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リアルキルゲーム 〜白の呪い〜  作者: 沙乃
【中学三年】第二ステージ
18/67

十七話目。

 ~リクside~



 ナイフとスナイパーライフルがぶつかり合う。

 普通ナイフとナイフで戦うだろというツッコミもしている暇がない。

 遠慮のない攻撃が何度も何度も俺の心臓を狙って放たれる。

 反撃する暇も与えられず、ただただ狭い空間で避けるだけ。


 じわりと汗が滲む。


 カオリの右肩も、まだ血が止まっていないのに痛みを感じないのか利き手である右手を使って攻撃をしていた。


 だからだろうか、カオリが、まるであの化け物たちと同じように、それ以上に強く感じる。



「何だよお前ッ……、カオリより強ぇじゃねーか!」

「何言ってるの?ワタシはカオリ。失礼にもほどがあるってば」



 そう言いながらカオリはナイフを振るう。


 こっちは息が切れてるっていうのに……!


 後ろに下がりながら攻撃を避ける。

 廊下まで出ると目の前には理科室。

 真っ黒なカーテンの掛かった理科室のドアまで追い込まれた。



「終わりだよ、リク」

「……あのさぁカオリ、お前、何に怯えてるんだよ。ずっと聞こえてるんだ、お前の泣いてる声」


「……ホント、何なの?何を言ってるの?

 誰が泣いてるって言うのさッ!!」


「お前じゃねーよ!!なぁ聞こえてるだろカオリ!」



(やめて……)



 俺には聞こえていた。

 ずっと泣いているカオリの声が。


 何でかはわからない、けど、助けたい。

 カオリの身体はドッペルゲンガーに乗っ取られてる。でも中身までは乗っ取られていない。

 なら助けるしかない。それしか選択肢はないんだ。



「お願いだカオリッ……戻ってきてくれ!」


「しつこいよリク!!

 私はワタシが守る、アンタには守れない!」

「カオリ……!」


(嫌だ、嫌なんだよっ……。

 あんな辛い想いするくらいなら、いっそ……)



 それ以上は言うな、そう叫びたかった。

 でもそれを言う前にドサリとカオリが倒れた。




「は……?」

『いやー、危なかったね、リク』



 また、アイツは現れた。

 アイツは、なぜか傷を負っていた。

 痛々しいほどの傷をいくつも。



「昌……。危なかったってどういうことだよ」

『俺が来なかったらリクは死んでたかもね』


「そんな傷で助けられても……。

 その傷の理由は聞かねぇけど、今来るんだったらなんでさっき帰ったんだよ」



『……まぁ、いろいろあるからね。俺にも』




 苦笑い……、完全に何かを隠している。

 カオリは先ほどとは違い、ただ眠っているだけだ。

 もうドッペルゲンガーはいないのだろうか……。



「そのいろいろを知りたいんだ」

『それは教えられないなー』

「あっそ。……てか、手当てしなくて大丈夫なのかよ」



『……人間扱い(・ ・ ・ ・)出来るほど(・ ・ ・ ・ ・)俺は(・ ・)可愛い(・ ・ ・)もん(・ ・)じゃない(・ ・ ・)からね』




 彩夏と、同じ事を言った。

 その程度では死なないということか。

 まぁ、そうだろうな。



 文字通りコイツらはもう、人間扱い出来るものではない。



「んじゃそろそろ聞くか……。

 お前の(・ ・ ・)目的は(・ ・ ・)なんだ?(・ ・ ・ ・)


『うわー、直球だ。

 ……まぁ仕方ないよね。オッケー教えるよ』

「お前の愛想笑いもそろそろムカついてくるぞ。

 ヘタクソかよ……」


『それは言わないでよ、傷付くなぁ』



 そもそもコイツはなんで愛想笑いなんかするんだ。

 そんな必要ないのに。


 昌の話を聞こうと昌のほうを見るとちょうどいいタイミングで端末が鳴った。

 俺の端末ではない。


 端末の音はカオリのスカートのポケットから聞こえた。

 倒れたカオリを壁に寄り掛からせ、スカートから端末をとる。


 ミカからだ。


「もしもし」

『もしもし……ってリク!?カオリは!?』

「慌てるなよ。大丈夫だ、気絶してるだけだから」

『きっ、気絶?何で……また無茶でもしたの?』



 ミカはカオリのことを心配しすぎだ。

 確かに無茶はするし、自己犠牲野郎だし、ほっとけないのもわかるが、ここまでくるとさすがに異常なんじゃないかと思う。

 だがミカとカオリは幼なじみだし、心配するのもあたりまえか……。幼なじみに死なれちゃ、さすがに立ち直れねぇしな。



「無茶はしてない。いろいろあったんだ。まぁこっちは大丈夫だからあんま気にすんな」

『そう、ならいいんだけど……。

 また掛けるね』

「おう」



 安否確認が終わるとすぐに電話を切った。

 詳しい状況を伝えてミカを不安にさせたくなかったし、昌との話をまだ途中だったからだ。


「さ、お前の目的を教えてもらおうか」



『…………俺の目的は、そうだなー、簡単に言うとここから出ることさ』

「俺たちと同じ目的なのか……」



『そう、もともと俺はここの人じゃないからね。いくら主催者だと言っても雪村のようなものとは違う。でも俺は主催者だからプレイヤーである君たちがこのゲームをクリアしてくれなきゃ出れないんだ。……と、いうことで、わかるよね?』



 だから俺たちにゲームをクリアさせて自分の目的を達成しようとしてるのか。

 利用されてるだけってのが腹立つけどコイツにもコイツの理由があるんだろう。



「なるほどな。……で、その計画がバレたと」

『勘が鋭いねぇ。そうなんだよ。バレたというより怪しまれてる。主催者からプレイヤーへの妨害なら許されるんだけど逆はさすがにね……』


「それって俺の…………」



 足を治したせい……だよな。

 何事も無さそうに笑う昌にも、沢山の事情があるだろう。

 けれどそれを俺は知らない。

 結局は、利用するものとされるもの、どうしようもない心の距離。




「なんか、ごめんな……」


『えっ、なんで謝ってるの……。

 でも謝罪の気持ちがあるなら一つだけ俺の願いを聞いてくれないかな』

「俺に出来ることなら、な」




 もちろんリクに出来ることだよ、と昌は愛想笑いではない、本物の笑みを見せた。

 すぅ、と息を吸って言葉を出す。



 



















『俺を、仲間に入れてほしいんだ』

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