第12話:聖女の光
どうも、Rowun☽です。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
今回はついに、乙女ゲーム《アルカディア・レクイエム》のヒロイン、エリシアが登場します。
物語の中で重要な人物でもあるので、どんな子なのか楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、第12話をどうぞ。
砕け散った魔水晶の騒ぎは、しばらく部屋の中をざわつかせていた。
「クリスタが壊れるなど聞いたことがないぞ……」
「魔力の共鳴だとしても、あの規模は異常だ……」
試験官たちは小声で議論を交わしながらも、なんとか場を落ち着かせようとしていた。
当のアルマ本人はというと――。
すでに何事もなかったかのように壁際に立ち、静かに腕を組んでいる。
その様子を、キースは遠くから震えながら見つめていた。
(あぁ……)
(推しが……)
(クリスタ壊した……)
(属性全部乗せ……)
(もう尊さの暴力なんだけど……)
ノートを胸に抱きしめながら、ぷるぷる震える限界オタク。
試験官の一人が深く息をついた。
「……測定を続行する」
壊れた魔水晶の代わりに、予備の水晶が設置される。
そして再び、名簿に目を落とした。
「次。エリシア・ルクス」
その名前が呼ばれた瞬間。
部屋の空気がわずかに変わった。
前に出てきたのは、一人の少女だった。
薄桃色の髪。
澄んだ水色の瞳。
白い聖衣を纏ったその姿は、どこか神聖な雰囲気をまとっている。
受験者たちがざわめいた。
「……あの子」
「聖職者?」
「神殿の関係者か?」
少女――エリシアは、静かに魔水晶の前に立つ。
そして、手をかざした。
次の瞬間。
水晶が、柔らかな光を放った。
それは先ほどの激しい魔力とは違う。
まるで祈りのような、穏やかな光だった。
淡く、暖かい輝き。
部屋の空気が静まり返る。
試験官が息を呑んだ。
「……この波長は」
水晶を見つめる。
そして、小さく呟いた。
「聖属性だ」
周囲の受験者たちがざわつく。
「聖属性……?」
「まさか……」
「聖女……?」
その言葉が広がった瞬間、室内にざわめきが走った。
「聖女だ……!」
「本物の聖女なのか……?」
エリシアは少し困ったように微笑むだけだった。
その様子を見ていたキースは、目を見開いた。
(あっ)
(ヒロインだ)
(ヒロインだぁぁぁぁ!?!?)
頭の中で警報が鳴り響く。
(エリシア・ルクス!!)
(乙女ゲーム《アルカディア・レクイエム》のヒロイン!!)
(そして――アルマを殺す聖女!!)
キースの表情が一瞬で引きつった。
一方、アルマはその光を静かに見つめていた。
「……聖女か」
小さく呟く。
その声には、特別な感情はなかった。
ただ、事実を確認するような響きだった。
測定が終わり、エリシアは一歩下がる。
そして――。
ふと視線を上げた。
その先にいたのは。
キースと、アルマ。
二人の姿。
エリシアの瞳が、わずかに細められる。
(……あれ?)
ほんの一瞬。
違和感が胸をよぎる。
ゲームの記憶では――。
この時期、アルマは人と距離を置いているはずだった。
誰とも並ばない。
誰とも関わらない。
孤立している。
それが、《アルカディア・レクイエム》の序盤。
けれど。
今、目の前にいる光景は違う。
赤い瞳の王子。
そして、その隣に立つ少年。
(……なんで)
エリシアは小さく首を傾げた。
(どうして、この二人が並んでるの?)
違和感。
小さな綻び。
まるで、物語の歯車が少しだけズレているような感覚だった。
その時だった。
「……あっ」
キースと、目が合った。
エリシアはにこりと微笑む。
聖女らしい、柔らかな笑顔。
そして、ゆっくりと歩み寄ってきた。
「こんにちは」
穏やかな声。
「私はエリシア・ルクスといいます」
軽く頭を下げる。
「よろしくお願いします」
キースの脳内は、その瞬間完全に混乱していた。
(ヒロインが)
(話しかけてきた)
(いや待て)
(俺の目的はアルマ救済であってヒロイン攻略じゃない)
(でもゲームヒロインだぞ!?)
(どう反応すればいい!?)
混乱する主人公の隣で、アルマは静かに二人の様子を見ていた。
その紅い瞳が、わずかに細められる。
この出会いが、物語の運命をさらに歪めていくことを――。
まだ、誰も知らなかった。
あとがき
第12話を読んでいただきありがとうございました。
ついにヒロイン、エリシアが登場しました。
これから少しずつ物語も動き出していきます。
今回のあとがきでは、簡単にキャラクター紹介を載せておきます。
【キャラクター紹介③】
エリシア・ルクス
年齢:16歳
身長:158cm
誕生日:8月15日
乙女ゲーム《アルカディア・レクイエム》のヒロイン。
聖女の力を持つ少女で、人々を救う存在として知られている。
薄桃色の髪と澄んだ水色の瞳を持ち、白い聖衣を纏った神聖な雰囲気の少女。
好きなもの:辛い食べ物、乙女ゲーム、ちやほやされること
嫌いなもの:ホラー系、暗い場所
それでは、また次のお話でお会いしましょう。
またね。




