第22話:監禁補習と王子式スパルタ教育
こんにちは、Rowun☾です
第22話「監禁補習と王子式スパルタ教育」です。
前回の抜き打ちテストの結果を受けて、キースに待っていたのは――優しさの欠片もない王子直々の補習でした。
もはや補習というより監禁。
そして教育というより矯正。
そんな中で、キースが少しだけ“ちゃんとした成長”を見せるのかどうかにも注目です。
さらに今回は、エリシアも本格的に関わってきます。
彼女の違和感が、少しずつ確信に変わっていく回でもあります。
それでは、第22話をお楽しみください。
ラザリオン魔術学アカデミー、男子寮。
最上階、701号室。
その一室に、異様な空気が漂っていた。
机の上に並ぶ紙束。
魔力理論書、古代魔法語辞典、そして――。
「……これ全部、今日中だ」
アルマ・ル・ヴァルディスが淡々と言った。
キース・ヴァレンタインは、それを見て固まっていた。
「……え?」
「聞こえなかったか? “全部”だ」
「いやいやいやいや待って!? これ、分厚い本が三冊あるんだけど!?!?」
「基礎だ」
「基礎で死ぬんだけど!?」
アルマは静かに椅子に腰掛けた。
「座れ」
「はい」
反射で座った。
「まず、“魔素干渉”の定義を言え」
キースは口を開く。
「えっと……王子の存在が俺の精神に干渉してくること――」
「違う」
即答。
「次」
「早い早い早い!!」
アルマの視線が、すっと細くなる。
「……まだ理解していないのか?」
その瞬間。
空気が、重く沈んだ。
魔力が、じわりと圧を持って広がる。
「ひっ……」
キースの背筋が凍る。
アルマは静かに指先を動かした。
次の瞬間。
パチン。
空間が、歪んだ。
「――“強制集中領域”」
淡い魔法陣が、部屋全体に広がる。
空気が張り詰める。
キースの意識が、強制的に引き締められる。
(なにこれ……やば……)
(めちゃくちゃ頭が冴える……)
(逃げ場がない……)
アルマが言う。
「この空間では、無駄な思考はできない」
「え、怖」
「代わりに、学習効率は最大化される」
キースは青ざめた。
「それ、実質監禁では??」
「最初からそう言っている」
逃げ場はなかった。
――一時間後。
「……“魔素干渉”とは、外部魔素と内部魔力の干渉によって術式の構造を変質させる現象……」
「続けろ」
「その際、術者の魔力量と制御精度が結果に影響を与える……」
「……合格だ」
キースが顔を上げる。
「えっ」
アルマが短く言う。
「今のは正しい」
キースの目が見開かれた。
「……初めて褒められた……!?」
「基準が低すぎる」
だが。
ほんの一瞬だけ。
アルマの視線が柔らいだ。
――三時間後。
キースは机に突っ伏していた。
「むり……しぬ……」
「まだ半分だ」
「え?????」
絶望。
その頃。
廊下の先。
エリシア・ルクスは、701号室の前で立ち止まっていた。
(……ここ)
扉の向こうから、微かに魔力の気配が漏れている。
それは、異常だった。
(この魔力……おかしい……)
原作にはない。
ありえない規模の魔力。
エリシアは、そっとドアに手をかけた。
コンコン。
ノック。
部屋の中。
「……誰だ」
アルマの声。
「エリシア・ルクスです」
一瞬の沈黙。
「……入れ」
扉が開く。
エリシアの視界に飛び込んできたのは――。
机に突っ伏して、死にかけているキース。
そして、その隣で平然と本を読んでいるアルマ。
「……なにこれ」
思わず漏れた。
キースが顔を上げる。
「エリシア……助けて……ここ……地獄……」
「うるさい。まだ終わっていない」
エリシアは、部屋の中を見回す。
魔力の密度。
空間の歪み。
そして――アルマ。
(やっぱり……)
(この人、ただの王子じゃない)
エリシアはゆっくりと目を細めた。
「……すごいですね、アルマ様」
「何がだ」
「この空間……魔法じゃない」
アルマが一瞬だけ視線を向ける。
「……ほう」
「まるで、“世界そのもの”に干渉してるみたい」
静寂。
キースだけが震えていた。
(ちょっと待って会話レベル高すぎない!?)
アルマはゆっくりと口を開く。
「……面白いことを言う」
その声は、ほんの少しだけ低かった。
エリシアは確信する。
(この人は――)
(危険)
だが同時に。
(……でも)
(この人がいる限り、物語は――変わる)
エリシアは、静かに笑った。
「――私も、少し見学していいですか?」
キースが叫ぶ。
「来ないで!! 犠牲者が増えるだけだから!!」
アルマは一言。
「好きにしろ」
その瞬間。
エリシアは一歩、部屋の中へ踏み入れた。
――物語は、さらに歪み始める。
そして。
キースの地獄も、まだ終わらない。
あとがき
第22話を読んでくださりありがとうございました。
キース、ついに王子に“勉強させられる側”へ。
逃げ場のない空間でのスパルタ教育、なかなかに過酷でしたね。
それでもほんの少しだけ、アルマに認められる瞬間があったのが救いでしょうか。
そして今回、エリシアがアルマの“異質さ”に明確に気づき始めました。
物語の違和感が、確実に輪郭を持ち始めています。
この三人の関係がどう変わっていくのか、これからさらに動いていきます。
また次の更新でお会いしましょう。
またね。




