第15話:気まずい休日
こんにちは、Rowun☽です
ここまで読んでくださってありがとうございます。
第15話は、試験が終わったあとの“少しだけ平和な一日”のお話です。
……のはずなのですが、キースにとってはなかなか落ち着かない休日になりそうです。
アルマ、キース、そしてエリシア。
三人が並んで行動する、少し不思議で気まずい時間が始まります。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、第15話をどうぞ。
実技試験の翌日。
アカデミー試験はすべて終了していた。
そして――合格発表は、明日。
つまり。
今日は、完全に何もない日だった。
魔法都市ラザリオンの街は、朝から賑わっている。
受験を終えた学生たちが、肩の力を抜いたように街へ繰り出していた。
そんな中。
キース・ヴァレンタインは一人、宿屋の前で拳を握りしめていた。
(今日は……)
(今日は……!!!)
深く息を吸う。
(アルマとお近づきになれるチャンスだッ!!!!)
試験は終わった。
つまり、今日は予定がない。
つまりつまり。
(デートに誘えるチャンスでは!?)
キースの脳内では、壮大な計画が組み立てられていた。
街を歩く。
パン屋に寄る。
カフェに行く。
アルマが甘いものを食べる。
(完璧だ……!!)
そんな妄想をしながら広場へ向かうと――。
いた。
黒い髪。
深紅の瞳。
朝の光を浴びて佇む少年。
アルマ・ル・ヴァルディス。
その姿を見た瞬間。
(いたああああああああああ!!!!)
心の中で歓喜の絶叫。
だがキースは必死に平静を装う。
落ち着け。
自然に。
自然に話しかけるんだ。
ゆっくり近づく。
そして口を開く。
「あ……」
その瞬間だった。
「アルマ様」
別の声が先に届いた。
キースの動きが止まる。
振り向いた先にいたのは――。
薄桃色の髪。
澄んだ水色の瞳。
エリシア・ルクスだった。
エリシアはにこりと微笑み、アルマへ歩み寄る。
「今日もしお時間があれば、私と街を回りませんか?」
柔らかな声。
完璧なヒロインスマイル。
だが。
アルマは一瞬だけ視線を向け――。
「……くだらん」
一言で切り捨てた。
周囲の空気が一瞬凍る。
しかしエリシアはまったく動じない。
「でしたら」
くるりと視線を動かす。
その先には、固まっているキース。
「キース様もご一緒にどうですか?」
「え?」
キースの思考が止まる。
「え?」
もう一度言った。
アルマはため息をつく。
「……勝手にしろ」
短くそう言って、歩き出す。
そして。
当然のように二人もその後を歩くことになった。
沈黙。
三人で並んで歩く。
なんとも言えない空気。
(え?)
キースは内心で混乱していた。
(これ何……?)
(休日イベント?)
(ヒロイン同行イベント??)
横を見る。
アルマ。
完全に無表情。
前だけ見て歩いている。
反対側を見る。
エリシア。
にこにこ微笑んでいる。
そしてその二人の間。
キース。
(……気まずい)
とんでもなく気まずい。
街の人々は楽しそうに歩いているのに、この三人の間だけ妙に重い空気が漂っていた。
(なんだこの休日……)
こうして。
本来なら平和なはずの休日は。
どこか奇妙で、気まずい三人旅として始まったのだった。
あとがき
第15話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、試験の合間の少しゆるい回でした。
緊張感のある試験とは違って、三人の空気感を楽しんでいただけたら嬉しいです。
キースは推しとお近づきになれるチャンスだと思っていたのに、気づけば三人で街を歩くことに。
果たしてこの休日はどうなるのか……。
次回も少しずつ三人の関係が動いていく予定です。
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またね。




