第23話:聖女と王子と、歪む距離
どうも、Rowun☽です
第23話「聖女と王子と、歪む距離」です。
今回は、アルマ・キース・エリシアの三人がしっかり絡む回になっています。
これまで“個々”で動いていた関係が、少しずつ交差し始めました。
エリシアがアルマに踏み込み、アルマもほんのわずかに興味を示す。
そしてその横で、いつも通り巻き込まれるキース。
軽い会話の裏で、確実に“何か”がズレていっています。
そしてラストでは――。
それでは、第23話をお楽しみください。
ラザリオン魔術学アカデミー。
中庭。
白い石畳と、整えられた庭園。
昼下がりの光が、穏やかに差し込んでいた。
その空間に、三人の姿があった。
アルマ・ル・ヴァルディス。
キース・ヴァレンタイン。
そして――エリシア・ルクス。
「……なんでこうなった」
キースがぼそりと呟く。
エリシアがにこりと微笑んだ。
「いいじゃないですか。せっかく同じクラスなんですし」
「いや、そういう問題じゃなくて……」
キースはちらりと横を見る。
アルマはベンチに腰掛け、無言で本を読んでいた。
(推しがいる空間にヒロインもいるとか情報量バグってるんだけど……)
その時。
エリシアが一歩、アルマに近づいた。
「アルマ様」
「……なんだ」
「昨日の補習、少し気になってしまって」
キースがぴくりと反応する。
(気になるって何!? あれ地獄だったけど!?)
エリシアは続けた。
「魔力の流れ……普通の魔法とは違って見えました」
アルマの手が、わずかに止まる。
「……気のせいだ」
「いいえ」
エリシアは静かに首を振った。
「“魔法”じゃないですよね」
空気が、わずかに張り詰めた。
キースの心臓が跳ねる。
(え、待って待って待って)
(この話、俺いていいやつ!?)
アルマはゆっくりと本を閉じた。
紅の瞳が、エリシアを捉える。
「……それで?」
「それで、ですか?」
「気づいたならどうする」
その声音は、冷たい。
だが、試すようでもあった。
エリシアは一瞬だけ目を伏せる。
(怖い)
直感が告げている。
この存在は、危険だと。
だが同時に――。
(でも)
(この人がいるなら)
(“運命”は変えられるかもしれない)
エリシアは顔を上げた。
「何もしません」
キースが固まる。
「……は?」
「ただ、知っておきたかっただけです」
アルマは目を細める。
「……くだらん」
再び本を開く。
興味を失ったように。
だが。
「――だが」
ぽつりと、言葉が落ちる。
「お前は、少しだけ面白い」
エリシアの瞳が揺れる。
「……光栄です」
その横で。
キースは混乱していた。
(いや待って)
(会話のレベル高すぎない!?!?)
(俺だけ会話の次元違うんだけど!?!?)
思わず口を挟む。
「えっと!!」
二人の視線が同時に向く。
「なに?」
「……なんだ」
圧。
キースは一瞬で後悔した。
「いやその!! 二人とも仲良くなってる感じでちょっと複雑というか!!」
沈黙。
エリシアが首をかしげる。
「仲良く……ですか?」
アルマが冷たく言う。
「違うな」
「えっ違うの!?」
「ただの観察対象だ」
「観察対象!?」
キースはショックを受けた。
「じゃあ俺は!?」
「……」
アルマが一瞬考える。
「騒音」
「ひどくない!?」
エリシアが思わず吹き出す。
「ふふっ……」
キースがむっとする。
「笑ったな今!?」
「すみません、少しだけ……」
そのやり取りの中で。
ほんのわずかに。
空気が柔らぐ。
その時だった。
中庭の奥で、小さな騒ぎが起きる。
「おい、あれ……」 「なんだあの魔力……?」
視線が集まる。
空間が、微かに歪む。
アルマの目が細くなる。
「……ほう」
エリシアの表情が変わる。
(来た……)
キースが呟く。
「え、なにこれ……」
ざわめきの中。
“それ”は、ゆっくりと姿を現そうとしていた。
――物語が、動き出す。
あとがき
第23話を読んでくださりありがとうございました。
ついに三人の距離が交差し始めました。
エリシアはアルマの異質さに気づき、アルマもまたエリシアにわずかな興味を示しています。
そしてキースは安定の騒音枠でした。
ですがこの関係、ただのコメディでは終わりません。
最後に現れた“異常”が、これから物語を大きく動かしていきます。
次回は、ついに事件発生。
三人がどう動くのか、ぜひ見届けていただけたら嬉しいです。
またね。




