大図書館のお爺さん
―図書館―
広大な空間を狭く見せる大きな書棚が整然と並んでいる。古書の香りと新書の香りが混じった何とも言えない独特な臭いが漂う。
適当に一冊引き抜いてパラパラとめくってみると、意味の分からない記号が並んでいる。翻訳のレベルが足りないらしい。
童話や児童書など、比較的読みやすい本を探して翻訳しながら読んでいく。
翻訳スキルだけでなく、速読スキルや記憶スキルのレベルが恐ろしいほどに早く上がっていく。それと共にだんだんと本を読むペースが上がっていく。最終的に200ページの本を5分ぐらいで読めるようになるまで熱中してしまった。
「かみさま せかいを つくる」、「へいわ な せかい」、「あらわれた まぞく」、「まおう との せんそう」、「あらわれた ゆうしゃ」、「ゆうしゃ の かこく な たび」、「まおう たい ゆうしゃ」、「へいわ な せかい2」、「あらわれた まもの」、「ぼうけんしゃ の じだい」、「よげんしゃ えりす の よげん」、「よげんしゃ えりす の わるい よげん」、…
などの童話は大変興味深く読んでいて面白いものだった。
こういった童話などでこのゲーム世界の世界観を知ることは出来たが、それもさわりだけだ。とりあえずこの図書館の本全てを読めるようになるまで読み進めよう。
と思っていたら肩を叩かれた。
「もし、そこの若いの」
白髪、白髭の知らないじいさんだった。
「まあ、怪しいもんじゃない。ただ人より多く歳重ねただけの爺だ。そう警戒するな」
いやいや、いきなり気配もせずに後ろから肩叩かれたら誰でも警戒するから。
「お前さん、本が好きか」
何を当たり前のことを聞くのだろうかこのクソ爺は。
「好きだが」
「やっぱりそうか。儂は一応この図書館の管理人をしておるでの、入ってきたと思ったらいきなり読み始めて10冊20冊と読んでいきおって。別にいいんだがの」
だったらいいじゃないか。何か話しかけた理由があるんだったら早く話せ。読む時間がもったいないじゃないか。
「そう急くな。急がば回れと言うじゃろうに。もう少し落ち着け。今から良いことを教えてやるでの」
話し方がとろい。というかこれはイベントなのだろうか。訳が分からない。
「お前さん、<筆記>スキルを持っておるじゃろう」
何で知ってんだよこの爺さん。ストーカーかこいつ。爺のストーカーとかマジ勘弁してほしいんだが。
「そのスキルを持っておるとの、本を書けるんじゃよ」
そりゃ書くためのスキルだからな。それくらい当たり前だろ。
「でだな、魔力を込めながら筆記することで魔道書が作れるんじゃ。この魔道書が面白くての、所有しているだけで魔法の1/4威力が上がり、手に持っていると1/2ほど上がるんじゃよ」
はあ、それで?
「儂が若いころはこれを作って小遣い稼ぎをしたものよ。どうじゃ、お主もやってみんか。最近はどうも疲れるのが速くての、それほど魔道書を書けんのじゃよ。そうすると、ほら、儂の知り合いの書店の若いのが困るでの、代わりにやってくれんじゃろうか」
えーと、つまり。儂の代わりに魔道書書いて本屋に卸せと。
「じいさん、俺は本を読むのが好きなんであって書きたくはないんだが」
というか、読むのが好きであっても「これくらい俺でも書けるんじゃね」と勘違いして失敗する様しか思い浮かばないんだが。
「大丈夫じゃよ。魔道書書くには文才なんていらん。意味不明な文字の羅列に意味を持たせて、書いた本人が理解していればそれでいいんじゃ。それを読み解ければ偉大な魔法使いに、読み解けなければただの補助役どまりの下っ端魔法使いじゃ」
今なんかさらっとすごいこと言われた気がしたんだが、気のせいだよな。
「だがな爺さん。俺はまだ魔力の使い方も魔法の使い方も知らないんだ。これからここにある専門書を全て読み解こうとしているときに爺さんから横槍が入ったんだ」
「そりゃあすまんの。本を読んで自分で調べ、知ろうとする事は最近の若者には無いところじゃの。やれ冒険だだの言って魔物を殺すだけの人間とは大違いじゃ。それは悪い事じゃないがの、それだけじゃだめなのじゃ」
「じゃ、今から専門書読むから邪魔すんじゃねーぞ、爺さん。読んだ後でやる気があれば魔道書書いてやるからよ」
「ほっほっほ、よいよい。お前さんが学び終えるまで待つとするかの。儂はここの管理人じゃから、何か分からないことがあれば遠慮なく聞きにくりゃええ」
「おうよ」
となんだかんだで爺と仲良くなりつつ、俺は本の世界に没頭するのであった。
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ラビックの今日読んだ本:
童話:21冊
昔話:15冊
児童書:33冊
他:
やさしい魔法入門、やさしい魔法応用編、初級魔法入門、初級魔法応用編、中級魔法入門、中級魔法応用編、上級魔法入門、上級魔法応用編、属性魔法の調べ方、属性魔法って何?、誰でもでキル肉解体、誰でもでキル魚の卸し方、簡単レシピ集、中級レシピ集、高級レシピ集、簡単な薬の作り方、治療薬の作り方、簡単エリクサー、妖しい薬の作り方、上級秘薬の作り方、誰でもでキル格闘術、そーらーを自由にとーびたーいなー、ぼくのかんがえたさいきょうまほう
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
記憶スキルにより新しいスキルを覚えました。
<全属性魔法Lv.5>をおぼえた
<料理Lv.5>をおぼえた
<調薬・調合Lv.5>をおぼえた
<格闘術Lv.3>をおぼえた
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ステータス:
<Name:ラビック>
種族:アンコ―
Sex:male
Age:17
Lv.1(010/500)
Coin: 2000マネ
HP:150
MP:98
STR:15(20)
VIT:10(15)
INT:25(25)
DEX:8(8)
AGI:15(20)
LUC:15(20)
※()は水中内。
称号:<唯一のアンコ―>、<絶滅危惧種>、<最弱に負けた最弱>、<本好き魚>
祝福:<アンコ―神の守護>
スキル:<翻訳Lv.8>、<筆記Lv.1>、<速読Lv.7>、<記憶Lv.9>、<MP吸収Lv.3>、<MP回復Lv.2>、<全属性魔法Lv.5>、<料理Lv.5>、<調薬・調合Lv.5>、<格闘術Lv.3>、<>、<>、<>、<>、<>
装備:初心のベスト、初心のハーフパンツ、初心の靴、初心のペン、初心の杖、錆びかけて折れたナイフ