第19話:同室
どうも、Rowunです☽
ここまで読んでくださりありがとうございます。
ついに始まったラザリオンでの寮生活。
そして今回は――まさかの同室事件です。
アルマとキース、二人の距離は相変わらず近いようで遠く、遠いようで近いまま。
そんな新生活の始まりを、少し賑やかに描いてみました。
それでは、第19話をお楽しみください。
魔術学アカデミー《ラザリオン》での新生活が始まった。
寮に割り振られたアルマとキースは、案内に従い指定された部屋へと向かう。
701号室――最上階の角部屋。
魔力量に応じて割り振られる「特別指定寮」の一つだった。
だが――。
「ごめんなさいね〜、搬入が間に合わなくてベッドひとつしかないの。明日には届くはずだから」
寮監の悪びれない言葉に、アルマは一瞬だけ眉をひそめ、キースは目を輝かせた。
「ってことは!! 推しと!! 同じ部屋で!!!?」
「……地獄の始まりかもしれんな」
寮監が去るのを待たず、アルマはドアを開けると無言で中へ入る。
続いてキースも、興奮を抑えきれない様子で部屋に踏み込んだ。
「広い!! 天井高っ!! 最新式魔道コンロに全自動浄水精製機能……! これは勝ち組の部屋だ!! うおおおぉぉ!」
しかしその喜びは、アルマの冷徹な一言で凍りつく。
「…………床かベランダか……選べ」
「えっひどくない!? 推しと同室でいきなり人権剥奪!?」
「貴様にだけ存在しないのかもしれないな」
キースは涙目になりながら小声で呟く。
「……じゃあ、床で寝ます……くそ、これは耐久試練……“推しバフ”で乗り越えろ俺……!」
それでも部屋には、
魔力感知式の自動温水バスルーム、空間展開型クローゼット、自動書棚整列機能――
あらゆる高機能が揃っていた。
キースがひとしきり喜んだあと、ふと尋ねる。
「……ていうかアルマ、風呂どうする? 先入る?」
「貴様が済ませてからでいい。できれば湯の色が変わらぬ程度に清めておけ」
「扱いがマジで聖遺物なみ……ッ!」
キースが風呂から上がり、アルマが入っている間。
(アルマが風呂に……いや待て落ち着け俺……これは試練……精神修行……)
そう自分に言い聞かせながら、キースは部屋をうろうろしていた。
――その時。
ガンッ!!
バスルームの扉が内側から勢いよく開いた。
濡れた髪をタオルで拭きながら、アルマが立っている。
冷え切った瞳。
「……覗こうとしたな」
「えっ、いやっ、それはその……訓練です!! 魔術的な索敵スキルの鍛錬を――」
「焼くぞ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいい!!!」
やがて灯りが消え、夜。
床に横たわるキースは、寒さに小刻みに震えていた。
「……お前、寒いのか? 魔力循環が乱れてきている」
「い、いや! だ、大丈夫だよ! ほんと平気だから!」
「……いいから来い」
有無を言わさず、アルマはキースの手首を掴み、ベッドへ引き上げた。
「背中合わせに寝る。変なことをしたら――その時は分かっているな?」
キースの心拍数は限界だった。
「は、はいぃぃぃ!!」
(幸せで死にそう……)
月明かりが差し込む静かな部屋。
やがてキースはすぐに寝息を立て始めた。
「すぅ……アルマぁ……」
寝言が聞こえる。
アルマの眉がわずかに動く。
数秒後。
ゴスッ。
枕が無言で飛んできた。
「ぶえっ!?」
飛び起きるキース。
ベッドの上では、アルマが背を向けたまま寝返りを打っていた。
翌朝。
差し込む朝日でキースは目を覚ました。
「……ん……?」
ふと視線を横に向ける。
そこには、まだ眠っているアルマの姿。
整った顔立ち。
静かな寝息。
(……やばい)
(近すぎる……)
キースは慌ててベッドから飛び降りた。
その瞬間。
パチン。
アルマが指を鳴らす。
バチィィィッ!!!!
「ぎゃあああああああ!!!」
「……変なことをするなと言ったはずだ」
「なにもしてない!!」
「怪しい」
「ほんとにしてない!!」
アルマは小さくため息をついた。
「……やはり面倒な男だ」
それでも。
ほんのわずかに、口元が緩んでいた。
変態オタクと魔界王子の新生活は、まだ始まったばかりである。
あとがき
第19話を読んでくださりありがとうございました。
ついに始まりました、ラザリオン寮生活。
そしてキースにとってはまさかの展開――アルマとの同室です。
推しと同じ部屋で生活することになったキース。
果たしてこの生活は平和に続くのか、それとも毎日が事件になるのか……。
ここから学園生活もさらに賑やかになっていきます。
少しずつ変わっていく関係や、まだ見えない「物語のズレ」も描いていく予定です。
ブックマークや感想、本当に励みになっています。
いつも読んでくださりありがとうございます。
またね。




