第3話:推し、降臨
こんにちは、Rowun☽です
第3話を読みに来てくださりありがとうございます。
少しずつ、この世界の出来事や流れが見えてくる回になります。
主人公も、自分が本当にあのゲームの世界にいるのだと実感し始めます。
そして物語も、ここから少しずつ動き出していきます。
それでは、第3話をお楽しみください。
名前は、キース・ヴァレンタイン。
転生してから、一週間が経った。
……とはいえ、いまだに現実味はない。
ここは、乙女ゲーム《アルカディア・レクイエム》の世界。
そして、この世界には――
俺の推しが、生きている。
アルマ・ル・ヴァルディス。
前世では、毎日十時間はボイスを聴いていた。
限定SSRグッズは全部集めたし、抱き枕は部屋の壁に祭壇みたいに飾っていた。
そんな存在が、今この世界のどこかにいる。
「……魔界に行けたら一番早いんだけどな」
ため息をつく。
だが当然ながら、魔界への行き方なんて知らない。
転移魔法も使えない。
結局、手がかりを探して街を歩き回る日々だった。
だが――
原作ゲームの知識がある俺には、一つだけ確信があった。
この時期。
ゲーム序盤。
アルマは一度、人間の街へ視察に来る。
理由は――魔力の歪み。
人間界で発生する魔物の調査だ。
魔族と人間は和平を結んでいる。
だから魔族が街に現れても問題はない。
だが魔物は別だ。
魔物は魔族とも無関係の存在で、魔族すら襲う。
つまり――
アルマが来る。
その確信があった。
そして、その日。
城下町の広場に、人だかりができていた。
胸が高鳴る。
まさか。
いや、でも――
人垣をかき分けて、前に出た瞬間。
時間が止まった。
そこに立っていたのは――
漆黒の髪。
血のように赤い瞳。
白磁のように透き通った肌。
圧倒的な存在感。
アルマ・ル・ヴァルディス。
生きてる。
推しが。
生きてる。
「やばい……」
声が漏れる。
尊すぎる。
直視できない。
いや、でも見たい。
見ないと死ぬ。
そんな葛藤の中で、ふと――
アルマの視線がこちらを向いた。
目が、合った。
心臓が跳ねる。
脳が真っ白になる。
気がついた時には、身体が動いていた。
「王子っ!!!」
広場に声が響く。
アルマの視線が完全にこちらへ向いた。
「俺、キース・ヴァレンタインって言います!!」
緊張で声が裏返りそうだった。
アルマの紅い瞳が、冷たくこちらを見据える。
「……なんだ、無礼者」
その声音は、氷のように冷たい。
王子の威厳。
王者の圧。
だがそれすらも――
尊い。
「あ、えっと……」
言葉が出ない。
ダメだ。
推しが目の前にいると、何も話せない。
完全に思考停止している俺を見て、アルマは小さく息を吐いた。
「……用がないなら話しかけるな」
冷ややかな声。
「悪いが、話している余裕はない」
そう言って、踵を返す。
そのまま凛とした足取りで歩き去っていく。
その背中すら――美しい。
歩き方で昇天できる。
俺の脳内で、何かが爆発した。
恋、という言葉が浮かぶ。
そして、確信した。
――絶対に、もう一度会う。
推しを守る。
たとえ、この世界すべてが敵でも。
アルマ・ル・ヴァルディスを、救ってみせる。
第3話を読んでいただきありがとうございました!
少しずつ物語の舞台や人物が動き始めてきました。
ここから先は、原作ゲームの流れと少しずつ重なりながら、そして時には外れながら物語が進んでいきます。
ゆっくり更新になることもあると思いますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回第4話、第5話:2026/03/11 17:00更新予定!
もしよければ感想などいただけると、とても励みになります。
それではまた、次のお話でお会いしましょう。
またね。




