ラビットラビッククッビラトッビラ
肉をさばきます。苦手な方は素通りで。
海に向かいます。
「魂のルフ○ン」が「私に還りなさい」と告げている。
突然の中二発言の発現どうもすみません。ラビックです。今、ノンアクティブモンスターの牛っぽい奴の背中に乗ってゆっくりと進んでおります。
モンスターの解析はしません。面倒臭いから。ほら、きっと、世界には知らない方が良いことがいっぱいあるんだよ。これもその一つ。今決めた。
王都の門を出てから少し経ち、気付いた。歩くのがつらい。しかもたまに湧いてくるアクティブモンスターから逃げなきゃいけない。疲れる。
一応、空を飛ぶ方法を本を読んで知ってるんだけれども、内容としては「空を飛ぶ、○つの方法。」とかいう知らないゲームの内容的なものらしくて、時間の旅をわざわざしないと飛べない。つまり、役に立たない。時間遡行の方法とか知らないし。
いい加減アホなことを考えて気を紛らわせようとしているけど、歩くのがしんどい。
ステータスは新刊の本を読んだ後に何故か上昇した訳だけど、やはり本人の特性というか、運動が苦手というのはどうしようもないことなのかもしれない。
だけども、「しんどいな~」と思いながらも止まらずに歩き続けていられるのはやはりステータスの恩恵なんだろう。ゲーム様様だ。
ふと、迷案が浮かんだ。歩きたくないんだったら、自分で歩かなければいいじゃない。
ちょうど目の前に、呑気に歩いてる牛っぽい何かがいるじゃない。
乗ろう。きっと、「これに乗れ」と運営がポップさせてくれたに違いない。
ガンっ
「はへっ?」
ボスッ
ドガッ
バキッ
ドスッ
-ラビックは死亡しました-
くそっ、ゴブリンめ。いきなり背後から殴りかかりやがって、HPが増えた分長めにタコ殴りにされたじゃないか。ゴブリンの呪いでもかかっているんだろか。死亡時のゴブリン率が異様に高い。
挫けちゃだめだ。頑張れ自分。やればできる子。
リスポーンした王都中央の神殿から出て、再びの草原へと門を出ていく。未だにレベルは上がらず、死亡回数だけが増えていく。
牛に乗れば、牛に乗れさえすればきっと大丈夫なはず。遠くにいる牛に向けて走り出す。
-ラビックは死亡しました-
初めての、牛による死亡でした。初体験です。
牛に乗ろうとして尻尾を掴んだら後ろ足で蹴られて、地面に這いつくばっているところを振り向いた牛の頭にあった角がグサリ、グサリ、グサリ。連続突きによりHPを削られて再びの死亡のちリスポーン。
あいつ、オスだったのか。
だが、ボクは諦めない。何故なら、そこに牛がいるから。
メスの牛に近づいていく。もう角で刺殺されるのは嫌だ、角の無いメスをロックオン。
ゆっくりと、慎重に。気付かれないように歩いていく。
あと5歩。
4歩。
3歩。
ドドドドッ
2歩。
「あれっ?」
後ろから音が聞こえる。何かが走っているような音だ。もう少しで届きそうだというのに邪魔しやがって、「何なんだ」と後ろを振り向く。
「やばっ」
目の前に一頭の牛。しかもオス。
バスッ
「がっ」
下から突き上げられる感覚と痛みに声が出ずに口から音が漏れる。高く、高く持ち上がった身体はある一点で上昇が止まり、一瞬の無重力を体験した後で重力に引かれて下に落ちる。
真下にはさっき突き飛ばした対象を見失って辺りを見回すオス牛がいて、そのまま奴の背中にぶつかった。
大の字で牛の背中にぶつかり、大事なところが直撃して悶絶する。魚にも、生殖機能あったんだね。どうもできない痛みを忘れるように牛の様子を確認する。
草喰ってやがる。何も無かったような感じで草を食べている。これはひょっとしてあれか、バグの一種なのか。背中に乗られることを想定していなかったから、背中の異物を検出できずに放置しているのか。いいことを知った。移動手段、ゲットだぜ!
それからしばらく乗り回し、動かし方もなんとなく分かってきた。足を窄めて牛の腹を締め付けると前に進み、離すと止まる。右の角を引くと右に曲がり、左の角を引くと左に曲がる。
大体こんな感じだ。牛の気分によって変わることもあるが。
しかもこの状態、他のモンスターに襲われない。モンスター同士では争わないように設定されているのか、プレイヤーとしての自分を認識せずに牛のモンスターとしての個が周囲に認識されているらしい。
あくまで、らしいだが。
のんびりゆっくりと、快晴の草原の中を牛に乗って優雅に進む。「のんのん○より」な気分だ。隣を行くメス牛に「具」という名前を付けておく。そのうちに肉にしてやるからな。
牛に乗りながらの移動で、暇になってしまった。今までしてこなかった魔法の練習でもするか。
このゲームの魔法は、単純に現象にしたいことが想像できて、それに見合う対価としてのMPがあればいい。
「ウインド、ウインド、ウインド」
安直に日本語的発音で風を生み出す。何回も繰り返して調整していくと、いい感じに風を作り出せた。
「エア・カッター」
想像力が大事なんだ。名前なんてどうでもいい。風を操作する感覚を覚えてから、明確に攻撃するための魔法を見つけていく。「空気・切断する道具」という感じで、適当に草原を切り裂く。たまに薬草が切られてアイテムボックスに勝手に入ってくるが、どれもこれも中途半端に切られているために使い物にならないゴミだ。
ポップしたラビットの首を切るイメージで「エア・カッター」を使う。威力が足りなかったのか、首は落ちずに動脈を傷つけただけらしい。毛皮が血だらけで、使い物にならない。切っちゃうと駄目らしい。
「エア・ハンマー」
とりあえず打撃武器っぽいのを想像して唱えてみる。草原の直径1メートルくらいが軽く押しつぶされた。
「エア・ハンマー。エア・ハンマー。エア・ハンマー」
イメージを少しずつ調整しながら唱え続ける。金槌で打つ感じが再現できればいい。丁度リポップしてきたラビットに向かって「エア・ハンマー」を使う。首の骨を打つ感じで。
骨を折られて動けなくなり、ピクピクと痙攣するラビットを「ウインド」で持ち上げて後ろ足を紐で縛り、牛の角に引っかけて血抜きをする。右の角を引っ張られている感じなのか、右に曲がり続けて円運動を始めた。そのまま停滞するのも面倒なので、もう一匹リポップしてきたラビットを「エア・ハンマー」で打ち殺して血抜きに左の角に引っかける。
背中で何をされても気にせずに悠々と歩く牛は、自らの角で血抜きされていることを気にせずに歩いていく。この絵面、悪くないか。立派な角をした牛の背中に魚類の顔をした半魚人が乗っていて、角には兎が垂れ下がっている。SAN値が下がりそうな光景だ。自分はその光景を見るわけじゃないから気にしない気にしない。
「ファイア、ファイア、ファイア」
MPに火をつける感じで火をともす。コンロのように火力調整できるようになってから、ラビットを切り身にして軽く塩をまぶし、王都の商店街で買った香辛料をかけて「ファイア」で焼く。焼けて少し外側がカリカリになってきた肉を「ウインド」で軽く冷ましてから口に運ぶ。
肉汁が少ない。あのジュワっとくるのが好きなのに。筋肉質でもなければ油が多いわけでもない。香辛料をかけていたおかげで少しは美味しく感じられる程度の肉だ。スープか何かの出汁にするしかないか。
切り分けたラビットの肉をアイテムボックスに入れ、横を歩く牛を見る。やっぱり肉と言ったら牛だよな。ステーキ系にして食べるか煮込み料理にするか、悩みどころだ。
今乗っているオス牛のつがいのようなものらしく一緒に移動してくるので、相棒が可哀想だからこいつは殺さないでおいてやる。何か他の獲物はいないかな。
ブータを発見。始めての一匹目だ、「豚丼」と名付けてやろう。首が太いので打撃は効きづらそうだ。電撃の方が良いだろうか。
電気というのは感覚的に理解しずらい。雷とか光って煩いだけに見えるし。カメラのフラッシュを焚くイメージで、小さな電圧を一瞬だけ高電圧に引き上げる。
「ボルト」
ブータに向けて光が走る。一瞬でブータの頭頂に落ちた光は高電圧に身体の自由が利かずにピクピクと痙攣しながら倒れこむ。昇圧によって電流が限りなくゼロに近づいたのか、肉の焼けた匂いはあまりしない。気体がプラズマ化した変な匂いだけだ辺りを覆う。
ブータを一頭手に入れた。牛よりかは小さいが、さっきのラビットよりは確実に大きい。肉の付いたわがままボディを撫でてから、「ウインド」で体を浮かせて血抜きをする。
血を集めたら黒魔術っぽい何かで悪魔的なものを召還とか出来るのだろうかと思考をそらしながら、草原に落ちてポリゴンになって消えていく血の跡を眺める。
血が抜けたら部位ごとに切り分ける。かた、かたロース、ロース、ヒレ、ばら、もも、そともも。残りの豚足と頭、しっぽ。それぞれアイテムボックスに収納した後で肩ロースの一部を薄く切って「ファイア」で炙る。きめ細かい肉が口の中でとろける。もっとおいしくするために2、3日保管しなければいけないが、アイテムボックスの中は時間が停止しているために意味がない。そのうちに拠点を決めて保管場所を作ることを頭の隅にメモ書きし、牛の背中で揺られて進む。
おれたちのたたかいはこれからだ。
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補足
・魔法について
「現象にしたいことが想像できて、それに見合う対価としてのMPがあればいい。」と書きましたが、それができるのはラビックがアンコ―族だからです。他の種族はそうはいきません。
ラビックは鈍感なのでそんな事には気づきません。興味の対象外です。
・スキル・不意打ち
相手に存在を悟らせずに攻撃を10回連続ですると取得できる。弓系、投擲系武器の使用者が良く持っている。
・モンスターのアイテムについて
モンスターを殺すと自動的にシステムがモンスターをアイテム化してアイテムボックスに入ってきます。殺す前に「血抜き」等何らかのアクションを起こすと自動的にアイテム化せずに捌くことが出来るようになります。個人の力量次第ですが。
ラビックは本で読んだ知識だけで捌きます。料理Lv.8、賢者Lv.1は伊達じゃありません。
・ラビックの強さについて
モンスターと真正面から戦ったら何もできずに殺されます。格闘系の技術はありますが、使ったことがないのでどうすればいいのか分からないままに殺されます。
ノンアクティブモンスターに乗っている状態では他のモンスターに襲われることはイベント以外ではあり得ないので、ボッチプレイに向いてます。
魔法は触媒の指輪を指に通せないのでアクセサリとして首にぶら下げています。
ステータス:
<Name:ラビック>
種族:アンコ―
Sex:male
Age:17
Lv.1(035/500)
Coin: 0マネ
HP:9000
MP:20000
STR:95(120)
VIT:80(100)
INT:115(130)
DEX:70(92)
AGI:90(105)
LUC:20(100)
※()は水中内。
称号:<唯一のアンコ―>、<絶滅危惧種>、<最弱に負けた最弱LV.8>、<本好き魚Lv.8>
祝福:<アンコ―神の守護>
スキル:<大図書館司書Lv.2>、<マナ使いLv.8>、<賢者Lv.1>、<料理Lv.15>、<調薬・調合Lv.10>、<格闘術Lv.14>、<先見Lv.5>、<穏行Lv.1>、<古代種の力>、<>、<>、<>、<>、<>、<>
装備:ローブ、杖、アンコ―の靴、アンコ―の眼鏡
所持品:初心のペン、初心の杖、錆びかけて折れたナイフ、皮紐 3本、本:5冊(剥ぎ取りの極意、かんたんレシピ・お金が無くて大変な時用、創世の書(笑)、図説 触媒)、アクセサリ(鎖に触媒である指輪を通しただけのもの)、アンコ―の遺産
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補足:
2回死亡したので残金0マネです。
ラビット1匹5×3
ブータ1匹20
合計35の経験値です。
ノンアクティブモンスターに殺されたことで、称号<最弱に負けた最弱>がレベルアップしました。
食材の調理により、スキル<料理>レベルアップしました。
魔法の使用により、スキル<マナ使い>レベルアップしました。