第27話:視線の先にあるもの
どうも、Rowun☾です
第27話「視線の先にあるもの」です。
今回は模擬戦。
ですが、ただの訓練では終わりません。
キースとエリシアの対峙。
戦いの中で明確になる“違和感”。
そして――ついに、アルマが動きます。
三人の関係が、これまでとは違う形でぶつかり始める回です。
それでは、第27話をお楽しみください。
ラザリオン魔術学アカデミー。
演習場。
広く開けた石造りの空間に、生徒たちのざわめきが広がっていた。
「今日は模擬戦か……」 「Sクラスもやるらしいぞ」
中央には、魔力で構築された結界。
実戦形式の訓練場だ。
教師が声を上げる。
「本日は簡易模擬戦を行う。相手を戦闘不能、もしくは降参させた時点で勝利とする」
ざわめきが強まる。
キースは顔を引きつらせていた。
「……やばい、絶対やばい」
「何がだ」
隣のアルマが淡々と返す。
「いやだって、これ普通に戦うやつじゃん!? 俺、座学ボロボロなんだけど!?」
「実技は二位だっただろう」
「それは推しパワーでなんとかしたやつ!!」
「意味が分からん」
その時。
「アルマ様」
エリシアが近づいてくる。
相変わらず、自然な距離感。
「本日の模擬戦、もしよろしければ――」
「断る」
即答。
だが。
「……が」
また続く。
「勝手に組まれるなら知らん」
キースが思う。
(その“が”なんなんだよ……)
エリシアは微笑む。
「では、運に任せましょうか」
――組み合わせ発表。
魔力文字が空中に浮かび上がる。
生徒たちが一斉に見上げる。
「えーっと……」
キースが目を凝らす。
次の瞬間。
「……は?」
固まる。
そこに書かれていたのは――
【キース・ヴァレンタイン vs エリシア・ルクス】
「いや待って!!」
即ツッコミ。
「なんでヒロインと戦うの!?」
周囲がざわめく。
「聖女様と……?」 「あのキースってやつか……」
エリシアは静かにキースを見る。
「よろしくお願いしますね」
その笑顔。
だが、瞳はまったく笑っていなかった。
キースの背筋がぞくりとする。
(……やばい)
(これ、なんか違う)
一方で。
少し離れた場所。
アルマは、その様子を無言で見ていた。
「……」
興味なさそうに見える。
だが。
視線だけは、外していなかった。
――試合開始。
結界が展開される。
キースは剣を構える。
「……えっと、その」
「本気で来てください」
エリシアが言う。
静かな声。
だが、圧があった。
「手加減はいりません」
「いやでも……」
その瞬間。
エリシアの魔力が、ふっと揺れた。
空気が変わる。
キースの直感が叫ぶ。
(――危ない)
反射的に、身体が動く。
一歩後ろへ跳ぶ。
その直後。
地面が、裂けた。
「は!?」
「避けましたか」
エリシアの声は、落ち着いていた。
だが。
その瞳は冷たい。
(これ……マジで戦うやつだ……)
キースは剣を握り直す。
心臓が速い。
(やるしかない……!)
駆ける。
一気に距離を詰める。
光と闇が、剣に宿る。
「っ……!」
振り下ろす。
だが。
エリシアは、動かない。
そのまま、手をかざす。
「遅いです」
次の瞬間。
キースの身体が弾き飛ばされた。
「ぐっ……!?」
地面を転がる。
息が詰まる。
(なに……今の……)
魔法。
だが、違う。
(精度が……異常だ……)
エリシアはゆっくりと歩く。
距離を詰める。
「やっぱり」
ぽつりと呟く。
「あなた、普通じゃない」
キースの心臓が止まりそうになる。
「動きが、“知っている人”のそれです」
踏み込まれる。
逃げ場がない。
「……ねえ」
エリシアの声が、すぐ近くで響く。
「どこまで知ってるんですか?」
その瞬間。
ゾッとするほどの違和感。
戦闘中。
なのに。
これはまるで――尋問。
「……っ!!」
キースは咄嗟に距離を取る。
呼吸が乱れる。
(やばい)
(完全にバレに来てる……!!)
その時。
「……終わりだ」
低い声。
次の瞬間。
結界が、軋む。
空間が歪む。
アルマが、歩いていた。
結界の中へ。
「なっ……!?」
教師が声を上げる。
「アルマ!? 何を――」
止まらない。
そのまま、中央へ。
キースとエリシアの間に立つ。
「つまらん」
その一言。
それだけで。
空気が、完全に支配される。
エリシアの瞳が、わずかに揺れた。
(……入ってきた)
(結界を無視して)
確信する。
(この人は――)
(やっぱり“外側”の存在)
アルマはキースを一瞥する。
「お前、遅い」
「いや今それ言う!?」
「見ていて退屈だ」
そして、エリシアへ視線を向ける。
「……遊びは終わりだ」
その言葉に。
エリシアは、初めて笑みを消した。
――視線が交わる。
王子と聖女。
その間にあるものは、決して“好意”ではなかった。
そして。
キースは理解する。
(あ、これ)
(完全に巻き込まれてるやつだ)
物語は、もう観客ではいられない場所へと進んでいた。
あとがき
第27話を読んでくださりありがとうございました。
ついに戦闘という形で、三人の関係が表に出てきました。
エリシアはキースの“正体”に踏み込み、
キースはそれに動揺し、
アルマはそれを見て――介入。
この三人、もはや普通のクラスメイトではありません。
そして今回、アルマが結界を無視して入ってきたことで、
彼の“規格外さ”もさらに強く描かれました。
次回は、この続き。
アルマとエリシア、真正面からの対峙へ。
またね。




