憎い敵とのデスマッチ
インフルエンザにかかった後の登校日、夏休みの終わった始業式の日。皆さんは、外に出たくないという思いを感じたことは無いだろうか。
長期間自分に居心地の良い空間に居るとそこから出たくなくなるとか、そんな感じの心理状態になったことのある人はいるはずだ。
なぜこんなことを言うのかというと、今まで散々アピールしてきたと思うが私ラビックは街の外に一度しか出たことは無い。しかも最弱のゴブリンに出会ったというトラウマ付きだ。そんな人間が自ら外に出たいと思うだろうか。いや、そんなはずは無い。
ということで私は今、門番の手前でハゲに首根っこを捕まえられて引きずり出されようとしている。
これは虐待だ。犯罪だ。GMコールだ!と言ったら殴られた。
曰く、「お前が早く外に出ないのが悪い」と。
ハゲに引きづられて始まりの平原に出た。一応ここでハゲのパーティーメンバーと合流することに(いつの間にか)なっている。
そして、奴等は居たのだ。いかにも~なリア充臭のする彼らが。
近づいてみると彼らはゴブリンを虐殺していた。可哀想に、最弱だというだけで何故彼らは狩られなければいけないというのか。ああ、髪よ。これがハゲの与えた試練なのですか?
後で「かわいそうなゴブリン」というタイトルの本でも書いてやろう。読んだやつがゴブリンに同情して殺せなくなってしまうくらいの本を。
そんなこんなで「始まりの平原」に到着したラビックは、今になってようやく装備品の確認をしようとした。
上着は「初心のベスト」、下着は「初心のハーフパンツ」、靴は「初心の靴」であり、手に網持たせて虫取りかごを首から下げさせたら田舎の少年みたいになりそうな外見だった。アンコー顔を除けば(ここ重要)。
そんな怪しげな奴が居れば、何処であろうとヘイト(敵愾心)を煽るのは当たり前のことで、一気にゴブリンが4,5匹寄ってきた。
それに対しラビックは余裕満々。「今回は前回とは違うデー。魔法バンバン打っちゃるからな、瞬殺やで瞬殺」と心の中では意気揚々。
魔法使用用の触媒を取り出す為にアイテム化された『図説 触媒』を取り出すと、
「出でよ!我が忠実なる指輪よ」
といった感じで禍々しいけれどとても綺麗に装飾された指輪が一つらビックの前に現れた。
「ひっひっひ、魔法で一網打尽にしてくれるわー」
と叫びながら指輪を装備しようとする。
「………あ・れ?」
ラビックは指輪を装備しようとする。
「…………あれ?」
/ システムエラー/
/ この指輪は装備できません /
LV.は大丈夫。アクセサリはまだ何もつけてないから欄は開いている。「何故だ? 何故だ?」と思っているうちに、ゴブリン達に滅多打ちにされる。
「何故なんだー!」
と叫びながら指輪を手に持ち指にはめようとする。
しかし、思い出してもらえるだろうか。ラビックはアンコー族という希少種であり、海から出て来て人の形を取ったとされる種族である。
その種族にはたいていの場合、指と、指との間には、水かきが存在しているのだ。
つまり、ラビックの両手の指には水かきが存在しているので、指輪系のアクセサリは一切受け付けないものになっているのだ。
これを種族としてのアドバンテージといわずになんと言おうか。
結果、ラビックはその後も増えたゴブリン8匹によって滅多殺しにされて街に死に戻りしましたとさ。
それ以降、ラビックは指輪系のアイテムは首にチェーンをぶら下げてそこに指輪を入れることで擬似的に装備するようになったということです。
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ステータス:
<Name:ラビック>
種族:アンコ―
Sex:male
Age:17
Lv.1(015/500)
Coin: 1287マネ
HP:180
MP:280
STR:15(20)
VIT:10(15)
INT:28(28)
DEX:8(8)
AGI:15(20)
LUC:15(20)
※()は水中内。
称号:<唯一のアンコ―>、<絶滅危惧種>、<最弱に負けた最弱LV.2>、<本好き魚Lv.3>
祝福:<アンコ―神の守護>
スキル:<大図書館司書Lv.2>、<MP吸収Lv.14>、<MP回復Lv.14>、<全属性魔法Lv.16>*
、<料理Lv.8>、<調薬・調合Lv.10>、<格闘術Lv.12>、<先見Lv.3>、<>、<>、<>、<>、<>、<>、<>
装備:初心のベスト、初心のハーフパンツ、初心の靴
所持品:初心のペン、初心の杖、錆びかけて折れたナイフ、皮紐 3本、本:5冊(剥ぎ取りの極意、かんたんレシピ・お金が無くて大変な時用、創世の書(笑)、図説 触媒)
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補足:
<翻訳Lv.18>*、<筆記Lv.17>*、<速読Lv.15>*、<記憶Lv.20>*の四つのスキルから<大図書館司書Lv.1>にスキルアップしました。本人は気付いていませんが。
得点としては一般プレイヤーの進めないところまで進めるようになったり、他の図書館での優遇が期待されます。
<鑑定Lv.15>が<先見Lv.3>にスキルアップしました。外に出たことにより経験地が上がったようですね。
タイトル通りのデスマッチでした。
これからも、ラビックの珍道中を生暖かく見守りください。