目の前に変な奴が現れた。
図書館の中で長時間本を読んでいると、時間を忘れてしまう。いつの間にか予定の時間が過ぎ去っていたり、長い時間を過ごしていると思っていたのに少しの時間しか過ぎていなかったり。
私はそんな感覚が好きで、今も図書館に篭もって一人で本を読んでいる。
というのは建前で、本当は初回の戦闘で最弱モンスターのゴブリンに負けたから、ゲームをやるといった以上はやっとかないとかっこ悪い感じがするから、その場の乗りと勢いで引きこもってみたわけだが、もうすぐ、図書館の本が読み終わってしまう。
とても残念なことに、そろそろフィールドに出て戦わなければいけない気がする。
そんなゲームの中での現実に目を背けつつ、ただひたすらに本を読む。
本に集中していると周囲への警戒が無くなって、読むことだけに気を配るようになる。私のあまりよろしくない所なのだが、こればっかりはどうしようもない。
気がつくと、目の前に変な奴が居た。
目の前に座っているくせに、こちらを気持ち悪そうにチラチラと見てくる。
気持ち悪いのならどっかほかの場所に座れよと思うのだが、目の前の奴はずっとこちらを見ている。読書の邪魔だ。集中できない。早く消えてほしいと思いながら、本を読み続ける。
30分ほど経っても相変わらずその変な奴が目の前に居るので、シカトする。
45分後。一通り本を読み終わり、目の前の奴が居る限り集中できないので本を閉じて一度手元に置く。
「何か用か?」
考えてみれば久しぶりの会話となるのだろうか。ガフと分かれて以来、NPC以外とは誰とも話していないはずだ。
そんなことを考えていると、目の前の変な奴(=いかにも防御力の高そうな鎧を身にまとって高そうなハルバートを手にしたドラゴニウスの男)が口を開いた。
「頼みがある」
知らんがな。お前のことなんて。
「俺は無い」
「私はシルバーアロウというパーティのリーダーをしているハシゲタだ。一応攻略組みのトップ集団でな、最前線にいるんだ」
それがどうした。こっちくんなハゲ。
「攻略途中で見つけた扉には古代文字で書かれた文章があったんだが、翻訳スキルを持つ人が居ないのでその扉の先に誰も進めない。誰か一度でも開けてくれれば誰でも進めるようになるらしいんだが」
何でその文章を持ってこないんだよハゲ。
「それでだな、私と一緒にその扉まで行って「行かない」くれない・・・どうしてだ?」
「俺は今ここの図書館の本を読むのに忙しい。他の読み物に浮気してられる時間は無いの」
「どうしても駄目か?」
「・・・・・・」
「次の街に進めたらまた新しい図書館があったりして」
「・・・・・・・・・」
誘惑には負けないぞ!
「手伝ってくれたらこれから手に入れる本とか全部融通してもいいのになあ」
「・・・・・・・・・・・・わかった」
誘惑に負けた。本には勝てない。
「よっし。じゃあ明日、パーティーメンバー全員連れてくるからな」
「その前に一つ」
「何だ?」
「その扉のある場所へは、Lv.1でも行けるものなのか?」
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ステータス:
<Name:ラビック>
種族:アンコ―
Sex:male
Age:17
Lv.1(010/500)
Coin: 2575マネ
HP:150
MP:140
STR:15(20)
VIT:10(15)
INT:28(28)
DEX:8(8)
AGI:15(20)
LUC:15(20)
※()は水中内。
称号:<唯一のアンコ―>、<絶滅危惧種>、<最弱に負けた最弱>、<本好き魚>
祝福:<アンコ―神の守護>
スキル:<翻訳Lv.15>*、<筆記Lv.11>、<速読Lv.13>、<記憶Lv.18>*、<MP吸収Lv.9>、<MP回復Lv.9>、<全属性魔法Lv.10>、<料理Lv.8>、<調薬・調合Lv.7>、<格闘術Lv.8>、<鑑定Lv.6>、<>、<>、<>、<>
装備:初心のベスト、初心のハーフパンツ、初心の靴
所持品:初心のペン、初心の杖、錆びかけて折れたナイフ、藁半紙 30枚、皮紐 9本、本:4冊(剥ぎ取りの極意、かんたんレシピ・お金が無くて大変な時用、創世の書(笑))
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補足:
スキルの*印はスキルアップが可能。Lv.15でスキルアップ可能になる。
翻訳、筆記、速読、記憶、鑑定スキルが全てLv.15以上になると・・・