第2話:夢じゃなかった世界
こんにちは、Rowun☽です。
第2話を読みに来てくださりありがとうございます。
この物語は、「推しが救われない物語なんて認めない」という気持ちから始まりました。
主人公がどんなふうにこの世界と向き合っていくのか、少しずつ見えてくる回になっています。
ゆっくりとした更新になるかもしれませんが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、第2話をどうぞ。
――見知らぬ天井だった。
ゆっくりとまぶたを開ける。
木の梁がむき出しの天井。
白い壁。差し込む朝の光。
「……」
ぼんやりした頭で、昨日の出来事を思い出す。
事故。
森。
魔物。
湖。
そして――転生。
「……いやいや」
身体を起こし、部屋を見回す。
狭い部屋だった。
木製のベッド。
質素な机。
壁に立てかけられた剣。
窓の外には、石造りの街並み。
「……夢、だろ?」
呟く。
だが、手の感覚は妙にリアルだった。
指を動かす。
ちゃんと動く。
その時、部屋の隅にある鏡が目に入った。
「……」
嫌な予感がする。
恐る恐る近づく。
鏡の前に立つ。
そこに映っていたのは――
黄金色の髪。
エメラルドの瞳。
整った顔立ちの少年。
「……」
沈黙。
数秒。
そして。
「ちょっと待てえええええええええ!!」
絶叫が部屋に響いた。
「なんで俺が!!」
「アルマ様殺す役なんだよ!!!!」
頭を抱えてしゃがみ込む。
鏡の中にいるのは――
キース・ヴァレンタイン。
乙女ゲーム『アルカディア・レクイエム』の主人公。
平民出身の剣士。
そして。
アルマ・ル・ヴァルディスを討つ、運命の英雄。
「……夢じゃないのかよ……」
窓の外から人の声が聞こえる。
荷車の音。
市場の呼び声。
全部、リアルだった。
「……はぁ」
深く息を吐く。
そしてゆっくり立ち上がる。
窓の外の空を見上げる。
この世界。
アルマ・ル・ヴァルディスが生きている世界。
次の瞬間――
「アルマ様ぁぁぁぁぁ!!」
思わず叫んだ。
「絶対救いますからぁぁぁぁ!!」
「待っててくださぁぁぁぁい!!!」
朝の町に、全力の宣言が響いた。
――推しが生きてる世界とか、神ゲーすぎるだろ。
着替えを済ませ、剣を腰に差す。
そして外に出た。
朝の町はすでに賑やかだった。
パンの焼ける匂い。
市場の声。
通りを行き交う人々。
「マジで……ゲームの世界だ」
思わず呟く。
その時。
「おーい!キース!」
声が飛んできた。
振り向くと、野菜を積んだ荷車の男が手を振っている。
「久しぶりじゃねえか!森の仕事だったんだろ?」
「あ、ああ……昨日戻ったばっか」
気づけば自然に言葉が出ていた。
原作キースの記憶。
この町で育った日々。
「そういや聞いたか?」
男は言った。
「今年のアカデミー入学式」
キースの心臓が跳ねる。
「……来週らしいぞ」
魔術学アカデミー。
乙女ゲーム『アルカディア・レクイエム』の舞台。
すべての物語が始まる場所。
「へぇ……」
平静を装う。
すると男は続けた。
「しかも今年は特別だ」
「特別?」
「魔族の王子が来るらしい」
その瞬間。
キースの思考が止まった。
男は何気なく名前を口にする。
「……アルマ・ル・ヴァルディスってやつだ」
世界の歯車が、静かに動き出した。
第2話を読んでいただきありがとうございました。
少しずつ物語の舞台や、この世界の空気感が見えてくる回になりました。
ここから物語もゆっくり動き始めていきます。
もし楽しんでいただけたら、感想などいただけるととても励みになります。
それではまた次のお話でお会いできたら嬉しいです。
またね。




