第9話:名前
どうも、Rowun☽です。
第9話を読みに来てくださりありがとうございます。
ここまで物語を読んでくださっている方、本当にありがとうございます。
少しずつですが、主人公とアルマの関係も動き始めています。
そして、物語の舞台もいよいよ次の場所へ向かいます。
ここからまた新しい展開が始まっていくので、楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、第9話をどうぞ。
朝霧がゆっくりと晴れ、雨の名残が森の空気に溶けていた。
アルマとキースは、無言で街へ向かって歩いていた。
落ち葉を踏む音。
遠くの鳥の声。
そして、二人の足音だけが森に響く。
やがて街の門が見えた頃。
アルマが、ふいに足を止めた。
「……もう、俺をつけ回すな」
その一言。
キースの世界が止まった。
(えっ)
(なに)
(嫌われた?)
(拒絶?)
(やっぱり昨日の鼻血がアウトだった!?)
雷に撃たれたような衝撃。
顔が真っ青になる。
世界が崩れ落ちる。
そんな表情を見て、アルマがちらりと視線を向けた。
「……顔に出すぎだ」
「え?」
「別に、お前が思っているような意味ではない」
アルマは前を向いたまま言う。
「……アカデミーに入学する」
さらりと続ける。
「試験を受けに行く」
その言葉に、キースの目が見開かれた。
(……ストーリーが)
(動き出した……!!)
ゲーム《アルカディア・レクイエム》。
物語の舞台。
魔術学アカデミー。
(本編クラッシュ最高!!!)
「お、おれも!」
キースは勢いよく言った。
「三日後の入学試験、受ける予定だよ!」
本来のキースはアカデミーには行かない。
旅へ出る。
だが――。
そんな原作は知ったことではない。
アルマの運命を変える。
そのためならストーリーが壊れても構わない。
「そうか」
アルマは短く答えた。
いつも通りの、冷たい声音。
だがキースは構わず聞く。
「三日後……試験会場で、また話しかけてもいい?」
アルマは少しだけ目を細めた。
試すように言う。
「俺からは話しかけない」
ちらりと視線を向ける。
「お前が俺を見つけられればな」
「うん、探す!」
キースは即答した。
「何時間でも待つし、何時間でも探す!!」
アルマはため息をつく。
「……お前にその心配はないだろう」
呆れた声。
「どうせ当日になれば、どこかで待ち伏せしている」
「うん!する!!絶対にする!!」
満面の笑み。
その熱量に、アルマは本気で呆れた顔をした。
そして――。
ふいに言う。
「……これからは」
少しだけ視線を逸らす。
「別に“王子”と呼ばなくていい」
「――え?」
キースの瞳が一瞬で潤む。
「アルマ」
アルマは静かに言った。
「そう呼べ」
そして、少しだけ間を置く。
「……貴様が昨日来なかったら」
低い声。
「俺がどうなっていたかは分からない」
キースの呼吸が止まった。
「助けてくれた褒美だ」
アルマは言う。
「受け取れ」
相変わらず上から目線。
だが。
その言葉は、確かに届いた。
「アルマぁぁぁぁぁあ!!!」
キースは感動で涙ぐみながら突進した。
――しかし。
ドンッ!!
「ぐえっ!?」
透明な魔法の防壁に激突。
見事に弾き飛ばされた。
「やめろ」
アルマが冷たい声で言う。
「それ以上は許していない」
紅い瞳が、きらりと光る。
「……俺の許可なく触れたら」
「さっきの褒美もなしにする」
「はい!!すみませんでした!!」
キースは即座に土下座した。
全力反省モード。
アルマは小さく指を鳴らす。
その瞬間――。
転移魔法が展開された。
魔法陣が淡く輝く。
アルマの身体が光に包まれた。
そして次の瞬間。
彼の姿は消えていた。
残った光だけが、森を淡く照らして消えていく。
キースはその場所を、しばらく見つめていた。
「……ああ……アルマ様……最高……」
空を見上げる。
まるで神を崇める信者のように。
「“アルマ”って呼べって言われたけど……」
キースはぽつりと呟く。
「心の中では一生“推し王子”です」
その声は、森の風に溶けていった。
あとがき
第9話を読んでいただきありがとうございました。
ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。
物語はこれから、いよいよ新しい舞台へ進んでいきます。
まだ始まったばかりの物語ですが、ゆっくりでも楽しんでもらえたら嬉しいです。
感想や応援などいただけると、とても励みになります。
それでは、また次のお話でお会いできたら嬉しいです。
またね。




