第10話:試験の日
どうも、Rowun☽です。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
気づけばこの物語も第10話まで来ました。
少しずつですが、物語も動き始めています。
そして今回は、ついにアカデミーの試験の日。
ここから新しい舞台と、新しい登場人物が現れます。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、第10話をどうぞ。
広大な試験場には、各地から魔術士志願者たちが集まっていた。
アカデミー正門の前には、貴族専用の馬車が次々と並ぶ。
豪華な装飾の扉が開き、名家の子息たちが降りてくる。
その光景はまるで社交界のようだった。
――だが、その陰。
門柱の影。
風も通らぬ死角に、一人の男が潜んでいた。
キース・ヴァレンタイン。
本日、変態オタク100%。
(まだか……)
柱の影から顔を出す。
(まだかアルマ……)
馬車を見る。
違う。
また違う。
「……ちがう、また違う貴族……チッ……」
何度目かの舌打ち。
周囲の一般受験者たちは、すでに距離を取り始めていた。
「……あいつ何してるんだ?」
「やばいやつじゃない?」
だが、キースは気にしない。
なぜなら。
(アルマに会える日だから!!!)
その瞬間。
一台の馬車が門前に止まった。
漆黒の装飾。
重厚な魔導紋章。
明らかに他とは格が違う。
従者が静かに扉を開く。
そして――。
「……っ!!」
降りてきたのは。
漆黒の髪。
深紅の瞳。
冷たい威容。
アルマ・ル・ヴァルディス。
その瞬間、空気が変わった。
まるで重力が変わったかのように、視線が一斉に彼へ向く。
圧倒的な存在感。
まるで王。
同じ受験者とは思えない。
生徒たちは息を呑んだ。
だが――。
「おはよう!! アルマ!!!」
その静寂を破った男がいた。
笑顔120%。
キース・ヴァレンタイン。
アルマはその声を聞き、わずかに視線だけ動かす。
「……ああ」
短い返答。
「お前か」
そして一言。
「いつから待っていた?」
「三時間前から!」
即答。
アルマは一瞬沈黙した。
「……気持ち悪い」
呆れた声だった。
そのまま歩き出す。
キースは当然のように隣へ並んだ。
「えへへ、アルマに会うために三日間我慢したんだよ!」
「ストーカー発言にしか聞こえん」
「褒め言葉として受け取るよ!!」
アルマはため息をつく。
そして唐突に言った。
「……試験勉強はしたのか?」
キースが止まる。
「え?」
「実技だけではない」
アルマは淡々と言う。
「座学もある」
「え?」
「魔法理論」
「え?」
「元素構成式」
「え?」
「魔力干渉法則」
「えええええええええっ!?」
絶望の叫び。
アルマは目を閉じた。
「……はぁ」
少しだけ迷う。
そして、懐からノートを取り出した。
「俺の復習用だ」
キースに差し出す。
「……落ちるなよ」
キースは固まった。
「え?」
「え?」
「え?」
震える手で受け取る。
「アルマの……ノート……?」
声が震える。
「神聖書物!?!?!?」
「うるさい」
アルマが言う。
「あげたわけではない」
「試験が終わったら返せ」
「ふへへへ……」
キースはノートを抱きしめた。
完全に恍惚の顔。
まるで恋人から手紙でも貰ったかのようだった。
その様子を、周囲の受験者たちは呆然と見ていた。
「あれアルマ様だよな……」
「なんであいつ隣にいるの……?」
「誰だよあの変なやつ……」
ざわめきが広がる。
だがキースは全く気にしていない。
(絶対受かる)
拳を握る。
(アルマと同じアカデミーに通うんだ!!!)
燃える闘志。
変態オタクの執念。
こうして。
キース・ヴァレンタインはついに
推しと同じアカデミー
へ足を踏み入れようとしていた。
――その光景を。
一人の少女が見ていた。
薄桃色の髪。
澄んだ水色の瞳。
白い聖衣を纏った少女は、
静かに二人の背中を見つめていた。
赤い瞳の王子。
そして、その隣を歩く少年。
少女は、わずかに目を細める。
風が、淡く髪を揺らした。
「……あれは」
あとがき
第10話を読んでいただきありがとうございました。
ついにアカデミーの試験が始まりました。
そして、キースとアルマが同じ場所に立つことになります。
ここから物語は、少しずつ大きく動き始めます。
今回のあとがきでは、キャラクター紹介を載せてみようと思います。
【キャラクター紹介①】
キース・ヴァレンタイン
年齢:17歳
身長:180cm
誕生日:5月1日
本作の主人公。
乙女ゲーム《アルカディア・レクイエム》の世界に転生した青年で、前世ではこのゲームの大ファンだった。
本来はアルマを討つ“英雄”になる運命の人物だが、
最推しであるアルマ・ル・ヴァルディスを救うため、物語の運命そのものを壊そうとしている。
好きなもの:アルマ、甘いパンや焼き菓子
嫌いなもの:アルマを否定する言葉、「運命だから仕方ない」という考え
それでは、また次のお話でお会いしましょう。
またね。




