第7話:リンク
どうも、Rowun☽です。
第7話を読みに来てくださりありがとうございます。
今回は少しだけ物語の空気が変わる回になっています。
これまでとは少し違う一面や状況も見えてくるかもしれません。
それでは、第7話をお楽しみください。
「……アルマ様、今日もいずこへ……」
昼下がり。
街を歩いていたキースは、ふと足を止めた。
胸の奥がざわつく。
嫌な感覚。
まるで何かが軋むような、ざらついた違和感。
(……なんだ?)
キースは空を見上げた。
そして気づく。
森の奥。
丘の方角。
黒い靄のような瘴気が、ゆっくりと空へ昇っていた。
(……丘か?)
アルマセンサーが反応する。
確信に近い直感だった。
キースは走り出した。
森を抜け、丘へ向かう。
そして――。
そこにいた。
漆黒の髪を風に揺らしながら、膝をつく少年。
アルマ・ル・ヴァルディス。
魔界の王子。
そして――。
彼を取り囲む三体の魔物。
瘴気を纏う異形。
《アシュラ・ヴェノム》。
アルマは息を荒げていた。
「……くそ……視界が……」
魔力が乱れている。
アルカディアの核。
その膨大な魔力に瘴気が反応し、暴走しかけていた。
詠唱しようとする。
だが、魔法陣が歪む。
「チッ……面倒だ……」
足元がぬかるむ。
突然の雨。
バランスを崩す。
その瞬間。
魔物が跳んだ。
巨大な顎が、アルマへ迫る。
――その時。
「アルマ様ァアアアアアッ!!」
ガキィン!!
雷鳴のような衝撃。
双剣が、魔物の牙を受け止めていた。
キース・ヴァレンタイン。
丘へ駆けつけた男だった。
「退け、この化け物が……!!」
双剣を交差させ、魔物の顎を押し返す。
その瞳は――。
いつもの限界オタクではない。
戦士の目だった。
「双剣術――」
刃が閃く。
「《断罪連鎖・影牙》ッ!!」
黒刃が走る。
魔物の目を裂く。
光刃が弧を描き、首を断つ。
一体が崩れ落ちた。
「まだ来るか……!」
残る二体が襲いかかる。
キースはアルマの前に立つ。
「俺は――」
双剣を構える。
「この人を守るって決めてるんだッ!!」
魔物が飛びかかる。
その瞬間。
キースの剣が、光と闇を帯びた。
パッシブスキル。
《リンク・オブ・アルカディア》。
アルマの魔力圏に入ったことで発動した。
光。
闇。
そして――。
意識が揺れる。
キースの視界に、別の景色が流れ込んだ。
――黒い玉座。
――無数の声。
罵倒。
歓声。
嘲笑。
崇拝。
そして孤独。
その中心に立つ、小さな少年。
幼いアルマ。
ただ一人。
世界の中で、孤立していた。
(……こんな場所に……)
キースは息を呑む。
(ずっと、一人だったのか……)
その瞬間。
キースの存在が、魔力核に触れた。
リンク。
アルマの暴走しかけた核が、静かに安定する。
瘴気が揺らぐ。
一瞬の隙。
「今だッ!!」
キースは現実へ戻る。
双剣が閃く。
二体目の脚を断つ。
三体目の首を斬る。
雨の中、魔物は崩れ落ちた。
静寂が戻る。
キースは膝をつき、振り返る。
「……アルマ様、ご無事ですか……?」
血と雨に濡れながら、笑う。
アルマは黙って彼を見ていた。
ぼろぼろの姿。
傷だらけの顔。
それでも笑っている。
そして――。
自分は確かに守られた。
「……お前」
アルマは静かに言った。
「本気で命を賭けるつもりだったのか?」
「当然です」
キースは即答した。
「俺は……推しの命より大事なものなんて、この世に存在しませんから」
沈黙。
そして。
アルマの目が細くなる。
「……馬鹿が」
そう呟く。
だが、その声はわずかに震えていた。
アルマは手をかざす。
回復魔法がキースを包む。
「……借りは作らん」
小さく言う。
その瞬間。
――ピコン。
電子音のような音が鳴った。
キースの視界に、ウィンドウが開く。
【アルマ・ル・ヴァルディス】
【好感度+1】
キースは固まった。
そして。
「え?」
丘に、驚きの声が響いた。
あとがき
第7話を読んでいただきありがとうございました。
ここから物語の流れが少しずつ広がっていきます。
登場人物たちの関係や、この世界の出来事も少しずつ動いていく予定です。
ゆっくり更新になるかもしれませんが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
それではまた、次のお話でお会いしましょう。
またね。




