とある地下の巨大水槽
無双は始まらない。
[head to tail](お忘れかもしれませんがこのVRMMORPGのたいとるです)の運営会社の地下。そこには巨大なプールがある。水槽と言ってもいいかもしれない。
その中には、魚が一匹。
海底資源の調査等で、深海に調査船を派遣するためにはお金がかかる。万が一調査船が故障で消えてしまったら、その損害はとてつもなく大きなものとなる。
それを回避するために、深海生物を使って調査可能になればいいのではないかと、突飛な考え方をしたはた迷惑な人間がいた。あれよあれよというまにその計画は進み、深海生物の脳を小型の人工知能と入れ替え、放流して視覚情報などを衛星とリンクして深海の情報を調査する。
その深海生物の実験体として使われ、今も生き残っている一匹がこの水槽の深くで優雅に泳いでいる。実験ということで無駄に高性能な知能を積んだせいで、そこらの人間よりも頭が良くなってしまい、電子戦までできる置き場に困った子ができてしまったのだ。
この研究で功績の大きい研究者のお気に入りの生き物であるために、下手に殺すこともできなかったためにここの水槽に離されたのだった。
head to tailをつくったのはこの一匹の魚だ。自分を可愛がってくれた研究者の好きなVRMMORPGをつくり、彼を楽しませたい。そんな気持ちがあったのだろうか。ゲームという形ではあるが、一つの世界を作り、それをいつの間にか全世界に売り込んでいた。
「サイボーグ・チョウチンアンコウ」は、今日も優雅に漂い泳ぐ。