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閑話:かわいそうなゴブリン

残酷と言うか、悲しいので、耐性のない方はご遠慮ください。

 はじまりの平原の隣のはじまりの森には、昔からゴブリン達の家族が暮らしていました。


 平和な時を過ごす中で、ゴブオとゴブミはお互いにお隣の家族の末っ子として生まれました。


 幼馴染である二人は、もの心つく前から一緒に遊んでいました。


 子供の頃にはお互いに将来結婚するという約束をするほどの仲良しでした。


 しばらく経ち、二人が大人になると約束どおり結婚することになりました。ゴブオはゴブミのよき夫であるように毎日毎日働いて、ゴブミを養いました。ゴブミのお腹が大きくなってからは、よりいっそう狩りに励むようになりました。


 二人は家庭を築き、幸せに暮らしていましたが、転機が訪れました。冒険者と呼ばれる者たちが現れ、沢山の仲間たちを殺していったのです。


 ゴブオはゴブミと子供たちを守るために安全な森の奥へ移動させ、自分は仲間の男たちとともに、冒険者たちに対抗するために戦いへと向かいます。


 ゴブミは「そんなことはしなくていい。ゴブオと子供たちと一緒に森の奥で幸せに暮らせばいい」と言いましたが、ゴブオは「大切な家族を守るためにも、今冒険者たちを攻撃して森の中へ入ってこないようにしなければならないんだ」と言って戦いに行ってしまいました。


 ゴブミはそんなゴブオに惚れ直しながらも、もしゴブオが殺されてしまったらと心配で心配でたまりませんでした。


 ゴブオは仲間たちとともに、はじまりの平原へと出て行きました。そこには沢山の冒険者たちがいるからです。


 ゴブオは魚顔の冒険者を見つけました。間抜け面に笑いそうになりながらも押し殺し、仲間と罠にかけることにしました。


 まずは一人で魚顔の目の前をぶらつきます。倒そうと近づいてきたところで、後ろから近づいていた仲間が殴り、昏倒させます。後は魚顔が死ぬまで仲間と一緒に殴り続けます。


 10分ほど殴り続けたでしょうか。やっと魚顔は死にました。仲間と一緒に勝ち鬨をあげます。



 ドガァ



 いきなり仲間の一人が倒れました。何があったと言うのでしょうか。


 周りを確認すると、こちらに杖を向けているヒュームがいて、そのそばには剣や盾を持ったヒュームがいます。


 襲われた。


 仲間が殺された。


 それを認識したゴブオは、仲間を殺したヒュームを威嚇します。大切な仲間を殺したのです。彼らはやってはいけないことをしました。


 にらみ合いの中、魔法使いが詠唱を始めました。また誰かを殺そうとしているのでしょう。


 許せるはずがありません。


 ヒュームに向かって剣を振り上げながら走り寄ります。一人でも多くの冒険者を殺して、仲間を助けなくては。


 盾を持ったヒュームが目の前に現れます。気にせずにそいつに向かって剣を振り下ろしますが、盾が邪魔でヒュームを殺すことができません。


 何度も何度も剣を振り下ろしていると、突然剣を持っていた右手が燃え始めました。


『右手もーらい』


 熱い。


 悲鳴を上げ、一生懸命に火を消そうとしますがなかなか消えません。大やけどを負ってしまいました。


 物音に顔を上げると、剣を持ったヒュームが大きく腕を振り上げていました。


 ヒュッ


 シュパッ


『おおー、切れた切れた。やっぱゴブリンはしょぼいな』


 左腕に痛みが走ります。いいえ、左肩から先がありません。左腕を剣を持ったヒュームに切られました。


 痛い。 憎い。


 負の感情が心の中を大きく渦巻きます。


 憎い。 憎い。 憎い。 憎い。


 火傷を負った右手で何とか剣を握り、ヒュームに切りかかろうとしますが、力が入りません。


 このままではゴブミを、家族を守れない。


 敵意を、憎悪をこめて、ヒュームをにらみつけます。


『おーおー。なんかこのゴブリンこっちにらんでね? こえー』


 家族のためにも、立ち上がって冒険者を一人でも多く殺さなければなりません。


『じゃーな、雑魚』


 シュパッ


 剣を持ったヒュームがゴブオの首を刎ねました。


 ゴブオは、冒険者によって無残にも殺されてしまいました。





 そんなことも露知らず、ゴブミはゴブオの帰りを今か今かと待ち続けます。


 ガサガサ


 森の中を歩いてくる音が聞こえます。ゴブオでしょうか。


 ゴブミはいてもたってもいられず、ゴブオを迎えに走ります。



 ザクッ



「あれっ」 


 ゴブミは気がつくと、お腹を刺されていました。


 赤ちゃんが居たのに。と、自分が刺されたことよりも、ゴブオとの子供が死んでしまう事が何よりも悲しく、涙を浮かべながら、お腹を刺した剣を持っているヒュームの顔を見上げます。


 こいつか、こいつが私たちの子供を殺したのか。


 そう思いながらも、だんだんと身体から力が抜けていきます。


 わたしの子供を返せ。


 わたしのゴブオを返せ。


 そんなことを思いながら、何もやり返すことのできない自分の弱さになんともいえない悲しさを感じながら、ゴブミは死にました。



 















いつの間にかお気に入りが100件超えていたので記念です。

記念っぽくない内容の話ですけど。

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