第14話:実技試験
どうも、Rowun☽です
ここまで読んでくださりありがとうございます。
第14話はアカデミー入試の実技試験のお話です。
筆記試験とは違い、それぞれの戦闘能力や魔法の実力が試される場面になります。
キースとアルマ、それぞれの実力も少し見えてくる回になっています。
そして今回も、少しずつ「物語のズレ」が動き始めています。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、第14話をどうぞ。
筆記試験の翌日。
魔法アカデミー《ラザリオン》の広場には、受験者たちが再び集められていた。
中央に鎮座しているのは――鋼の巨人。
魔道ゴーレム型訓練機。
高さは人の三倍ほど。
重厚な鋼の身体には、幾重にも魔法陣が刻まれている。
教師の一人が前に立ち、低く告げた。
「これより実技試験を行う」
ざわめきが広場に広がる。
教師は背後のゴーレムへ手を向けた。
「このゴーレムには、十重以上の【強化】【耐性】【再生】系統魔法が施されている」
重い金属音を響かせながら、ゴーレムがゆっくりと動いた。
「条件は単純だ」
教師は続ける。
「このゴーレムに――傷を一つでも与えられた者は、実技通過とする」
その言葉に、受験者たちは息を呑んだ。
教師が小さく笑う。
「もっとも」
少しだけ肩をすくめる。
「教師の中にも、完遂できない者がいるがな」
場が一瞬、静まり返る。
そして――。
「キース・ヴァレンタイン」
名が呼ばれた。
「っしゃあ……!」
キースは前へ歩み出る。
腰の剣を抜いた。
双剣。
片方の刃には、白銀の光。
もう一方には、深淵の闇が絡みつく。
光と闇。
相反する二つの魔力が、彼の手の中で均衡していた。
教師の目がわずかに見開く。
(複合属性か……)
キースは静かに構える。
「光と闇、交わる刻――」
地面を蹴った。
「刹那を斬り裂け《デュアル・フェイズ》!」
その瞬間、キースの姿が消えた。
残像。
空間を歪ませる速度。
次の瞬間には、ゴーレムの懐に潜り込んでいた。
「……ッ!!」
教師の一人が息を呑む。
そして。
ズバァン!!
鋼を断つ音。
次の瞬間、ゴーレムの右腕が根元から切り落とされていた。
重い腕が地面に落ち、鈍い衝撃音を響かせる。
ゴーレムの巨体が揺れた。
静寂。
そして教師が、ぽつりと呟く。
「……成功だ」
その言葉と同時に、広場がざわめいた。
「すげぇ……」
「ゴーレムの腕を……一撃で……?」
キースは軽く息を吐いた。
そして、ちらりとアルマを見る。
その視線に気づいたアルマは、ほんの少しだけ口元を緩めた。
「……悪くないな」
誰にも届かないほど小さな声。
だがキースには聞こえていた。
(やばい……)
(推しに褒められた……!!)
内心で限界オタクが爆発していた。
教師が次の名を呼ぶ。
「アルマ・アルカディア」
空気が、変わった。
広場に張り詰めた沈黙が落ちる。
アルマがゆっくりと前へ歩き出した。
一歩。
また一歩。
それだけで、周囲の受験者たちが息を詰める。
「……誰だ……あの威圧感……」
「目を合わせただけで……呼吸が……」
赤い瞳が、ゴーレムを見据える。
魔力が溢れていた。
いや――溢れているという表現では足りない。
空間そのものが歪んでいる。
「やばい……距離があるのに息苦しい……」
「周囲の魔力が引きずられてる……」
アルマはゴーレムの前で立ち止まる。
そして。
小さく指を鳴らした。
「《崩壊干渉・零点断域》」
その瞬間。
空間が沈黙した。
音が消える。
時間が止まったかのような静寂。
次の瞬間。
ゴーレムが――消えた。
爆発もない。
破壊音もない。
ただ。
そこに存在していたものが、最初から存在しなかったかのように消失していた。
沈黙。
そして。
「な……なんだ今のは……!」
教師の一人が膝をつく。
「空間消去……!?」
「干渉……いや……」
別の教師が震える声で呟く。
「世界法則そのものを改変している……」
「あれは……魔法じゃない……」
騒然とする広場。
だが、アルマはまったく気にしていない。
「……ふん」
小さく鼻を鳴らす。
(魔力で固めようと……)
(所詮、この程度か)
そして、くるりと背を向けた。
その瞬間。
「う゛うぅぅぅぅぅぅ……尊っっっ!!!!!!!!」
拳を震わせながら涙を流す男が一人。
キースだった。
「凄すぎて……怖いのに尊い……!」
顔を真っ赤にして叫ぶ。
「アルマ……君はやっぱり……神か……!」
周囲の受験者たちは恐怖で固まっている。
だがその中で。
キースだけが、全力で推しを崇めていた。
――その光景を。
少し離れた場所から見ている少女がいた。
薄桃色の髪。
澄んだ水色の瞳。
エリシア・ルクス。
彼女は、消えたゴーレムの跡地を見つめていた。
(……違う)
胸の奥がざわつく。
(こんな展開……)
彼女の知る物語では。
アルマ・アルカディアは、ここまで力を見せない。
「……おかしい」
そして。
その隣で、涙を流しながら推しを崇めている少年を見る。
(キース・ヴァレンタイン……)
(あなたも……)
エリシアは静かに呟いた。
「……原作と違う」
第14話 あとがき
第14話を読んでいただきありがとうございました。
実技試験のシーンを書くのがとても楽しくて、つい少し派手な演出になりました。
キースの双剣と、アルマの規格外な魔法の差も、少し感じていただけたら嬉しいです。
そしてエリシアも、少しずつ「物語の違和感」に気づき始めています。
ここから三人の関係がどう変わっていくのかも、これから描いていけたらと思っています。
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またね。




