ガフの扉は開かれるか否か
ガフとは、主人公の友達君(男)です。
作中で、ガフの扉が開いた場合、それはイコールBL展開です。
無いとは思いますが、後ろの席の女子生徒の頭の中ではストーリー構成がなされていることでしょう。
会話らしい会話が少ないので、しゃべり成分をそのうちに付与できればいいのですが。
ガフ視点です。どぞ。
当初の目論見通り、ラビックに本を読ませてこのゲーム世界の文字に対応させることで、誰も読むことができなかったダンジョンの入り口にある文章を解読し、立ち入ることができるようになった。
しかし、あいつはなかなか外に出ない。ゴブリンに殺されて以来、全く出てこない。そのうち称号に引きこもりとか出てくるんじゃないだろうか。あるかどうかは知らないけれど。
>教室で
(あ~、ねみぃ)
遅刻ギリギリの時間に登校して、授業が始まった途端に寝落ちする。昼休みに腹が鳴ると起きて、コンビニで買った総菜パンを食べ、満腹になったらまた眠くなってきて寝る。ホームルームの終了とともに学校を走って抜け出して部屋に籠もり、ゲームを起動させる。
head to tail online が発売されてからの最近の行動としてはこんなところだ。自分でもこのままじゃいけないのは分かっている。だけど仕方ないんだ。ハマっちゃったんだから。
まぁ、隣の席の奴もヤバいんだが。
机の上に重ねられた本、本、本。厚いものから薄いものまで、ジャンルも様々。こいつは前々からこんな感じだったが、最近は更に酷くなっている気がする。
今までは先生に遠慮して(?)机の下で読んでいた本が、堂々と机の上で読み始め、教科書・ノートは机に出てはいるものの、それには一切手を着けられずに両脇に図書室で借りた本を盛った塔と読み終わった本の塔が建っている。
本人曰く、「教科書はもう読んだ。全部頭の中に入ってる」だそうだ。実際、最初は教師に目を着けられて何か問題がある度に指されていたが、その度に一瞬のラグの後に回答するといった掛け合いが続いて、遂に教師のほうが折れてしまった。
教室の中でも編人枠に入り、変に接触すると不味いと認識されているのか虐めもされないでスルーされている。チャラい奴が絡んだことがあるものの、ただの根暗ではなく本が好きすぎるというだけで、奴が机の上の本を乱雑に扱ったことによって始まった突然のマシンガントークと一切本から目を離さずに奴を罵倒する様子に引いて逃げられた。普段からチャラくてウザい奴と認識されていた奴が、ある意味で勇者となった日だった。
今現在は学校の図書館の本を読んでいる最中らしい。本に押された判が「学校図書館」と表記されている。朝、昼休み、放課後と図書館へと走り去っていくその姿は、既に学年中で有名で、「誰彼がイケメンだ」以上に有名な人物になっている。
そんな隣の席の住人と唯一、たまに会話を成立させる俺は涼宮何とかさんに対するキョンキョンみたいな存在になりつつある。振り回されることは無いのが唯一の救いだが。
そんな俺達を見て、斜め後ろの女子生徒が妄想を膨らませているのを俺は知っている。ぶつぶつとつぶやき声が授業中にたまたま起きていると聞こえてくる。
「誘い受け」「カップリング」「逆転」「嫌と言いつつも」「むしろ望んでる」「アーッ」と漏れ聞こえてくる呟きは、背筋が凍りそうなほどに恐ろしい。
眼鏡とパッツンな前髪で隠されたその眼は何処を見ているんでせうか。穢れあるその眼には、くんずほぐれつの男の園が映し出されているのでせうか。
ノートの端にさりげに筋肉がリアルに描き出されているのがなんか怖い。会話する度に鼻息が荒くなったり鼻血を出して周りの女子に連れていかれるのが怖い。
何が彼女をそこまでさせるんだろう。
腐女子への恐怖からも逃げるために、机に今日も突っ伏して寝る。
「実は誘ってるでしょう」
とか、
「寝ている俺を好きにシテっていう遠回しな誘いね」
などという呟きは聞こえない。
ダークな腐の波動を受け流しつつ、今日の授業も寝落ちする。
>ゲーム世界
「俺は自由だー!」
叫びながら草原に走り出し、ポップするモンスターを切り殺していく。ログインしてからパーティメンバーが集まるまでは、こうして手近な場所で軽く遊んでおく。
肩慣らしが終わったところで集まったパーティメンバーと、最近は入れるようになったダンジョンに潜る。
エルフの森に少し入ったところにある、公式には「遺跡ダンジョン」とされているそこは、確かに人工的な構造物に見て取れた。縦2メートルほど、横3メートルほどの通路は長く伸びていて、曲がりくねり、分岐し、地下に張り巡らせるように伸びる通路のいたる所に部屋があり、その中には敵対モンスターがいる。部屋に入らなければ戦闘にならないわけではなく、通路には警備ロボが居て攻撃してくる。
まだ序盤で何の情報も入っていないが、入り口が文字を解読できなければ侵入できなかったことから、下の階層に行く際にも何か暗号があるのではないかといううわさもある。
通路がいくつもありすぎて、まだ誰も次の階層へ行く階段なり通路なりを発見できていない。そのぶん昔のゲームのようにやりこみ要素があって、やればやるだけ強くなれるから、どうしてものめりこんでしまう。
カチッ
踏み出した足の下から小さな音が聞こえる。
恐る恐る足を持ち上げると、突然足元が二つに分かれて大きな穴が現れる。その中には太い棒状のものがいくつも立っていて、「堕ちる、ヤバい」と思った時にはもう遅くて、
「アーーーッ」
落とし穴の中でのあまりの衝撃的な出来事に、翌日もお尻の違和感が消えずにさんざん注意しながら椅子に座る。
「初体験おめ」
後ろから肩を叩かれ振り返ると、満面の笑みを浮かべた女子生徒の顔がそこにはあった。
だれかたすけて。