第25話:揺らぐ均衡
どうも、Rowun☾です
第25話「揺らぐ均衡」です。
前回の出来事を経て、三人の関係がさらに一歩進んだ回になります。
表面上は穏やかでも、水面下ではそれぞれの思惑が動き始めています。
エリシアの“選択”と“目的”。
キースの違和感と戸惑い。
そしてアルマの変わらないようで、どこか変わり始めている態度。
小さなズレが、確実に広がっていく回です。
それでは、第25話をお楽しみください。
中庭のざわめきは、徐々に収まりつつあった。
「さっきの……なんだったんだ……」 「魔物じゃないよな……?」
誰も答えを持たないまま、不安だけが残る。
その中心で。
アルマ・ル・ヴァルディスは、ただ静かに立っていた。
「……くだらん」
興味を失ったように、踵を返す。
その背中を、キースはぼんやりと見ていた。
(……今の、なんだったんだ……)
空間ごと消えた。
あれは“魔法”じゃない。
(やっぱり……アルマ、やばすぎるだろ……)
思考がまとまらない。
だが、それ以上に。
さっきの会話が頭から離れなかった。
――“あなた、転生者ですよね?”
キースは無意識に拳を握る。
(バレてる……?)
(いや、でも……確信って感じだった……)
そこへ。
「キース様」
声がする。
振り返る。
エリシアが、穏やかな笑みを浮かべて立っていた。
「さっきはすみません、急に」
「あ、いや……」
ぎこちない返事。
だが、その空気はどこか不自然だった。
エリシアは続ける。
「少し言い方がきつかったかもしれませんね」
「……いや、その……」
キースは迷う。
だが、聞かずにはいられなかった。
「……なんで、そう思ったの?」
エリシアの瞳が、わずかに細くなる。
「簡単ですよ」
「この世界の“流れ”を知っている人の動きだったから」
「……」
「本来起きないことが、あなたの周りで起きている」
「それだけで十分です」
静かな断定。
キースは何も言えなかった。
その時。
「……まだ話していたのか」
低い声。
振り返る。
アルマが、すぐ後ろに立っていた。
気配すらなかった。
「うわっ!?!?」
「……騒がしい」
アルマの視線が、エリシアへ向く。
一瞬。
空気が張り詰める。
エリシアは、にこりと笑った。
「アルマ様」
「何度も言わせるな。気安く呼ぶな」
「では、アルマ様」
「……」
訂正する気はないらしい。
キースが内心でツッコむ。
(そこは直すんだ!?)
エリシアは一歩、距離を詰める。
「先ほどの魔法、とても興味深かったです」
「魔法ではない」
即答。
「……やはり」
エリシアの瞳が、わずかに光る。
「ますます興味が湧きました」
アルマの表情は変わらない。
「勝手にしろ」
冷たい言葉。
だが拒絶ではない。
それを、エリシアは見逃さなかった。
(……入れる)
(この人の領域に)
ほんのわずかな隙間。
そこに、入り込む。
キースはその様子を見ていた。
(……なんか)
(嫌な予感しかしない)
エリシアが言う。
「もしよければ、今度ご一緒に――」
「断る」
即答。
だが。
「……が」
続ける。
「ついてくるなら止めはしない」
キースが固まる。
(それOKなの!?)
エリシアは微笑んだ。
「ありがとうございます」
その笑みは、どこか満足げだった。
その瞬間。
キースは理解する。
(あ、これ……)
(完全にイベント始まってるやつだ……)
ゲームでいうところの。
“ルート分岐”。
だが――。
(これ、俺が知ってるやつじゃない)
確実に、違う。
アルマが歩き出す。
当然のように、キースはついていく。
その後ろに、エリシアも並ぶ。
三人。
並んで歩く。
だがその距離は、微妙にズレていた。
アルマは前。
キースはその横。
エリシアは、半歩後ろ。
その配置が、すべてを物語っていた。
(……変えられる)
エリシアは思う。
(この物語は、まだ修正できる)
そのために。
(まずは――)
視線を向ける。
アルマへ。
(この人を、攻略する)
キースは思う。
(なんで俺、こんなとこにいるんだ……)
アルマは、何も思っていないように見えた。
だが。
ほんのわずかに。
その口元が、歪んだ。
――均衡は、静かに崩れ始めていた。
あとがき
第25話を読んでくださりありがとうございました。
三人が並んで歩くという、ある意味“普通”の光景。
ですがその内側では、それぞれが全く違うものを見ています。
エリシアは物語を“修正”しようとしている。
キースはその流れに巻き込まれながらも違和感を抱いている。
アルマは――まだ、そのすべてを静観している段階です。
ただ、この均衡は長くは続きません。
次回はさらに一歩踏み込んだ展開へ。
三人の距離が、もう少しだけ近づくか、あるいは――。
またね。




