第5話:推しとの距離感は人生の難題
どうも、Rowun☽です
第5話を読みに来てくださりありがとうございます。
今回は少しコミカルな回になっています。
主人公の推しへの情熱(?)が暴走気味ですが、温かい目で見守っていただけたら嬉しいです。
それでは、第5話をお楽しみください。
「観察」と「尾行」の境界線は、どこにあるのか。
そんな哲学的命題に挑む男がいた。
名前はキース・ヴァレンタイン。
職業:限界オタク。
対象:推しの魔界王子。
「……いや、これは尾行じゃない。調査だ。観察だ。学術的データ収集……そう、“推し研究”に過ぎない」
自分に言い聞かせながら、キースは街の柱の陰から静かに視線を向けていた。
その先にいるのは――
アルマ・ル・ヴァルディス。
魔界の王子。
今日も一人だった。
漆黒の外套を翻し、黒い髪がさらりと揺れる。
背筋は真っ直ぐ。歩く姿はあまりにも優雅だった。
まるで王の行進。
いや、むしろ。
玉座から降りた幻影のようだった。
人々は自然と距離を取る。
誰も近づかない。
だが。
キースだけは違った。
柱の陰から、熱い視線を送りながら小声で呟く。
「……あの歩き方、重心移動が完璧……」
感動で震える。
「体幹にブレがない……さすが我が推し……」
その時だった。
アルマが、ぴたりと足を止めた。
空気が止まる。
そして。
ゆっくりと首だけを横に向ける。
紅い瞳が、柱の影を真っ直ぐ見た。
「……尾けるのが下手だな」
ゾクリ、と背筋が粟立つ。
アルマ・ル・ヴァルディスの視線が、キースを射抜いていた。
完全にバレている。
完全に。
(やべぇ……)
キースの思考が高速回転する。
(推しに尾行バレてる……)
アルマは淡々と言った。
「警告はしたはずだ」
空気が冷える。
街の雑踏が遠くなる。
キースは言葉を失った。
そして。
次の瞬間。
アルマは動いた。
風が走る。
一歩。
二歩。
気づいた時には――
もう、いなかった。
「……え?」
キースは呆然と立ち尽くす。
路地の奥を見ても。
屋根の上を見ても。
どこにも姿がない。
完全に振り切られていた。
「……推しが……消えた……?」
膝に手をつき、息を切らす。
ゼェ、ゼェ、と呼吸が荒くなる。
(いや無理では!?)
(何あの機動力!?)
(俺ほんとに“魔界の王子”と仲良くなろうとしてる!?)
(難易度バグってない!?)
だが。
それでも。
心は折れない。
キースは拳を握る。
「くっ……」
瞳が燃える。
「この程度で……」
声が震える。
「俺は……折れないッ!!」
変態オタク魂が燃え上がる。
推しを救うためなら。
これくらいの困難――むしろご褒美だ。
キースは顔を上げた。
「次は……もっと自然な接触だ」
拳を握る。
「“偶然の必然”を演出するんだ……!」
脳内作戦会議、開始。
こうして。
魔界王子アルマ・ル・ヴァルディスから
“警戒対象レベルMAX”
という称号を賜ったキースの、
伝説(オタク史)は――
まだまだ続くのだった。
あとがき
第5話を読んでいただきありがとうございました。
主人公の行動がだんだん危ない方向に進んでいる気もしますが、本人は至って真面目です。
この先も少しずつ物語が動いていきますので、ゆっくり楽しんでいただけたら嬉しいです。
感想などいただけるととても励みになります。
それではまた次のお話でお会いしましょう。
またね。




