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Future

作者: 夕霧緋色
掲載日:2006/09/10

たった一度の出来事で、俺は全てを失ってしまった。


もしもあの時、俺がこうしていれば…。

あんなことをしなければ…。


悔やんでも悔やみきれない。

どうしようもない思いが頭の中で渦巻く。


こうなることを知っていたのなら、俺は失敗しなかった。


俺に未来が見えていたなら、失敗などするはずも無かった。


未来が見えていたなら…。



『ナニヲ、望ム?』


俺は全てを投げ打って、ここに辿り着いた。

富も、名声も、力も、幸福も。全て、失った。


『ナニヲ、望ム?』


どうしても手に入れたかった。

二度とあんな目に遭いたくなかった。


『ナニヲ、望ム?』


俺の願いは、叶えられる。

目の前にいる、神によって。


『ナニヲ、望ム?』


俺が望んだもの。


『ナニヲ、望ム?』


「…未来を。」




俺には未来が見える。ほんの数秒後の未来も、遥か先の未来も。

一人でここに暮らしているが、この力のおかげで、困った目に遭ったことは一度も無い。

どんなに周りの人が驚くようなことでも、俺は驚かない。

どんなに周りの人が悲しむようなことでも、俺は悲しまない。

どんなに周りの人が怒るようなことでも、俺は怒らない。

すべて、知っているから。

俺の目は、これから起こる全ての出来事を知っている。


もうこれで、失うものは何も無い。そう思った。


ある日の朝。いつものように未来を見た。

俺の目に映るのは、普通の日常。そうであるはずだった。

未来の中で、俺は歩いていた。

そして、突然、俺に若い男が肩からぶつかった。

若い男が走り去る。

俺が道にくずおれる。

通り魔、か。


未来の中で、俺は死んだ。


いつ、どこで俺が殺されるのかはわかった。

だから、その瞬間にその場所にいなければいいだけの話だ。


その日の夜のニュースでは、俺ではない、他の誰かが通り魔殺人に遭ったことが報道されていた。


次の日の朝に見た未来でも、俺は死んだ。

交通事故。車に乗っているところを後ろから追突され、車が炎上。そのまま焼死。

未来がわかっているから、回避できる。

その日も俺は生きていた。


次の日も、その次の日も、俺の未来で、俺は死んだ。

どんなに生き延びても、死の影は俺にまとわりついて離れない。


焼死、溺死、事故死、病死。


思いつく限りのあらゆる死のパターンを、俺は未来に見た。


いつからか、それが辛くなっていた。

今日、俺は死ぬのか?

明日か?明後日か?それとも今この瞬間か?


未来なんて見えなければいい。

いつか自分が死ぬ運命にある。それはわかっていた。

それが自分の目に、事前にはっきりと見えるのは、辛かった。


もう、終わりにしよう。


俺自身を終わりにしよう。


俺は崖から飛び降りた。



『望ミハ、叶エラレタ』


『元ノ世界へ戻ルガヨイ』


俺が最初に見た未来。


俺の運命。


あぁ、そうなのか。


俺は俺自身を失ってしまった。


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― 新着の感想 ―
[一言] めちゃめちゃすごかったです!!何がって聞かれるとよくわからないですけど。私が書いているのはなんか全部説明っぽくなっちゃうんです。どうしたらいいんでしょう?
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