第30話:修正される日常
どうも、Rowun☾です
第30話「修正される日常」です。
今日は少しペースを落として、1話のみの更新になります。
その分、物語の流れをしっかり進める回になっています。
エリシアが“物語を戻す”ために動き出し、日常の中に違和感が滲み始めました。
何気ない会話や行動の中にある“ズレ”を、楽しんでもらえたら嬉しいです。
それでは、第30話をお楽しみください。
ラザリオン魔術学アカデミー。
翌朝。
教室の空気は、どこか落ち着かないままだった。
「昨日のあれ、結局なんだったんだ……」 「模擬戦であんなのありかよ……」
ざわめきが残る中。
アルマ・ル・ヴァルディスはいつも通り席に座っていた。
「…………」
静かに本を開く。
何も変わらない。
まるで、昨日の出来事など存在しなかったかのように。
その隣。
キース・ヴァレンタインは、頭を抱えていた。
(やばい……)
(完全に話が進んでる……)
(しかも俺の知らない方向に……)
ちらりと横を見る。
アルマ。
(……この人、ほんと何も気にしてないよな……)
その姿が、逆に怖い。
「アルマ様」
柔らかな声。
キースの肩がびくっと跳ねる。
(来た)
エリシア・ルクス。
今日も変わらない笑顔で立っていた。
「……なんだ」
アルマが短く返す。
エリシアは自然に距離を詰める。
「本日、よろしければご一緒に昼食を」
キースの思考が止まる。
(は?)
(待ってそれイベントじゃん!?)
アルマは即答する。
「断る」
(よし)
だが。
「……が」
また来た。
「好きにしろ」
(なんでだよ!!!)
キースの心が叫ぶ。
エリシアは微笑む。
「ありがとうございます」
そのまま、席の横に立つ。
自然すぎる動き。
まるで、最初からそこにいるように。
キースは気づく。
(……あれ)
(この流れ……)
記憶を探る。
ゲーム。
アルカディア・レクイエム。
(これ……)
(ヒロインがアルマに近づく最初のイベントだ)
心臓が跳ねる。
(違う)
(ここに俺はいなかった)
違和感。
だが同時に。
(……でも、似てる)
エリシアは、完全に“流れ”を作っている。
授業が始まる。
教師の声。
ノートを取る音。
すべてが“普通”に進む。
だが。
キースの中では警鐘が鳴り続けていた。
(これ、戻されてる……?)
ちらりと見る。
エリシア。
彼女は、自然に授業を受けている。
完璧に。
違和感なく。
(……違う)
“自然すぎる”。
まるで。
最初からそうなるように、配置されているかのように。
――昼休み。
中庭。
「アルマ様、こちらへ」
エリシアが先導する。
迷いがない。
アルマは何も言わずについていく。
キースも、当然のように後ろからついていく。
(これ……)
(完全にイベント再現だ……)
ベンチ。
日陰。
人通りが少ない場所。
(ここ、完全に攻略ポイントじゃん……)
エリシアが座る。
アルマも座る。
――その隣。
自然に空いたスペース。
(本来、ここはヒロインが隣に座る場所)
だが。
キースが、そこに座った。
「……」
空気が、一瞬だけ止まる。
エリシアの視線が、ほんのわずかに動く。
だが。
すぐに微笑みに戻る。
「キース様も、ご一緒にどうぞ」
(……今、ちょっとズレたよな)
キースは確信する。
(完全には戻せてない)
エリシアは、内心で思う。
(……邪魔)
ほんの一瞬。
感情が滲む。
だが、すぐに整える。
(大丈夫)
(まだ修正できる)
「アルマ様」
エリシアが言う。
「本日の講義で分からない点があって……」
“原作通り”の流れ。
アルマが答える。
「……どこだ」
自然。
あまりにも自然。
キースはその会話を見ながら、強く思う。
(これ……)
(やばい)
(本当に戻される)
だが。
アルマは、ふと視線を横に向ける。
キースを見る。
「お前」
「え?」
「何も食わないのか」
一言。
たったそれだけ。
だが。
その瞬間。
“流れ”が、崩れた。
エリシアの瞳が、わずかに揺れる。
(……違う)
(そこじゃない)
(その会話は、ない)
キースは一瞬だけ固まり。
「……食べる!!!」
満面の笑みで答えた。
(やっぱり)
エリシアは確信する。
(この人がいる限り)
(完全には戻らない)
静かに、決意する。
(なら――)
(もっと強く、修正する)
――日常は、少しずつ書き換えられていく。
あとがき
第30話を読んでくださりありがとうございました。
今回は大きな戦闘ではなく、静かに進む“修正”の回でした。
エリシアは物語を元に戻そうと動き、
キースはそれに気づきながらも抗い、
アルマは何も知らないまま、その中心にいる。
少しずつですが、確実に流れが変わり始めています。
そして今日は1話のみの更新でした。
また次回から、しっかり進めていきますので楽しみにしていただけたら嬉しいです。
またね。




