第16話:合格発表
どうも、Rowun☽です
ここまで読んでくださってありがとうございます。
第16話は、ついに合格発表の回です。
試験を終えた受験生たちの運命が決まる瞬間になります。
キース、アルマ、そしてエリシア。
それぞれの結果と、少しずつ生まれ始めている“違和感”も描かれる回です。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、第16話をどうぞ。
翌日。
合格発表の日。
キース・ヴァレンタインは、朝からどこか疲れた顔をしていた。
(……昨日は……)
(気まずかった……)
昨日の休日を思い出す。
本来なら、推し――アルマとの休日になるはずだった。
街を歩いて。
パン屋に寄って。
少しでも仲良くなる予定だった。
……のに。
(ヒロインがいたせいで全部台無しだ……)
エリシア・ルクス。
乙女ゲーム《アルカディア・レクイエム》のヒロイン。
だが昨日の彼女は、どうにも様子がおかしかった。
キースがアルマに話しかけようとすると――。
「あの」
口を開いた瞬間。
「アルマ様」
食い気味でエリシアが割り込んでくる。
別のタイミングでも。
「アル――」
「そういえばアルマ様」
また被せてくる。
三回。
四回。
五回。
結果。
キースはまともにアルマと話せなかった。
(……なんなんだあれ)
思い出すほど疑問が増える。
(ヒロインってもっと……)
(恋愛イベントとか起こす存在じゃないのか……?)
だがエリシアは、アルマに迫る様子もない。
ただ――キースとアルマの会話を止めているだけ。
(何考えてるのか分からない……)
そんな疑問を抱えたまま。
正午。
ラザリオン魔術学アカデミー、本部棟前。
石造りの広場に、受験生たちがざわめきの渦を作っていた。
中央の掲示板には、光文字による合格者一覧が浮かび上がっている。
受験番号。
名前。
そして、各分野の順位。
「おい見ろよ、首席って……」
「全分野一位って、そんな奴いるのか……?」
「アルマ・アルカディア……って、あの……!」
ざわめきが一層大きくなる。
人の波が自然と割れた。
そこを歩いていたのは、ひときわ異彩を放つ少年。
漆黒の髪。
深紅の瞳。
整いすぎた美貌と威圧感。
アルマ・アルカディア。
掲示板の最上段に、その名が輝いていた。
アルマ・アルカディア
魔法学:1位
歴史:1位
理論構築:1位
実技:1位
総合順位:1位(首席合格)
圧倒的な結果。
周囲は言葉を失っていた。
アルマは静かに掲示を一瞥する。
「……当然だ」
ただの事実として呟く。
その横で。
掲示板を凝視しながら震えている少年がいた。
「う、うわぁぁあぁあぁあっ!!」
金髪の少年。
キース・ヴァレンタイン。
「あ、あ、あったああああああ!!」
キース・ヴァレンタイン
魔法学:280位
歴史:420位
理論構築:580位
実技:2位
総合順位:490位――合格
「……合格……してた……っ!!」
声が震える。
「ま、まさかこの俺が……!!」
周囲からざわめきが起こる。
「え!?あのキースって奴、実技2位なの!?」
「いや待って、あいつアルマの隣にいた奴じゃね?」
「座学終わってるじゃん……」
「なんで通ったんだよ……」
「でも実技すごかったよな」
「……正直ちょっと惚れた」
そんな囁きが飛ぶ中。
キースは拳を突き上げた。
「やったぞアルマァァァァ!!」
広場に響く声。
「俺、君と!同じ学び舎に立てるぅぅぅぅ!!」
群衆の向こうで、アルマが振り返る。
「……騒がしいな」
「へへ……ごめん……でも……!」
キースは嬉しそうに笑う。
「アルマとまた同じ場所にいられるって思ったら、嬉しすぎて……!」
アルマは少しだけ目を細めた。
「……まあ」
小さく言う。
「落ちても拾いに行くつもりだったからな」
「えっ!?」
キースが目を見開く。
「拾いに来てくれる予定だったの!?!?」
「も、もうそれ求婚じゃん!?」
「違う」
アルマは淡々と言う。
「殺してでも合格させるつもりだっただけだ」
「……こわ」
一瞬沈黙。
そしてキースが笑う。
「でも好き……」
周囲が静まり返る。
そんな中。
広場の別の場所で、歓声が上がった。
「おお……!」
「聖女様だ……!」
受験生たちが一斉に振り向く。
掲示板の上位。
そこに名前があった。
エリシア・ルクス
魔法学:7位
歴史:5位
理論構築:8位
実技:9位
総合順位:6位
その瞬間、周囲の受験生たちが集まる。
「さすがです、聖女様!」
「すごい順位ですね!」
「やっぱり本物の聖女だ……!」
男子も女子も、次々と声をかけていく。
エリシアは少し困ったように微笑みながら、それに応えていた。
聖女。
優等生。
誰からも祝福される存在。
まさにヒロインの光景だった。
だが。
少し離れた場所からそれを見ていたキースは、眉をひそめる。
(……あのヒロイン)
違和感。
小さな違和感。
(やっぱ……なんか違うな……)
その視線の先で。
エリシアもまた、こちらを見ていた。
ほんの一瞬。
視線が交差する。
(……この人)
エリシアの胸の奥にも、小さな違和感が芽生えていた。
(原作と……違う)
二人はまだ知らない。
この世界の運命が、すでに少しずつ狂い始めていることを。
第16話 あとがき
第16話を読んでいただきありがとうございました。
ついにアカデミーの合格発表でした。
アルマは圧倒的首席、キースはギリギリながらも合格という結果になりました。
そして今回、エリシアの順位や周囲の反応も少し描いてみました。
“聖女”として注目を集める存在ですが、彼女自身もまた、少しずつこの世界の違和感に気づき始めています。
キースとエリシア。
二人が感じている小さな違和感が、これからどう物語に影響していくのか――。
ここからいよいよ、アカデミー編が本格的に始まっていきます。
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またね。




