍昌。君は?」

「私は……雪村、彩夏だ」

「名前どおり、白いね」

「……そうだな。お前は、黒い。私たちは同じはずなのに、正反対な部分もあるようだ」


 白と黒。正反対な少年と少女は少女の死に場所で出会った。

 時間のないその場所で、ゆっくりと過ごす。

 そうして過ごしているうちに少年は少女を救いたいと思うようになる。


「……ねぇ彩夏、君は殺されたいのにどうして殺すの?」

「殺したくなかったさ、昔はな。だけど私は殺す能力を持っている。もうなれたんだ」

「なれないでよ。死なないでほしい、殺さないでほしい、それが俺の望みだ」

「なぜ?私はお前に助けられるような存在ではない」

「君は俺の命の恩人だからだよ」



 少年は元の世界に戻ることなく、人間であることもやめ、黒羽昌となって生きると決めた。

 ずっと少女のそばにいるために。

 少女が誰かに殺されないように。


 いつか少女が自分の罪から解放されるよう願って、少年は笑う。少女の隣で。


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