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貴方を失いたくない。

「おはよ〜天宮さん。」

…朝のHRが終わると、月城さんがひょっこり私の前に現れる。最近はいつもこう。

「おはよ。」

私はにこりと挨拶に応じた。


正直、今の悩みの種である。


月城さんは、なぜか"あのこと"を覚えている。


私のことを探るような視線に、ため息がこぼれた。



⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆

数日前、私は化け物に襲われた。


逃げることもできない中で、星と共鳴し、気づけば私は戦っていた。


起こった出来事もよくわからないまま、私はからだを引きずるようにして家へ帰り、玄関で倒れ込んだ。

疲れすぎて、動くのがしんどくて…。


ブーブー。

私はポケットから振動が響くスマホを取り出す。


通知がものすごい量溜まっている。着信も。

…月城さんから。


月城さんは私が死んだと思っているんだろうか。

申し訳なさを少し感じ、折り返しをかけようとしたとき、またスマホがなる。


『やっと繋がった…!今どこ!?』

「私は大丈夫。家にいるよ。…なんとかなったから、安心して。」

『…なんとかって、あの化け物たちは…?』

「化け物…あ、そういえばあの子は?月城さんが抱えていた子。」

咄嗟の言い訳が思いつかず、先程、大泣きしていた女の子を思い出す。

魔法使って追い払いました〜。なんて、言えるわけない。

『あの子は平気。とりあえず迷子ってことで、交番に届けてきちゃった。』

それで、化け物はどうしたの?


月城さんは間髪入れずにそう聞いてきた。

そりゃ気になるよね。


「…化け物は消えたの。私の目の前で。」

『消えた?』

「うん、私に気を引いてから、…逆方向へ逃げようと思ってたんだけどね。…怖かったし、もう忘れようと思う。」

『でも、また…』

また襲ってきたら、多分そう続けようとした言葉を、月城さんは話さなかった。

月城さんも怖かったんだと思う。二度と襲われたくない。普通そう思う。

「怖い夢だったんだよ。もう忘れよう?こんなの、誰かに話したら頭がおかしくなったと思われちゃうよ。」

私はそう話して、半ば強引に電話切った。


…とはいえ、何人かには見られている。何とかしなければならない。

化け物が現れて、突然消えた。普通はなぜ消えたか原因を探る。

…そこから、私のことがバレたら…。

魔法が使えるようになったなんて、絶対に面倒事になることは目に見えている。


⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆


電話のあと、謎の星型生き物のノクスとも色々話した。

そこで、私には普通の人間の記憶をいじるくらいなら出来ることが判明した。

記憶を完全に消すことは難しいから、夢や疲れによる幻覚として、化け物を忘れさせることにした。


…ただ、それがなにも通じてないのが、この月城さんである。

化け物のことをひとつも忘れていない。

未だに鮮明に覚えている。


私も最初は忘れてしまった設定で行こうと思ったが…。

私が電話で、忘れよう。とか、他の人に話せない。みたいなことを言ったのが気にかかっているようで、やけに最近は絡んでくる。


…ものすごく困る。


私は月城さんの世間話に軽く相槌を打ちながら、探りの会話をかわす。

こんなことが数日続いている。


「〜だからさ、今日は一緒に帰ろうよ!」

「うんうんいいね〜。…え?」

「やった!!約束ね!」

月城さんはぴょんと跳ねてしまいそうな勢いで自分の席へ戻って行った。


…考え事をして話を聞いていたら、一緒に帰ることになってしまった。




「見て〜!くまのクッキーがクレープに!!」

きゃーかわいい!と、きゃっきゃとはしゃぐ月城さん。


めちゃくちゃ女子高生だな…。

私も可愛いね。と同意し、自分のクレープを一口食べた。


本当に、月城さんは眩しい。

こうやって素直に笑えて、誰かと感情を共有することに躊躇いがないのが本当にすごい。

入学してからそんなに経っていないのに、もう月城さんはクラスの中心的人物だ。


ほんとうに、月城さんのころころ変わる表情は、人をひどく引きつける。

今日一緒に帰っているだけでも、自分が普通の女子高生になれた気持ちになれた。



放課後、私たちは他愛のない話、買い食いとかして。

私たちは休憩にと、公園へ歩んだ。

人気のない公園に、私は少し緊張する。


放課後になってから、化け物関連の話はひとつもされていない。

もしするなら、今だと思う。


「ね、天宮さん。今日楽しかった?」

「…うん。とっても楽しかった。こんなにはしゃいだの、久しぶりかも。」

私は思わず笑みが零れる。

全部本音だ。本当にたのしかった。


「あのね、化け物のことなんだけど、私、天宮さんが覚えているか覚えていないかはどうでもよかったの。ただ、」


月城さんは近くにベンチを見つけると、私の手を引いた。

一緒に座ると、私の顔をじっと見つめる。


「ただ、あの時の、私たちをかばってくれた天宮さん…。

ぜんぶ、どうでもいいって、くるしそうな顔してたから。今、ちゃんと本当の笑顔が見れた気がして、安心した。」

月城さんはニコッと笑った。

…本当に、優しい人なんだな。私は、貴方達を死ぬ理由にしようとしたのに。


「もう化け物はいいや!本当に出てこないし。私も忘れよー!」

月城さんは立ち上がり、んーっと、伸びをした。悩みから開放されたかのように。


「いやなことは、忘れておくのが1番だよね。」

私もそう言い、立ち上がった。


帰ろっか。そう、声をかけようとした瞬間だった。


私は背筋がゾワッとして、咄嗟に月城さんを思いっきり前へ押し倒した。

月城さんと私は立っていた場所から少し離れた場所に、ふたりで倒れ込んだ。

「うわ!…え?」


ドン!という音がし、私は咄嗟に起き上がる。月城さんも音のした方を見る。


…私たちが立っていた後ろの木に、大きな穴があいていた。

そして、私たちがたっていた場所から木にかけて、何かが通った跡がついていた。そして、木に隠れていた化け物が、顔を出した。


もし、あの場所に立ち続けていたら…。

私たちの体は、大きな穴だけで済んだだろうか…。


化け物には目はない。


ただ、私たちを見つめている。それだけはわかった。


「…な、に?」

月城さんは怯えたように、あとずさる。私は月城さんを立たせて、手を引いて走り出した。


こわい、手が震える。呼吸が浅くなる。

私は震えを抑えるように、月城さんの手をぎゅっと握った。


木に隠れていた化け物とは別に、他にも数体。

ぎょろりと、私たちに向いてきた恐怖は忘れられない。

…今回の化け物はなかなか早い。

急にスピードをあげて突進してくることもあるし。


変身するしかないことは、わかってる。月城さんを守らなきゃいけない。


戦うのが、怖い。やらなきゃいけない。でも、死ぬかも…。


私は頭がぐちゃぐちゃになりながら、胸元のペンダントに触れた。


「…っ、天宮さん!」

月城さんがそう叫ぶ。私は思わず振り返ると、月城さんは一直線に突進してくる化け物を、私と一緒に右へ避けた。


「ありがと…。」

私は、声を絞り出した。

なさけない。私が助けなきゃいけないのに。月城さんは普通の人で、戦う力すらないのに…。


「…天宮さんはここで隠れてて。たぶん、私の方が足速いし!逃げ切ってみせるよ!」

月城さんはそう笑って言い切った。さっきまで怯えてたのに。覚悟を決めた顔をして、座り込んでいた私の元から走り去っていく。


私にはわからないよ。他人のために、そこまで真剣になれる理由。

化け物が月城さんに向かっていく。


でも、このままではいたくない。守られるだけの自分は嫌だ。

私は震える手を、抑え込むように、ペンダントを握りしめた。


私の周りが光に包まれる。

私は素早くペンダントを杖に変え、月城さんに向かう化け物に向かって、真っ直ぐ光線を放った。


光の粒子が、私を包み込む。身体が軽くなり、力が溢れる。そして、私の服装と髪色を変化させる。

「あまみや、さん…?」


化け物たちは標的を私に変え、一気に襲いかかってくる。

私は、不思議と冷静になった気持ちのまま、敵に光線を放ち、塵へと変えた。


私は月城さんの元へ歩き、声をかけた。

「…ごめん、怪我はない?守ってくれて、ありがとう。」

「…すごい!すごかった!かっこいい!」

ぽかんと、口を開けていた月城さんは、目を輝かせてそう言った。

「天宮さんで、いいんだよね。」

「うん、天宮ゆらだよ。」

私は答える。こう見られると、何故か恥ずかしい。

私はくすぐったい気持ちのまま、変身を解こうとした。


「見事だな。星核。」

私は、声のした方を振り返る。

そこに居たのは、異様に長い手足。

真っ黒なスーツ姿、そして、


──顔にあたる部分が、宇宙になっている。キラキラと、中で星が輝いている。


「はじめまして。私の名前はルクス=ノクティス。君たちを"観測"しにきた。」


「あなた、何を企んでいるの?あの化け物はあなたの仕業?」

私はキッと相手を睨む。顔もよく分からないけど、杖を握りしめて。


「ああ、星骸のことか…?」


ルクスが指を高く上げると、化け物…。星骸がそこから、溢れ出ていた。


…さっきとは桁違いの星骸が現れる。

そして、星骸は中心に集まり、群がっている。


「…?」

なんだか、様子がおかしい。

ぐちゃぐちゃと、骨が軋むような、嫌な音を立てながらぶつかり合う星骸。


すると、星骸達が馴染むように、ひとつの巨体になった。

「は…?」


禍々しく、気持ち悪い化け物に変貌したそれは、私に向かってくる。

「私を失望させるなよ。星核。」

そう言い、ルクスは姿を消した。


私は、逃げた気持ちを必死に堪えた。動きはそこまで俊敏ではなく、私は月城さんを低木の影に移動するように促した。

「あっちに隠れてて。ここは危ない。」

「でも…!」

「大丈夫。」


私は月城さんに言った。

私は強く、杖を握りしめた。手が震えてしまわないように。


近づいてくる化け物から、私は離れて、さっきと同じように光線を放つ。


…ただの星骸だったら、すぐ塵になるけど、当たって煙が出ただけであまり効いていない。


私って、光線以外も攻撃手段あるのかな。


今まではとにかく、近づくな、あっちいけ。と思いながら戦ってたから真っ直ぐ放つ光線しか打てなかった。

でも、他になにができるか…私にはわからない。


考えていると、星骸の集合体が急に動きを止めた。

そして、なにか禍々しい光を中心に集め…放ってきた。


「…!!!」

私は避けた。が、その光の、エネルギー?みたいなものは私がいたところで爆発した。

私は爆風に吹き飛ばされ、地面を転がった。


「痛った……!」

爆風のせいかいろんなところが擦り切れて痛い。血が滲む。

「ゆらちゃん…!」

私は想像以上に飛ばされていたのか、月城さんが隠れていた低木の近くにいた。


「…出てきちゃだめ!!」

私がそう叫ぶと、狼狽えたようにまた隠れようとする。

だけど、星骸はすでに、先程の攻撃を放とうとしていた。


また、さっきの攻撃が来る……!!


私は痛む体を無視し、月城さんの前に立つ。

杖を握りしめて、星骸の前にかざした。


せめて、月城さんだけでも…!!!


すると、一瞬私の前に光の壁が出来た。


が、星骸の攻撃により呆気なく破られて、私はまた吹き飛ばされた。


さっきよりももろに食らったせいで、全身が悲鳴をあげている。

指先ひとつ動かない。呼吸もうまくできない。

ていうか、意識が飛びそう。

なんとか立ち上がろうとするけど、その度に身体に痛みが走る。目の前が霞む。


このままじゃ、月城さんまで……。


遠くなっていく意識の中で、目の前に月城さんが見えた。


出てきちゃだめって、言ったじゃん……。


そう声に出そうとするけど、口も上手く動かなくて、息を漏らすことしかできなかった。


月城さんが何かを喋っている。


またあいつらが攻撃してくるから、


はやく、にげて。


視界がぼやけていった。そのとき。


「これ以上…、ゆらを傷付けないで!!!!」


月城さんから、眩しい光が溢れ出たのを最後に、私の意識は途切れた。



⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆

目の前に横たわるゆらをみて、私は血の気が引いた。


至る所が切れて血が溢れていた。頭も先程打ったのか、出血し意識が朦朧としている。

浅い呼吸を繰り返して、時々顔を歪ませ、体は小刻みに震えている。

私を守ったせいで、こんな……。


せっかく、友達になれたのに…。

苦しそうな顔から、ようやく笑顔を見れたのに。

どうしてこうなっちゃったの……。

「お願い…死なないで…。」


私も、戦えたらよかったのに。そうしたら、ゆらをこんな目に合わせなかったのに…!!


考えていると、先程の化け物がまた、攻撃を仕掛けようとしているのが見えた。

体が冷えていくのを感じた。…ここで、死にたくない。

でも、ゆらは私を守ってくれた。だから私も。


私はゆらを庇うように立ち上がった。


お願い、ゆらを奪わないで。

…やっと、見つけたのに。


もう、これ以上、


「これ以上…、ゆらを傷付けないで!!!!」


すると、周りに光が満ち溢れた。


眩しさに目を瞑るけれど、その正体を探ろうと目を薄らと開く。


そこには、ペンダントがあった。


気が付けば私は、それに手を伸ばしていた。

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