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リアルキルゲーム 〜白の呪い〜  作者: 沙乃
【中学三年】第二ステージ
12/67

十一話目。

「…………っ…………」


 目が覚めるとそこは、教室だった。

 幻か、夢を見ているんだと思ってしまうくらい教室はいつも通りの雰囲気。

 でもその少しの夢を現実に戻したのは、窓の外と、部屋の暗さだった。


「……やっと目が覚めた…………。アンタなにやってんの?結局DBに助けられてるじゃん!これからは単独行動禁止!!」


 ミカに叱られ反省の二文字を態度で表す。


「あ、そうだミカ。ワタルとレイナは……?」

「……ワタルはもう目が覚めて何があったかを二回目メンバーに説明してる。カオリが言うレイナって子は…………」


 ミカの指差した方向を見ると先生が普段座っている椅子にレイナが座っていた。

 ただ、普通に座っているわけではなく、手を後ろに縛られている。


「何してるの……なんで縛る必要があるの!?」

「だってあの子は七不思議。いつかは倒さなきゃいけない相手。自分から来てくれたんだから、逃がすわけにはいかない……っていうのが皆の考え」

「……じゃあミカの考えは何なの」

「あの子に害はないと思った。だってカオリとワタル、どっちも背負ってここまで来たんだもん。だからあそこまでする必要はないと思う」


 じゃあ何で止めてくれなかったんだと言いたくなった。けれどこのクラスのことだ、きっと多数決で決めたんだろう。


 レイナは嫌な顔もせずただ黙って皆の様子を見ている。

 私と目が合うとニコッと優しく微笑んだ。


 そういえば、とDBのことを思い出す。

 DBは、レイナと知り合いのように話していた。

 一回目の時にレイナのような敵はいなかった気がする。だとするとDBは一体何者なんだろう……。

 よく考えてみれば入学してから誰も本名を知らないというのもおかしいし、一回目の時からDBは冷静で、圧倒的な強さだった。

 いや、これは怪しいと思ったから出てくるおかしな所かもしれない。


 けれどやっぱりレイナと話していたのはどんな理由があったとしてもおかしいんだ。


「ねぇミカ、DBの本名って知ってる?」

「いきなり何を言い出すかと思ったら……。DBは誰も本名を知らないのが当たり前になってるじゃない」

「……だよね。じゃあいつからうちの学校に来たかは、知ってるよね?」


「…………入学した時、からじゃないの?」

「私、入学した時にDBがいた記憶がない。写真にも写ってなかった気がするの」


 今は確かめようがないが私の記憶は正しいはずだ。

 小学校の入学式はさすがに覚えていないが、中学校の入学式くらいなら昨日のことのように覚えている。卒業が近いから入学式の写真を見ていた、というのもあるが。


「じゃあ転校生……?」

「だったらその事を忘れるわけないよ」


「…………実は俺も、おかしいと思ってたんだ」


 後ろから意外な人物から声をかけられ二人そろって驚いた。


「リク……、もう大丈夫なの?てか、ワタルと話してたんじゃないの?」

「俺は動けないからずっと床に転がってたんだよ。それより、DBのことだろ?お前ら気付くの遅すぎ……」

「…………じゃあリクはDBのこと、大体予想ついてるの?」

「んなわけねぇだろ……。本人に直接聞くわけにもいかないし」

「だよねー……」


 じゃあどうすればDBのことがわかるんだ?

 現実なら情報収集も出来るかもしれないが今はゲーム内だ。可能と言えることが少なすぎる。

 端末も学校には持ってきていなかったし、鞄も、急な呼び出しのせいで手元には無い。

 ぐっと唇を噛むもののアイディアが浮かぶようなこともなかった。


「せめて手掛かりがあれば……」

「そうだ、うん……一つだけなら、わかってることならある」


 手掛かり、と言う言葉を何度も頭の中で再生とリピートを繰り返していると見落としていたものがあることに気が付いた。


「わかってることって?」

「…………DBはなぜか、レイナと知り合いだった。ということ。本当かどうかはちょっと怪しいけど、手掛かりとしては十分なんじゃないかな?」

「本当だったらいろいろ芋づる式で出てくるかもな」

「じゃあ私連れてくるよ」

「おう、頼む」


 ミカがレイナを連れてくるなら誰も心配はしないだろう。学級委員となれば信用もすごいだろうし。


「……あのさリク」

「なんだよ」

「足、大丈夫……?」

「……さぁどうだろうな。血は止まってるし、大丈夫なんじゃないか?」

「軽いよ!痛みとかないわけ!?」

「そりゃあるに決まってるだろ。無かったら俺人間じゃないしな」


 そのわりにはずいぶん元気なように見えるんですけど……!

 …………でもまぁ、リクのことだから皆の前では痛がったり出来ないのかもしれないな。

 それがわかってて何で私は「大丈夫?」なんて聞いたんだろう。馬鹿だ。


「じゃあ俺もお前に聞いていいか」

「何?」

「……お前は何で、自分の身を犠牲にしてクラスメイトを助けるんだ?酷いときは死のうとしてないか?俺の勘違いならいいんだけど」


「……人が目の前で死ぬなんて嫌じゃん。別に自分の身を犠牲にしてるわけじゃない。助けようと思って前に出たら死にそうになってるだけ」


 いつもそう、死にたいわけじゃないのに。

 助けたいんだ、助けようと思ってるんだ。けれどいつも届かない。あと一歩踏み出せば届きそうなのに届かない。それが嫌なんだ。そう考えてたら身体が前に出てる。もう敵は私を殺しに掛かれるくらいの所まで前に出ていて、何回も怖い思いをした。

 もう人が死ぬのも、私が死にそうなのも、こりごりだよ……!

 そう、叫びたいのに、私は強くなければいけない。だから、DBのように人を背負えるような強さが欲しい。リクのように痛みを出さない強さが欲しい。

 ミカのように、いつも冷静でいられる強さが欲しい。欲張りでかまわない。私は弱い。嘘の強さで自分を塗り固めているんだから。


「危なっかしいお前を、今の俺は助けてあげられない。だから約束してくれ、俺の前で死ぬな」


 リクの顔を見ながら私はゆっくりと頷いた。

 ……つまりは、リクが見ていないところなら死ぬことが許されるんでしょ。もちろん私は仲間が見ている所で死のうとは思わない。だってカッコ悪い、弱い、そんな私を誰かに見せられないよ。


「連れてきたよ」

「あの、私が何か役に立つんでしょうか?」

「質問に答えてくれるだけでいいよ」


 申し訳なさそうな態度を見せながらも、レイナは協力する気満々なようだ。

 教室の隅で四人まとまってひそひそと話を始めた。


「レイナってDBと知り合いなの?」

「DB……?」

「ほら、今命の無いブザーと戦ってる人だよ」

「あぁ、はい、知り合いですよ。でもなぜあなた達といたんですか?私はそれがわからないんです」


 ……DBは私達のクラスメイトなんだから一緒にいるのは当たり前じゃないか。

 プレイヤーとして登録してあるから武器も持っていたんじゃないの?

 なのにレイナが知らないなんてやっぱりおかしい。


「……レイナ、DBって何者なんだ?」

「え?あなた達は、知らないで一緒にいたんですか!?」

「アイツのことは何もわからないんだ。……いつの間にか、アイツは俺達のクラスメイトになっていた。どういうことなんだ?」


「……何も、知らなかったんですね」


 レイナは一度悲しそうな顔をすると黙ってしまった。

 知らないのがおかしいなら、何でDBは私達に正体を教えてくれないんだよ。


「お願いレイナ。知ってることがあるなら教えて」

「でも、あの人が自分の正体を明かしてないなら私が勝手な判断で言っちゃダメなんです!」

「でもこのままじゃ私達は……」


「私達は、なんだ……?」


 ガラッと後ろで音がすると共に辛そうな声が聞こえた。振り返ると頭から血を流したDBがいた。片目を瞑って痛みを堪えているように見える。


「信用出来ないって?悪かったな、途中から紛れ込んだ偽者(ニセモノ)で……」


「違うよ、そんなんじゃないよ!!」

「じゃあ何だよ……」


 DBは、私達を仲間としてちゃんと助けようとしていた、いや、助けていた。

 今教室にいる吹奏楽部の人はDBに救われたんだ。

 だから信用出来ないんじゃない。


「……ちゃんとDBのことを知りたいと思っただけ。仲間でしょ?」

「俺達はお前のこと信用してる」


「……そうか、わかった。教えてやるよ。レイナ、黙っててくれてありがとな」


 静かに私達の近くに来ると覚悟を決めたかのような顔をしてDBは口を開いた。




「……俺は…………」

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