第24話:聖女の選択
前書き
どうも、Rowun☾です
第24話「聖女の選択」です。
ここから一気に、物語の空気が変わっていきます。
これまで“違和感”として描かれていたものが、
今回ついに言葉になり、衝突し始めました。
エリシアが見ている「正しい物語」と、
キースが壊している「今の現実」。
そしてその中心にいるアルマという存在。
少しずつですが、三人の立ち位置がはっきりしてきます。
それでは、第24話をお楽しみください。
中庭に満ちていた穏やかな空気は、完全に消え失せていた。
ざわめきが広がる。
「な、なんだあれ……」 「魔物……?いや、違う……」
空間が、歪んでいる。
目に見えないはずの魔力が、濃く、重く、ねじれていた。
その中心。
“それ”は現れた。
黒い靄のような塊。
輪郭が定まらず、揺らめきながら存在している。
まるで――世界からはみ出した“何か”。
キースの背筋が冷える。
(これ……普通じゃない……)
エリシアは、それを見た瞬間、確信した。
(原作に、こんなのはない)
ありえない。
このタイミングで、この現象は起きない。
(……やっぱり)
ゆっくりと視線を横へ向ける。
キース。
(この人が原因)
確信に近い直感。
物語を乱している存在。
「……キース様」
「え?」
「少し、いいですか」
柔らかい声。
だが、その瞳は冷えていた。
キースは一瞬戸惑う。
「え、あ、うん……?」
その瞬間。
アルマが口を開く。
「……行くな」
低い声。
キースの足が止まる。
「え?」
アルマは視線を逸らさないまま言う。
「その女は、信用するな」
空気が張り詰める。
エリシアが、にこりと笑った。
「ひどいですね、アルマ様」
「事実だ」
即答。
キースは完全に板挟みだった。
(え、なにこの状況!?!?)
(どっち!?どっち行けばいいの!?!?)
エリシアが一歩近づく。
「私はただ、お話がしたいだけですよ?」
アルマの瞳が、わずかに細くなる。
「……くだらん」
だが、止めはしない。
その沈黙が、キースの背を押した。
「……じゃ、ちょっとだけ」
エリシアの方へ歩く。
アルマは何も言わなかった。
ただ――。
ほんのわずかに、魔力が揺れた。
少し離れた場所。
中庭の端。
ざわめきが遠のく。
エリシアは振り返った。
「……単刀直入に聞きますね」
声が変わる。
柔らかさが消える。
「あなた、“転生者”ですよね?」
キースの思考が止まった。
「――……は?」
空気が、凍る。
エリシアは続ける。
「この世界のこと、知ってるんですよね」
「……」
「物語の流れも、全部」
キースの喉が乾く。
(バレてる……?)
否定するべきか。
誤魔化すべきか。
思考が回らない。
エリシアが一歩踏み込む。
「あなたのせいで」
その声は、静かだった。
「物語が壊れてるんです」
キースの目が揺れる。
「……壊れてるって……」
「本来、あなたはいない」
断言。
「ここに来るはずもない」
「アルマ様と関わることもない」
「……え」
キースの視線が揺れる。
エリシアの瞳は、まっすぐだった。
「でも、いる」
「だから、ズレた」
「だから、壊れた」
その言葉は、刃のようだった。
一方で。
中庭の中心。
アルマは“それ”を見ていた。
黒い靄。
歪んだ存在。
「……くだらん」
指を鳴らす。
パチン。
その瞬間。
空間が、静止した。
黒い靄が、動きを止める。
次の瞬間――。
“消えた”。
何も残さず。
存在ごと。
周囲が息を呑む。
「な……」 「消えた……?」
誰も理解できない。
ただ一人を除いて。
アルマ・ル・ヴァルディス。
「……この程度か」
興味を失ったように呟く。
その光景を。
遠くから見ていたエリシアの瞳が、細くなる。
(……やっぱり)
(この人は、危険)
そして。
(……邪魔)
静かに、結論が下される。
(このままだと、物語は変えられない)
(なら――)
決意が、形になる。
(攻略する)
アルマを。
キースは何も言えずにいた。
頭が混乱している。
だが。
一つだけ、分かることがあった。
(……なんか)
(やばいことになってる)
エリシアは再び、柔らかく笑った。
「大丈夫ですよ、キース様」
「私は――味方ですから」
その言葉が。
妙に、冷たく聞こえた。
そして。
三人の関係は、確実に形を変え始める。
――物語は、もう元には戻らない。
あとがき
第24話を読んでくださりありがとうございました。
エリシアがついに動き出しました。
“物語を守る側”として、キースを異物と認識し、そして――アルマを標的に。
ここからは、ただの学園生活では終わりません。
それぞれの思惑が交差し、関係が少しずつ歪んでいきます。
そしてアルマ。
今回も相変わらず規格外でしたが、その存在こそが物語を大きく揺らしています。
次回は、この関係の余波と、さらに踏み込んだ展開へ。
またね。




