【零話】君のいなくなった世界。
「ねぇねぇまただってー」
「え?」
「ほら、うちの学校でもあったじゃん。一クラス集団行方不明事件……」
「あー、あったねぇ。でもうちの学校は帰ってきたじゃん」
「そうなんだよねー。あの事件に巻き込まれた子どもたちは帰ってこないはずなのにさ」
「まるで──」
“ハーメルンの笛吹みたいだね”そんな会話が聞こえた。
行方不明になっていた私のクラスメイトのほとんどはなにも覚えてないけれど、私は覚えている。あのゲームの事を。一度は死んだクラスメイトたちのことを。
でも、本当にいなくなった彼は、あのゲームは関係ない。皆の記憶から完全に消えた彼は、今の私を見たらなんて言うんだろう。
笑うのだろうか、悲しむのだろうか、バカにするのだろうか、いや、彼に限ってそんなことは無い。
なら、彼はなんというのだろう。
「会いたいなぁ……」
会えないなぁ。でも、怒るのかな。アレを止められなかった私を、責めるのかな。私は、なんて言って謝ればいいのかな。
「香織ー!空なんか見て何してんの?」
「何でもない。行こっか。次の移動教室どこだっけ?」
ねぇ、君の言ってた通り、私は明るくなったよ。友達も出来たよ。君は今、何をしているのかな……。
この時は思いもしなかった。私たちは再び、あのゲームに巻き込まれるのだと。そして、君と───。