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~元魔王、再戦~


その日の朝は使用人に起こしてもらった。ネルヴァは覚醒し切らない頭をボリボリと掻き、ベッドから降りて着替えを始める。寝間着から動きやすい服に着替え終わる頃にはすっかり頭も覚醒していた。


鉄製の“出刃包丁”を片手に庭へ向かう。目的は素振り。結局早朝から素振りをするのはこれが初めてだったりする。



庭に立ち、剣を両手で持って正眼に構える。そしてゆっくりと剣を振り上げ、ゆっくりと振り下ろす。流石に鉄の塊である剣を思い切り振り下ろし、それを地面に付けずに止めるのは、8才であるネルヴァには不可能だった。


振り上げ、振り下ろす。この動作以外は全くしない。もともと素振りの目的が筋力アップなので、鉄の塊が振れればいいのだ。


恐らく、これ以上剣の技能は上がらない、確実にだ。ネルヴァは齢8にして剣の極みへと至ったのだ。


そのまま3分ほど振り続ける。3分も振ればネルヴァはクタクタだった。


───回数のノルマを設定して振った方が効率的かもしれない……


回数のノルマを達成したら、小休止をいれて再開する。それを繰り返している内に日は出てきて、朝食の時間となる。


汗を拭い、顔を洗い貴族らしい服に着替える。といっても朝食を食べた後はスライムのいる草原へ向かうつもりのため、また動きやすい服に着替えることになるのだが。


食堂の扉を開けるとまず見えるのは、壁際にズラリと並んだ使用人達。次にバカデカイ机の最奥に座っている父、その隣に座る母(兄2人は学園とやらにいる)。ネルヴァは父母の近くにある自分の席に着き2人に「おはようごさいます」と声を掛けた。返答はない。食事中は喋らないのがマナーである。ネルヴァも分かっていて声を掛けたのだ。


ネルヴァはフォークを持ち、自分の前にある料理に手を付けた。それを口に運びゆっくりと咀嚼する。別に味わっている訳ではなく、消化を早くする為だ。


自分の前に並べられた料理の半分を食べ終え、ネルヴァは席を立つ。そしてまだ朝食を食べている父と母に「行ってきます」と告げ、食堂から出る。自分の部屋へ戻り、動きやすい服にもう一度着替えた。


部屋の入り口近くに立て掛けてある出刃包丁を手に取り、家を出た。



────────────


グリーンスライムというのは、基本的に肉食である。それこそ、どんな肉でも食べる。だが、何故かスライムは他のどんな肉よりも人の肉を好むのだ。


勿論、ネルヴァは自分が餌になろうだなんて思わないし、自分以外の人間を餌にしようとも思わない。なのでそこは小動物で代用することにした。途中で捕まえた兎を草原のど真ん中へ投げ込み、様子を見る。その際に、草原にフィリアがいないか探してしまうのは何故だろうか。


草原のど真ん中に投げ込まれた兎は、逃げようとするも運悪くグリーンスライムに捕まってしまう。そして更に幾匹かのスライムも兎に飛び掛かり、兎はあっという間に骨ごと消化吸収された。


それを特に感慨もなくネルヴァが見つめていたのは、殺生に慣れてしまったからだろうか。


吸収を終えたグリーンスライム達は、他に餌はいないかと辺りを捜し回るような動作をするが、すぐに何もいないことを悟ると慌ただしく草原を散り散りに去った。ネルヴァはその中の一匹に狙いをつけて尾行を始める。


スライムは帰巣本能がわりと強いらしい。確固たる足取り(もとい粘液取り)で自分の巣と思わしき場所へ向かっていく。そしてスライムを追い続けて辿り着いた所は───奇しくも、最初にネルヴァが戦ったキンググリーンスライムのいた洞窟だった。



そんなことは関係ないとばかりに、ネルヴァは洞窟に入る。グリーンスライムが何度も飛び掛かってくるが、魔力を帯びた剣で全て切り払う。ネルヴァは臆することなく、どんどん進んで行く。


魔力を剣に流さなくても、自前の切れ味でスライムくらい十分切れるのだが、剣は魔力を帯びると切れ味が低下しにくくなり、更に洞窟などでは光源になるため、ネルヴァは魔力を帯びた剣で戦っているのだ。


そして辿り着く。最奥の広間。


キンググリーンスライムは、広間の真ん中に佇んでいた。


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